外伝6 リリア・レイダース 1
「アルター君が、死んでいる?」
私は今、お父さんから教えてもらった、グランドドラゴンを倒したと言う少年、アルター君がいる村まで来ていた。
最初はレイルガルフの街でアルター君がくることを待っていたけど、いつまで経っても街に来る様子がなかったから村まで私自らが来た。
もちろん、お父さんのように護衛なしではなく、護衛ありでだ。
でも、その村で聞いた事は、私が予想していなかった事だった。
てっきりもう旅に出ていて、たまたまレイルガルフを通らなかったか、もしくはまだ村で準備をしているものと思っていたけど、アルター君は死んだと村の人は言っていた。
こういった閉鎖的な村とかでは基本的に閉鎖的な人が多く、情報をもらうのにも苦労をするものではあるけど、ガーナックの娘と言うとみんな親しげに話しかけて来た。
お父さんはすごい、信用を第一に重んじるお父さんは、お客様の信頼が厚い。
もう少し、本当に少しでいいからお金に対する執着があれば、お父さんは私なんかを優に超える大商人になれるのに。
「ああ、森に入って、そのまんまな」
「そう、ですか、ありがとうございます」
アルター君は死んだらしい。
お父さんが村を出たあとに死んでしまったと言う事かも知れない。
人が死ぬなんて日常だ。ましてや会ったこともない少年が死んだと聞かされて、悲しいなんて思う事はない。
でも、だとしたらグランドドラゴンの死体はどこに?
私は村でアルター君について聞いて回った。
「ん?誰だ?」
「私、リリア・レイダースと申します」
「おお!リリアちゃんじゃねぇか!久しぶりだな!俺のこと覚えているか?バロックだよ!」
え?誰?私は微塵も覚えていない。
商売柄、人の顔や名前を覚える事は得意ではあるけど、心当たりがない。
でもこの人は私のことを知っているみたいだし、知らないと言うのは失礼だ。
「ええ」
「ま、覚えてるわけないか!こーんな小さな頃にガーナックさんと村に来た時に会ったっきりだからな!はっはっはー!」
っ!危ない、知ったか振りをしなくて良かった。
紛らわしい、実に紛らわしい。
「にしても大きくなったなぁ、それだけ時が過ぎてるってことか、歳を取ると日々が過ぎ去っていくのが早え早え、ところで、ガーナックさんは一緒なのか?」
「いいえ、父は来ておりませんわ」
「あー、そうだよな、この間来たばっかだし、まだまだ来ねぇわな、じゃあリリアちゃんはなんでこの村に来たんだ?」
「実は、アルター君について少し聞きたいことが」
「・・・アルターか、ったく、アイツは馬鹿な奴だよ」
「そうなのですか?」
「ああ、そうさ、アルターは自分というものを持ってなかった、お兄ちゃん、お兄ちゃんって、ずーっと兄の背中を追いかけていてな、そのせいで、ったく」
「アルター君には兄がいらっしゃるのですか?」
「ああ、そうだ、イーシスって言ってな、今はもう村から出て行ったが、イーシスのせいでアルターは死んだって言っても過言じゃねぇからな」
「何があったのでしょうか?」
「ああ、少し前のことなんだがな・・・」
私はバロックさんからことのあらましを聞いた。
まだ6歳でレベルも1のイーシス君とアルター君が森の中に2人で入って、数日後イーシス君だけが帰って来たと。
そしてアルター君とイーシス君が森に入ったと思われる日に森が怒り出し、天変地異が起こったと。
大地は揺れ、光が降り注ぎ、炎の竜巻が起こり、森が黒い霧に包まれたりと他にも様々なことが森の中で起こり、最後には灼熱の星が降って来たと。
「それは本当なんですの?」
「ああ、正直俺も最初は夢か何かだと思ったんだがな、見てる奴が俺以外にも結構いるからな」
「・・・」
正直に言えば信じられない。常識はずれもいいところだ。そんなこと、見たことも聞いたこともない。
だけど一つの可能性が浮かんで来た。
もしかしたらそれはグランドドラゴンとの戦いで起こったことではないかと。
アルター君とイーシス君はレベル1だったという。だから別の者がたまたま近くにいて、その者がドラゴンと戦った時の戦闘風景を村の人たちは遠くから見ていたのかもしれない。
レベル50のドラゴンを倒したと言うのだから、天変地異を起こせたとしても不思議ではない。
そう考えると辻褄があう気がする。
・・・いや、でも時期が合わない。お父さんはアルター君からグランドドラゴンの爪を買ったと言っていた。でも、森に入ったままアルター君は帰って来なかったと。
なら、その天変地異は別のもの?
「あの時はシスターと一緒にいたからシスターも同じものを見てるぜ、アルターとイーシスについても一番詳しいのはシスターだから会ってみたらどうだ?あそこの教会の中にいると思うぜ?」
「え、ええ、ありがとうございます」
まだ考えは整理できていないけど、まずは情報を集めよう。
教会に来た。
「ん?誰だい?」
教会の中にはシスターの服に身を包んだ優しそうな人がいた。この人がアルター君とイーシス君について詳しい人なんだろう。
「私、リリア・レイダースと申します」
「レイダース、ああ、ガーナックの娘さんかい?」
「ええ、いつも父がお世話になっていますわ」
「世話になっているのはこっちの方さね、ガーナックには助けられてるよ」
「そう言ってもらえると父も喜びますわ」
やっぱりお父さんは凄い。
「それで、私に何か用かい?それともお祈りでもしていくかい?」
そうね、せっかく教会に来たのだから、少しだけお祈りさせてもらいましょう。
「では、少しだけお祈りさせていただきます」
「ああ、好きにするといいさ、ここは教会、好きなだけ神に祈りを捧げな」
「わかりましたわ」
私は少しだけ神に祈りを捧げた。
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私は祈ることをやめた。
この願いは神様に叶えてもらう気はない、私自らの手で手に入れるものだ。
でもせっかくだからほんの少しだけお祈りさせてもらった。
「ずいぶん長く祈っていたねぇ」
「そうですか?それほど祈ってはおりませんが」
「そうかい?まぁいいさね」
そうだ、私は教会に祈りに来た訳ではない、アルター君について聞きに来たんだ。
「シスターさん」
「なんだい?」
「アルター君について少し聞いてもいいでしょうか?」