第32話 お助けキャラ
僕は[アイテムボックス]から食料と[アイテムボックス]の魔法陣、それからまずピィナーに[リメイク]の魔法陣を渡した。
「ガァァ(リメイク)」
ピィナーは青色のグランドドラゴンの姿から元の青色の兎の姿に戻った。
そして僕は発動中の[アイテムボックス]の中からまた[リメイク]の魔法陣を取り出して、今度はツェーンに渡した。
2枚同時に取り出すと、両方とも同時に発動してしまうためだ。
「ピィー!(いただきます!)」
元の姿に戻ったピィナーは真っ先に食料に食いついた。
「おお、兎に戻ったのじゃ、のぅ、本来の姿はどちらなのかの?」
「ピィナーは今の姿が本来の姿だな」
「兎の姿が?ふむ、つまり兎はドラゴンになれるのじゃな」
「普通の兎には無理だが、ピィナーは少し違うからな」
ピィナーは妖精だ。
妖精は個体によって姿形が千差万別だ、それは逆を言えば[リメイク]でなれる姿の範囲がかなり広いことを指している。
だからピィナーはグランドドラゴンの姿になることが出来たというわけだ。
[リメイク]で変更できる体はその種族がなれる姿だけだ。人間という種族でありながら腕が4本とか、頭が2つあったりとか、10メートルを超える巨体になったりは出来ないが、妖精なら出来る。
つまり妖精と[リメイク]の相性はバッチリというわけだ。
だけど姿が変わってもステータスが変わるわけじゃ無いから、単なる虚仮威しだけどね。
「ふむ、ようわからんが、まあ良い、これで元の姿に戻れるのじゃな」
「ああ」
「戻る前に伝えておかねばな、改めて申す、卵を取り返してくれたこと、誠に感謝なのじゃ、もしそなたが何か困ったことがあればいつでも呼ぶが良い、妾がいつでも駆けつけて協力してやるのじゃ」
「協力?」
え、それってお助けキャラになるってこと?
お兄ちゃんが言ってた。仲間には出来ないけど特定のイベントをこなすと助けてくれるようになる者がいて、そういった者をお助けキャラって呼ぶと。
え?じゃあ殺したらダメなの?
えー、それだと僕がツェーンに負けたと思われたままになっちゃう。
でも、今ツェーンを殺すと味方を殺すってことになっちゃう、それはもっとダメだよね?
うーん、仕方ない、ツェーンは見逃すしかないのかな。
「だが、呼ぶとはどう呼ぶんだ?」
[テレパシー]には範囲に制限があるから、俺の魔法攻撃力ではそれほど遠くまで繋げられない。
[テレポート]の場所をツェーンの住処に登録しておいて呼びに行く?そこまでしてツェーンに助けを求めることがあるのだろうか?
「妾の勘を舐めるで無い、イーシスが困っていたり助けを求めればきっと妾にはわかるはずじゃ」
え?[ハイパーセンス]はそこまで便利なスキルなの?いや、多分そんなことはないと思うけど、もともとツェーンの勘が鋭くて、それに[ハイパーセンス]が組み合わさってすごい効果を発揮しているとかなのかな?
「分かった、だが俺が困ることや助けを求めることなんてないとは思うが、気持ちは受け取っておこう」
「そうかの?まぁ困らないことが一番じゃから妾を呼ぶことが無いということは良いことじゃな、じゃが本当に困ったことになったら妾はすぐに飛んで行くからの」
「ああ」
「ではさらばじゃ![リメイク]!」
ツェーンは元のエンシェントドラゴンの姿に戻った。
「ガァァアアア!!」
ツェーンはしばらく僕たちの上空をくるくる元気に飛び回っていた。
飛べるのが嬉しいのかな?
その後、ツェーンは卵を持って帰って行った。
「・・・行った」
「ああ、そうだな、すまなかった、獲物を横取りした挙句、倒さないなんて」
もともとツェーンと戦っていたのはミルタさんだ。
一応戦う許可はもらったはもらっていたし、僕は経験値を獲得できないから、戦闘に参加してもほとんどの経験値はミルタさんに入ったはずだけど、倒さなかったから意味がない。
「・・・?」
「ピィー、ピィィ(おなかいっぱいー、ねむたーい)」
ピィナーが眠たそうにしている。
「じゃあ街に帰るか」
本当はダンジョンに行きたかったけど、ダンジョンが長い場合だと1日で攻略出来ないかもしれないから、ダンジョン攻略は明日の朝かな。
ミルタさんはまだ僕達についてくる。やっぱり僕達の仲間になりたいんじゃないかなって思ってしまう。
でももう何度も断られているからパーティに誘わなくていいかな、多分また断られるだろうし。
たまたま向かっている先が同じってだけだろう。
僕たちは街に帰った。