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外伝5 ミルタ・ウィンター 6

 目の前で訳がわからないことが起こりすぎたため、少し呆然としていた。


 そうしていると、いきなり何かが繋がったような感覚があった。


(ミルタ・ウィンター、聞こえているな、今から俺がエンシェントドラゴンとの戦い方を教えてやる、だいぶ苦戦していたようだったからな)


 そして、新人未満の声が聞こえて来た。


 今、新人未満は遠い空の上、だから声が聞こえるはずないのに。


 これも何かのスキル?それとも魔道具?


 確か遠くの人に声を届ける魔道具はあったはずだけど、そんなものを持っている様子はなかった。

 ならスキル?でもそんなスキル、聞いたこともない。


(まずエンシェントドラゴンと戦う場合、決して一定以上離れてはならない、離れすぎたらエンシェントドラゴンの種族スキルに対抗できないからだ)


 新人未満はドラゴンとの戦い方を話しているようだ。

 特に気負った様子もなく、淡々とただ事実だけを話しているような話し方だ。


 ドラゴンを前にしているのに、平然としている。

 それに、戦い方を知っている?もしかしてドラゴンと戦ったことがある?

 一瞬、頭に昨日のリリィの言葉がよぎったが、それはグランドドラゴン、エンシェントドラゴンとは違うし、何より新人未満はレベル1だ。


 だから違うと思う。

 ・・・そう言えば、レベルカーズ?経験値の分散はない?すべて私に経験値が入る?

 確かそんなことを言っていた気がする。

 もしかして、彼がレベル1なのはあえて?


 不思議には思っていた。新人未満の見た目は20歳前後だ。少なくとも15年くらいは生きているだろう。

 それなのにレベルが1なんて、それだけ長く生きていながらレベルが1だなんておかしいと。


 でもそれは新人未満自身がレベルを上げないような何かをしていたということ?


 でもなんで?


(だからエンシェントドラゴンと戦う場合、空を飛ぶことが必要だ)


 空を飛ぶ、先ほど新人未満が言っていた。俺は空を飛べるから大丈夫だと。


 もしかしてこれのこと?


 ドラゴンは新人未満が空を飛んで向かって来ていてることに気づいたようだ。


 そして、また変な模様が浮かび上がった。

 あれは、私が攻撃されたときと同じ。


「・・・危ない!」


 ドラゴンの攻撃が来る!

 多分私の声は届かない。でも、思わず叫んでしまった。


 私を一撃で殺せるだけの威力を持っている攻撃だ。さっきの突撃はなんで耐えたのかは分からないけど、今度こそ危ない、私はそう思った。


 けど、今度はドラゴンから七色の光が飛んで行った訳ではなく、炎の竜巻が巻き起こった。


 ・・・ドラゴンを中心に。


「・・・え?」


 その炎の竜巻は下に落ちていき、地面に当たると同時に霧散した。


 そして、そこには地面に横たわるドラゴンの姿があった。


「・・・何、が?」


(エンシェントドラゴンは魔法陣を一瞬で形成出来る、だからその魔法陣を使われる前に、俺が使う、そのために常にエンシェントドラゴンの近くにいる必要がある、魔法陣はある一定以上近くなければ発動できないからな)


 魔法陣?形成?使う?近く?発動?


 全然分からない。

 魔法陣っていうのは多分ドラゴンの近くに浮かび上がった模様のことだと思う。

 発動?もしかして、あの炎の竜巻や七色の光はあの魔法陣というものがなければ使えないスキルか何かなのだろうか?


 そしてドラゴンが作って、使うはずだった魔法陣を新人未満が使った?


 よく分からない。


 私は長いこと生きて来て、様々な場所にも行ったし、多くの知識を持っている。

 それでも魔法陣なんて聞いたことも見たことも。


 ・・・あれ?今思えば私はあの模様と同じような物を何度か見たことがあった気がする。

 確か、ダンジョンを攻略した後に、


(だから自身のMPの残量に気をつけながら、エンシェントドラゴンが作る魔法陣の種類を一瞬で見抜き、その魔法陣を自分が使って戦うのが基本的な戦い方だ、覚えておけ)


 魔法陣の種類?見抜く?


 もしかして、スキルによって魔法陣の形は変わる?そしてなんの魔法陣かを一瞬で見抜いてドラゴンより早く使うってこと?


 ちょっとよく分からない。

 魔法陣、私の知らない力だ。

 でも、とても強力なことは見ただけでわかる。

 こんな力が、私の知らない力があったなんて。


「ガァァアアア!」


 ここまでドラゴンの咆哮が聞こえて来た。

 そしてまた何かの模様、魔法陣?が浮かび上がっている。

 私にはさっきとの違いが分からない。同じ魔法陣?

 新人未満はこれを判別するんだろうか?


 今度はドラゴンを包むように冷たい氷の風が巻き起こった。


 さっきとは違うスキルのようだ。


(立体魔法陣を発動するために必要なMPは、大体1万以上だ、だからMP管理を怠ると魔法陣を発動できずそのまま攻撃されることになるから気をつけろ)


 ・・・1万!?

 私の奥の手は全MPの消費だけど、それ以外で1万も以上も消費するスキルなんて聞いたことがない。


 え?でも、どうやって新人未満はスキルを発動しているのだろうか?


 さっき見えた新人未満の最大MPはたったの20だった。

  何をどうしようがスキルを発動なんてできないのに。


 まだ、いや、また私の知らない、分からない何かを新人未満はしているのだろうか。


 なぜ、これほどまでに様々な知識を持っているのだろう?

 しかも私の知らない、分からないことだらけ。


 ・・・分からない、でも、もしかしたら。


 もしかしたら、あの新人未満ならドラゴンを倒せてしまうかもしれない。

 私の知らない、未知の力を使うこの新人未満なら。


 少しだけ、そういう期待が出てきた。






 その後も新人未満はドラゴンと戦い続けていた。


 ドラゴンが作る魔法陣は全て新人未満が使っている。

 そして、何故かドラゴンの攻撃が新人未満に当たっても新人未満のHPが2から減ることはなかった。


 さらに、ドラゴンが新人未満に突撃して行った時は、いきなり新人未満は縦回転を始めて、ドラゴンをすり抜けていた。


 訳が分からないことが多すぎるけど、それでも新人未満が圧倒しているように見えた。


 けど、それでもドラゴンのHPは減っていない。

 レベル1にしてはおかしいくらいドラゴンに大きなダメージを与えているけど、それでもドラゴンの自動回復で全て回復されている。

 だからこのまま倒しきれるかと言ったら無理だと言わざる負えない。


 つまり戦いはどちらも決め手に欠けているような状態だった。


 そう思っていた時、新人未満から小さな黒い何かが飛んで行った。


 あれは攻撃?何かのスキル?

 今まではドラゴンの作る魔法陣?でしかほとんど攻撃してこなかったのに、ここに来て新人未満が自分から攻撃をした。


 ドラゴンはその小さな黒い何かを怖がっているのか、大きく逃げ回っていた。

 でも小さな黒い何かはドラゴンに追尾しているようだ。 

ドラゴンは光の空間から出られないようだから逃げる範囲が限られており、ついに小さな黒い何かがドラゴンに当たった


 その瞬間、ドラゴンは一瞬黒い何かに包まれ、それが無くなった時、HPが1になっていた。


「・・・」


 ・・・?ん?1?え?


私は驚きのあまり、目を見開き、言葉をなくした。


 その後、新人未満がドラゴンに殴りかかり、ドラゴンに吹き飛ばされ、炎の竜巻が新人未満を包み、新人未満は地に落ちた。


 そして落ちた新人未満に対してドラゴンが攻撃し続けている。


 ・・・急展開すぎてついていけない。


 何、あの小さな黒い何か。あれに当たるとHPが1になるの?


 何で今回は突撃を食らったんだろう?今まではすり抜けていたのに。


 そして魔法陣を使わなかった?いや、魔法陣は距離があると使えないとか言っていた。吹き飛ばされて距離ができたから、ドラゴンに魔法陣を使われた?


 そして何より、何故まだ新人未満は死んでいないのだろうか?

あれだけの攻撃を受けても、相変わらずHPが2のままだ。


 もしかして、不死身?でもそんな存在いるはずない。


 分からない、何も分からないけど、一気に新人未満が不利になっているように見えた。


 でも、何度攻撃されても死なないなら、新人未満が負けることはない?


 この戦いを見ていると、どんどん私の常識が崩れていくようだった。

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