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第22話 VSエンシェントドラゴン 2

「ぐっ、」


 体が痛い、かなりの高度から墜落したため、物凄い衝撃が体を走った。


 炎の竜巻に巻かれながらだったため、[ジェット]で体勢を立て直すこともできなかった。


 痛みで体が動かない。

 でも背中から落ちたから、バックが多少のクッションになってくれた。


 背中から落ちれなかったら、もっと体が痛かったと思う。


 油断した。倒したと思い込んでいたから、あの瞬間は完全に無防備になっていた。

 今僕はたまたま生きているが、あそこで死んでいてもおかしくはなかった。


 戦闘中に油断をするなんて、僕は何度同じ失敗を繰り返すんだ。

 確かグランドドラゴンと戦っている時も、油断して危ない目にあったのに。

 ちゃんと学んでいかないと。


 これからは倒したと思っても、完全に死体が消えるまでは警戒を解かないようにしないと。

 そこまで戦闘は終わりじゃないんだ。


 僕は地面に倒れたまま空を見上げ、エンシェントドラゴンの行動を確認した。


 どうやらエンシェントドラゴンは、僕に追撃を行うようだ。

 魔法陣がエンシェントドラゴンの近くに描かれている。


「繋がれ、無限の空間、万物の収納箱、[アイテムボックス]」


 僕は痛む体を無視して、なんとか2枚の魔法陣を取り出した。


「ガァァアアア!!」


 エンシェントドラゴンは魔法陣スキルを発動した。


 間に合え。


「我は何人たりとも揺るがせぬ、不動の砦なり[イモータル]」


 その瞬間、僕の周りに冷たい氷の風が渦巻いた。


 これは[エンシェント・フリーズ・ストーム]か、大丈夫だ、この魔法で僕が死ぬことはない。


 イモータルの発動は間に合った。これで地面が動かされて体が動きでもしない限り物理的に死ぬことはなくなった。


 これにより、僕はエンシェントドラゴンの攻撃を気にすることなくゆっくり考え事ができ、痛んだ体を休められる。


 ただし、エンシェントドラゴンから目を離しはしない。よっぽど大丈夫だとは思うけど、万が一があるかもしれないから、油断はしないようにしないと。


 なんでエンシェントドラゴンは死ななかった?

 僕は何を見落としたんだろう?


 エンシェントドラゴンが実は防御スキルを使っていた?いや、そんなことはなかった。


 それにディテクションはまだ切っていない。

 だから間違いなくエンシェントドラゴンのHPは1になったのは確認している。


 ならその次だ。3回攻撃したけど、実は一回外れていたとかは?

 もしくは3回当てるまでに1秒以上経過していた?


 これも無い。間違いなく1秒以内に3回攻撃できたはず。


 HPが0になったけど蘇生した?HPが0になっても復活できるアイテムはある。

 だけど、見た感じそれらしいアイテムを持ってはいなさそうだった。


 スキルは、他者を蘇生するスキルはあるけど、自分を蘇生するスキルはない。


 ならなんだろう?


 ・・・あ、そうか。

 僕はバカだ、なんでこんなことも忘れていたんだろう。

 本当に僕はバカだ、[インヴィンジブル]の称号の存在を忘れていたなんて。


[インヴィンジブル]は、一度の攻撃で自身の最大HPの1割以上を削られた場合、11秒間の無敵時間が発生する効果を持つ称号だ。


 この称号の獲得条件は一度も死んだことがなく、HPを1度に50万以上削られることだ。


 エンシェントドラゴンのHPは733942、当然称号を持っている可能性を考慮しながら行動するべきだった。


 どうしよう、どうやって殺そうかな?


 僕が割合ダメージを与えてHPを1にしても、[インヴィンジブル]で11秒間の無敵時間が発生し、その間に[オートリジェネHP 極]でまたHPを1割以上回復される。


 そうなれば、また割合ダメージでHPを1にしても[インヴィンジブル]の効果で11秒間の無敵時間が発生する。そしてHPは1割以上に回復される。


 このエンシェントドラゴンを倒すなら、割合ダメージではなく、圧倒的な攻撃力でHPを1撃で0にするか、エンシェントドラゴンの最大HPの1割以上を削らないようにしながら、[オートリジェネHP 極]の回復速度を上回る速度でダメージを与えてHPを削り切るしか無い。


 どうしよう。


 僕にそんな攻撃力はない、だから攻撃をたくさん当ててHPを削り切るしかないかな。


 なら、一度なんとか地面に叩き落として、[サンドボール]で多段ヒットを狙おう。


 そうしよう。


 僕が考え込んでいる間、エンシェントドラゴンは途中までは僕を攻撃し続けていたけど、一切動かない僕に攻撃する意味を見出せなくなったのか、途中から攻撃対象を光の壁に変更していた。


 だけど光の壁はエンシェントドラゴンが出られないだけで破壊できるものではないから、スキルなどはすべて素通りをしている。


「ガァァアアア!!!」


 エンシェントドラゴンはスキルが効果無いことがわかると、今度は我武者羅に光の壁に突撃した。だけど光の空間から出ることも、破壊することもできない。


 地面近くにむき出しになっている[フォースコンバット]の魔法陣を破壊すれば出られるのに、一向に魔法陣を破壊しようとしないことから、エンシェントドラゴンは[フォースコンバット]についてなにも知らないのかもしれない。


 そして何かを焦っているようだ、動きから焦燥が伝わってくる。


「ピィ?(大丈夫?)」


「・・・」


「・・・なんで生きてる?」


 僕のそばに、ピィナーとイリア、それとミルタさんが近づいてきた。


「あれでは俺は死なないからな、しかし不覚を取った」


 僕の失態だ。僕のせいでお兄ちゃんへのみんなの評価が下がってしまったかもしれない。あんなドラゴン程度に苦戦するなんて。


 お兄ちゃんなら僕みたいに無様に地面に叩き落とされたりしないし、称号の存在を忘れるなんてあり得ないのに。


「ガァァアアア!!」


 エンシェントドラゴンはずっと光の壁にぶつかり続けている。


「ピィ、ピィ、ピィ(なげいてる、おこってる、かなしんでる)」


「ん、どうしたピィナー」


「ピィ、ピィ(かえして、かえして、かえして、だって)」


 ピィナーはいきなりなにを言いだしているのだろう?


「もしかして、エンシェントドラゴンの言っていることがわかるのか?」


「ピィ、ピィ(うん、なんとなく)」


「なぜ分かるんだ?」


「ピィ、ピィ、ピィ(グランドドラゴン、エンシェントドラゴン、おなじドラゴン)」


「ああ、そうか」


「ガァァアアア」


「ピィ(困ってる)」


「エンシェントドラゴンがか?」


「ピィピィ(こえられない、こまった、にげられる、かえして、だって)」


 逃げられる?返して?何のことだろう?

 うーん、困ってるなら助けるべきなのかな?


 でもエンシェントドラゴンは人じゃ無い。助けなくてもいいかな。


 いや、お兄ちゃんなら困っている者がいることを知れば、たとえそれが人じゃなくても助けるかな?


 人しか助けないなんて言うほど、お兄ちゃんの心は狭くない。


 よし、困っているようだから助けよう。


 そして、なぜそんなに焦っているのかを聞いて、僕で力になれることがあるなら協力しよう。


 エンシェントドラゴンを殺すのは困っていることを解決してからでいいかな。

 このままもう戦わないなんて事はしない。


もしこれ以降戦わないなんてなったら、みんなからまるで僕が負けたみたいに思われてしまうかもしれないから。


 困っていることを解決したら、今度こそ華麗に、かっこよく、余裕を持ってエンシェントドラゴンを倒そう。


 そのためにも、早く困りごとを解決しよう。


「繋がれ、無限の空間、万物の収納箱、[アイテムボックス]」


 僕は[テレパシー]と[アイテムボックス]の魔法陣を取り出した。


「・・・え?」


「以心伝心、我が意を汝へ伝える、[テレパシー]、相殺する審判竜」


 僕はエンシェントドラゴンとの意思の疎通を試みた。

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