表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/82

第3話 考察

 まず、死には2種類ある。HPが0になり、その数十秒後までに蘇生されずに体が消え、ドロップアイテムが残るステータスの死と、HPは残っているが、頭を飛ばされたり、体を真っ二つにされて死ぬ物理的な死だ。

 物理的に死んだ際、[生物]という称号が消えて[物]となり、HPやMPなどのステータスが消滅する。そして魔力が抜け、脆くなる。


 お兄ちゃんは転生者だと言っていた。どこか別の世界からこの世界にやってきたと。


 その世界では、鉄の刃物で人間の皮膚を切れるらしいし、ハンマーで頭を殴られたら死ぬらしい。

 髪を切るときとか、爪を切るときに使う[魔力抜き]の状態でずっと生きているようなものってお兄ちゃんが言っていた。

 どうやってそんなに脆い体で魔物と戦ってたんだろう?僕には想像もつかない。


 だけどこの世界ではそんなことはない。

 鉄や鋼程度なら生き物の皮膚を傷つけることは[魔力抜き]の状態以外なら、よっぽどの力がなければ不可能だ。それもHPを削る、ステータスの力ではなく、質量や鋭さなどの物理的な力だ。


 多分お兄ちゃんがいた世界の住民だったら、あの魔物の突撃で物理的に死んでいただろう。だけど僕は体が痛かっただけで、骨が折れたりはしていないと思う。

 まあ、痛いだけでも十分に異常なんだけど。[魔力抜き]状態以外で痛みなんて感じたことなかったから。


 だから転生前、お兄ちゃんはそんな脆い体で魔物と戦い続けたすごい人なんだ!


 それを、


 コロセ!コロセ!


 ううん、落ち着こう、怒りに身を任せても勝てない。考えるんだ。


 ならどうやって敵を倒すのかというと、攻撃に殺気を込めるんだ。

 殺気を込めた攻撃はHPを削る。逆を言えば一切の殺気を込めなければ、スキル以外ならどれだけ強い物理的な攻撃でも、どれだけステータスが高くてもHPの減少はない。

 HPを減らし、0にして敵を倒す。

 もしくは、強大な物理的な攻撃によって、物理的に倒す。この2つだ。


 お兄ちゃんはHPが0になることはほとんどあり得なかった。だけど、体を真っ二つにされた。圧倒的な力による、物理的な死だ。

 僕も噛みつかれれば、同じ結果になるだろう。


 もう一度、あの魔物のステータスを確認しよう。


 名前 クカア


 種族 グランドドラゴン


 LV 50


 HP 12894620/12894620


 MP 0/0


 称号 [深淵の森の守護竜] [インヴィンジブル] [クールタイム減少 極] [オートリジェネ HP 極] [魔物] ・・・・


「ネームドのグランドドラゴンで、LV50か」


 まず今の僕にはHPを削りきることは不可能だ。


 ステータスにはこのほかにも攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、習得スキルなどがある。このステータスは敵のものも自分のものも見えない。

 称号は、僕の識別の魔眼なら見ることはできるけど、[ディテクション]の魔法スキルでは見ることができない。


 お兄ちゃんは、昔はステータス画面で自分のステータスは全て確認できたけど、今はメニューを開けなくなったから見れなくなったといっていたっけ。

 メニューって何だろう?いや、今は関係ないかな?


 まず、ネームド、名前持ちの魔物は強い。お兄ちゃんがそう言っていた。


 そしてグランドドラゴン、この魔物は最強魔物の一角だと言っていた。

 HPと攻撃力、防御力が非常に高いが、その反面MPと魔法攻撃力が0で、魔法防御力は少ない種族の魔物だ。


 魔法を使ってくることはないが、魔法以外ではほとんどHPを削れない。


 そしてLV50、これが決定的に今の僕があの魔物を倒せない理由だ。


 種族や個体によってレベルアップによる力や魔力、HPなどのステータスの上昇は異なるが、大体、1レベルから2レベルになるときには5倍ほどステータスが上がり、2から3は3倍、3から4は2倍、4から5は1.5倍、5から6は1.3倍、6から7は1.2倍、7以降は1レベルごとに1.1倍ステータスの全てが上がっていく。


 僕は1レベルでアイツは50レベル、レベル1とレベル50のステータスの差は同じ種族の同じ個体なら、えっと、大体4228倍ほどある。


 僕の今のステータスは、


 名前 アルター・カイ


 種族 人間


 LV 1


 HP 2/100


 MP 24/25


 だ。僕がLV50になれば、僕のHPの100×4228で、HPは約422800くらいになる。

 だがアイツのHPは12894620ある、つまりHPはアイツと俺が同レベルでも12894620÷422800で約30倍ほど離れていることになる。


 魔物は人間より基本的にステータスは高いが、30倍も離れているということはよっぽどないはず。つまり個体としても、種族としてそれだけHPが優れているのだろう。

 もしくは、長い年月をかけて[グラトニー]などのパッシブスキルによりステータスを少しずつ高めてきたかだ。


 魔法防御力もないわけじゃないのだから、これだけのLV差があれば僕の魔法で与えられるダメージは基本的に1だ。


 つまりHPを削り切ることは今の僕にはどう頑張っても不可能だ。


 なら物理的に殺すのはどうかだが、アイツは山のような体を持つ。通常の方法では不可能だろう。

 だが、


「必ず、殺す」


 それだけは、絶対に変わらない。何が何でも殺してみせる。


 村の大人の力を借りる?いや、村には最大15LVしかいない。力を借りても無理だろう。


 考えろ、考えるんだ、どうすればあの魔物を殺せる?


 僕は空に浮かんだまま考え続けた。


 どうやらあの魔物はこちらの様子見をしているのか、攻撃してこない。もしかしたら、遠距離攻撃手段がないのかもしれない。それなら考え事に集中できる。


 どうする?どうすればいい?

 HPを削りきるのは不可能だ。だけど物理的に殺すのも難しいだろう。[ソーラー・メテオ]で物理的に死んでないのだから、他の魔法でも難しい。

 それに攻撃系の魔法には見た目ほどの物理的な攻撃力はない。


 基本的に、魔法の炎は熱くない。氷も冷たくないし、雷も追加効果で麻痺にはなるが、ビリビリしない。魔法で作った水は、時間が経てば消えるから、飲んでも意味がない。

 ステータスの[シック]なら[トリートメント]のスキルで治るが、物理的な風邪や病気は[トリートメント]じゃあ治らない。

 HPは[リカバリー]などのスキルでで回復できるが、物理的な出血や、部位欠損は、回復スキルでは治らない。


 勿論、全く物理的な効果がないわけじゃないが。

 それに、ちゃんと物理的な効果があるスキルも沢山ある。


[シャドームーブ]は体が影に溶けているから物理的な効果があるし、[グラビティ・バインド]も、重力が強くなり、動けなくなる。

[テレポート]も、登録地点まで一瞬で移動する。

[イモーバル]などの一部防御スキルは、動かなければ、例えあの魔物に噛みつかれようと、スキルの効果で噛みちぎられることはなく、ものすごい力で押されようと引っ張られようと、体がスキルの効果で動くことはない。

[ステイト・フィクスト]のスキルを発動すれば、体の状態が固定され、睡眠や、空腹、トイレなどが必要なくなり、気絶にもならない。そして物理的な成長も止まる。


[ソーラー・メテオ]は、見た目ほどではないが、質量があって、それが落ちてくるわけだから、物理的な強さも多少はあるが、当たった瞬間に爆発するから、押しつぶす力はないし、その爆発も[生物]が死ぬほどかと聞かれれば、首を傾げざるおえない。


 勿論あんなでかい星が本当に降ってきて、床が固ければ、流石にぺちゃんこになると思う。


 どうすればいい、どうすればあの魔物を殺せる?


 逆に考えてみよう、どうすれば僕は死ぬ?

 僕の場合、スキル封印か、HP吸収で死ぬだろう。


 あの魔物にスキル封印したらどうなるだろうか?いや、まずスキル封印することがほぼ不可能だ。

 スキル封印はダンジョンの一部特別な部屋のトラップとしてあるが、僕はそれがどこにあるのかも知らないし、そこにこの魔物を連れていくなんて無理だろう。

 転移させようにもこのレベル差だから、魔法防御力で抵抗されて多分できない。


 それに自分でスキル封印をしようとした場合、かなり準備に時間がかかる。それにその間ずっとそこにいてもらわなければならない。


 お兄ちゃんもスキル封印は戦いでは使えないイベント用のスキルだって言っていた。イベント用のスキルっていうのが何かは分からないけど、戦いでは到底使ってられない。


 もしスキル封印できたら、いや、[インヴィンジブル] と[オートリジェネ HP 極]は称号だ。

 称号は封印できないから結局倒せないだろう。


 相手にこの2つの称号がなければ、[単独魔物撃破LV?倍]の称号をとって、[グラビティ・バインド]と攻撃1回で殺せたのに。


 どうしよう、どうすればいいんだ。


 他の方法も考えよう。


 ほかに、僕が死ぬ可能性は何がある?物理的に噛みちぎられたら死ぬが、あの魔物を殺すほど強大な物理的な力は僕にはない。僕が知っている魔法でも無理だ。


 他は、ほかに死ぬ可能性。考えろ、考えるんだ、


 ・・・・・・


 っ!?あった、あった!あった!


 あの魔物を殺す方法が、あった。これなら、この方法なら、あの魔物を殺せるかもしれない。


 ただしこの方法は、かなり時間がかかる。

 辛く長い戦いになると思う。

 だけど、この方法が一番可能性があるんだ。

 どれだけ長くかかろうと、辛くとも、必ず殺す!


 あの魔物は生きている。だから食事も取るだろう。それを全力で邪魔して、今から何も食べさせない。餓死は物理的な死だ。どれだけHPが高かろうが、防御力があろうが、LV50だろうが、なんの関係ない。


 僕はあの魔物を餓死させることにした。


 僕はこの作戦に穴がないかを考えた。

 多分大丈夫のはずだ。

 あの魔物に何も食べさせない方法もある。最悪、僕がノックバックさせ続ければ何も食べられない。


 あの魔物が餓死するまで何日かかるのか。

 あの巨体だ、たくさん物を食べないといけないと思うから案外すぐに餓死をするかな?

 いや、逆に巨体だから何も食べずとも何ヶ月と生きられるかも知れない。


 時間がかかり過ぎれば、[ステイト・フィクスト]の揺り戻しで僕は死ぬだろう。

 いや、関係ない。あの魔物を殺せればいいんだ。そのあとなんて考えても仕方ない。

 だから何日かかろうと、問題はない。


 他には、称号はどうだろう?


[深淵の森の守護竜]、この称号だけ僕は知らない。

 その他の称号は、全てお兄ちゃんから教えてもらったか、お兄ちゃんが書いた攻略本に書いてあった。


 だから当然、効果も取得方法も全て覚えている。

[深淵の森の守護竜]以外の称号には餓死を防げる称号はない。

 だから[深淵の森の守護竜]、この称号がなんなのか確認しておこう。


[深淵の森の守護竜]

 世界の核を守る4匹の守護竜のうち、深淵の森を守るドラゴンに与えられる称号。

 効果 ・深淵の森内の全てを見通せる。

  ・深淵の森から出られなくなる。

  ・老化無効

  ・寿命無限化

  ・レベル上限解放

  ・レベル差獲得経験値減少緩和

  ・対敵高レベル時全ステータス倍

  ・対敵高レベル時全スキル効果倍


「何この称号」


 強すぎる。他の称号とは格が違いすぎる。

 まるで[勇者]や[魔王]並の称号の効果だ。


 まず一番上、深淵の森っていうのは、この森のことだと思う。その中なら全てを見通せる。つまりこの森のことなら、この魔物が知らないことはないってことなのかな?


 そして次、深淵の森から出られなくなる。

 これは一見悪いことに思えるかもしれないけど、つまり転移でどこかに連れて行くこともできないということだ。

 相手の魔法防御力はレベル的に考えたら低めだ。

 僕では魔法攻撃力が低くて抵抗されるけど、同レベル、いや40か30レベルあれば多分転移されられるだろう。

 だけど転移で空高くに転移させて落下させたり、マグマに沈めたり海の中に沈めたりすることが称号のせいでできないということだ。

 いや、海やマグマの中って元々転移できるのかな?まあいいや。


 とにかく、空高くに転移させて落下させることを繰り返していれば、あの重さだからいつか死ぬかもしれないけど、その対策になっている。つまりグランドドラゴンの弱点を一つ潰している。


 そして老化無効と寿命無限化。

 この効果のせいで長く生きていれば生きているほどどんどん成長していく。

 老化には身体能力の低下だけじゃなく、ステータスも減少するから、それがなくなるのもずるい。

 そして寿命無限化だから殺されなければ永遠に生きられるんだろう。


 そしてレベル上限解放?レベルに上限があることを僕は知らなかったけど、つまり無限に強くなれるってことかな?


 そしてレベル差獲得経験値減少緩和、これは自分よりレベルが低い敵を倒した際、もらえる経験値が極端に下がるけど、それが緩和されるんだろう。


 そしてこれがやばい。

 対敵高レベル時全ステータス倍と、対敵高レベル時全スキル効果倍、つまりあの魔物よりも僕のレベルが高かったら、相手のステータスは全部倍になっていて、スキルの効果も倍になっていたということだ。


 つまりこの称号を持っていれば、この森から出られなくなるけど、無限に生きられて、無限に、そして早く強くなれて、敵が自分より高レベルならステータスもスキル効果も倍になって、この森の全てを見通せるということだ。


 こんなにすごい称号が、[勇者]や[魔王]以外にもあるとは思わなかった。


 だけど大丈夫。餓死させることはできる。

 色々考えたが、この魔物を餓死させることはできる。


 やるぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ