第21話 VSエンシェントドラゴン 1
正直言って倒すだけなら簡単だ。
空中に浮いているから[サンドボール]は使えないけど、ある魔法陣がバックに入っているため、それを当てれば相手のHPを1にできる。
でもそれをすると戦闘経験なんかにならない。
そうだ、戦闘経験を積むと同時にミルタさんにエンシェントドラゴンとの戦い方を教えよう。
「以心伝心、我が意を汝へ伝える、[テレパシー]、ミルタ・ウィンター」
魔法陣スキル[テレパシー]は、自分の意思を指定した相手に伝えられるスキルだ。
指定するには相手の名前を知らなければならない。
それはステータスに書いてある名前ではなく、本名だ。
僕の場合、イーシス・カイではなく、アルター・カイと指定しないと、僕には届かない。
あまり離れすぎていると意思は伝わらないが、この距離なら問題ない。
このスキルで伝えられるのは一方通行で相手の意思は伝わってこない。
もしこれが双方の意思が伝わるのなら、イリアと意思疎通ができたけど、残念ながらダメだ。
イリアに[テレパシー]を使ってもらうことも考えたけど、 MP0じゃ使えないからだ。
僕はミルタさんに話しかけた。
(ミルタ・ウィンター、聞こえているな、今から俺がエンシェントドラゴンとの戦い方を教えてやる、だいぶ苦戦していたようだったからな)
僕は空を飛ぶエンシェントドラゴンを追いかけながらミルタさんに話しかけた。
(まずエンシェントドラゴンと戦う場合、決して一定以上離れてはならない、離れすぎたらエンシェントドラゴンの種族スキルに対抗できないからだ)
エンシェントドラゴンのステータスを見ると、HP、 MP共にフル回復している。
恐らく称号のオートリジェネのHP、MPを両方持っているんだろう、それも極の可能性が高い。
僕の場合、圧倒的ステータス不足で通常の方法ではエンシェントドラゴンは倒しきれないけど、戦い方だけはミルタさんに教えておこう。
(だからエンシェントドラゴンと戦う場合、空を飛ぶことが必要だ)
そこで、エンシェントドラゴンは、飛んで来ている僕のことに気づいた。
その時、エンシェントドラゴンはついに僕が求めてやまないスキルを使って来た。
「ガァァ!」
エンシェントドラゴンの近くに一瞬で立体魔法陣が浮かび上がった。
これはエンシェントドラゴンの種族スキル[マジックスクウェア・オートクリエイション]で、魔法陣を自動で形成するスキルだ。
そう、僕みたいにいちいち手書きで書く必要なんてなく、使いたいスキルの魔法陣を一瞬で形成出来る素晴らしいスキルだ。
魔法陣が複雑になればなるほど消費MPは上がるが、立体魔法陣すら作れる素晴らしいスキルなんだ!
欲しい!是非とも欲しい!僕も使いたい!
でも種族スキルだから僕には覚えられない・・・
っと、そんなことを考えている場合じゃない、エンシェントドラゴンが作った魔法陣は、あれか。
「[フォーリンダウン・フレイム・テンペスター]」
僕はエンシェントドラゴンが作った立体魔法陣スキル、[フォーリンダウン ・フレイム・テンペスター]を発動した。
「ガァ!?ガァァアアー!」
エンシェントドラゴンは、炎の竜巻に包まれ、そしてその炎の竜巻により地面に叩き落とされた。
(エンシェントドラゴンは魔法陣を一瞬で形成出来る、だからその魔法陣を使われる前に、俺が使う、そのために常にエンシェントドラゴンの近くにいる必要がある、魔法陣はある一定以上近くなければ発動できないからな)
多分立体魔法陣を作ったのは、先ほど僕に突撃して僕がビクともしなかったから、警戒してのことだろう。それに僕が空に浮いていたから地面に叩き落としたかったのかもしれない。
僕のバックにも炎の竜巻を発生させる大規模魔法陣はあるけど、[フォーリンダウン ・フレイム・テンペスター]のように空に飛んでいる敵を地面に叩き落とす効果はない。それに威力も範囲も桁違いだ。
まあ、僕の魔法攻撃力じゃ、1ダメージ、いや、称号の効果で2500しかダメージは与えられないけど。
(だから自身のMPの残量に気をつけながら、エンシェントドラゴンが作る魔法陣の種類を一瞬で見抜き、その魔法陣を自分が使って戦うのが基本的な戦い方だ、覚えておけ)
「ガァァアアア!」
エンシェントドラゴンはもう一度、空に飛ぶ前に[マジックスクウェア・オートクリエイション]を使って来た。
今度は別の魔法陣だ、
「[エンシェント・フリーズ・ストーム]」
僕はエンシェントドラゴンが作った立体魔法陣を使い、[エンシェント・フリーズ・ストーム]を発動した。
「ガァ!?ガァァアアアー!!」
エンシェントドラゴンを包むように冷たい氷の風が巻き起こった。
(立体魔法陣を発動するために必要なMPは、大体1万以上だ、だからMP管理を怠ると魔法陣を発動できずそのまま攻撃されることになるから気をつけろ)
その後もエンシェントドラゴンが作成する魔法陣を僕が使い、戦い続けた。
もういいかな。
それなりに戦ったけど、このままずっと戦い続けてももう得るものがなさそうだ。
よし、殺そう。
「[グラビトン]、[アディション][ホーミング]」
僕はバックに入れてある魔法陣を使って[グラビトン]を発動した。
それにより黒い球が空を飛ぶエンシェントドラゴンに向かって飛んでいった。
この魔法陣スキルは、現在HPの3%を削る魔法だ。
それだけ聞くとそれほど強くなさそうなスキルに聞こえるし、僕以外が使っても、それほど怖くはないスキルだろう。
だけど、エンシェントドラゴンは嫌な予感がしたのか、全力で逃げた。
しかし光の空間から出られないため、逃げる範囲が限られており避けきれず、[グラビトン]がエンシェントドラゴンに当たった。
そして、エンシェントドラゴンのHPは1になった。
「ガァ!?」
なぜエンシェントドラゴンのHPが1になったかと言うと、僕の称号、[単独魔物撃破レベル50倍]の効果だ。
この称号は攻撃力に50倍がかかるわけではなく、ダメージに50倍がかかる。
この称号の本当にすごいところは割合ダメージにも倍率がかかることだ。
つまり3パーセントかける50倍、つまり僕が[グラビトン]を使うと現在HPの150パーセントダメージを与えられると言うことだ。
これはどれだけ防御力が高かろうと、割合ダメージなため防ぐことはできない。
一部防御系のスキルの、ダメージ半減などのダメージ軽減系スキルなら防げるが、それを使っている様子はエンシェントドラゴンにはなかった。
だからエンシェントドラゴンのHPは1になった。
割合ダメージの場合、どれだけ倍率が高くても、相手のHPが残り1でも、割合ダメージではHPを0にすることはできない。必ず1はHPが残ってしまう。
そのため、僕は[グラビトン]が当たった1秒以内にエンシェントドラゴンに3度攻撃した。
これでエンシェントドラゴンは死ぬはず。
たとえエンシェントドラゴンが[オートリジェネHP 極]の称号を持っていたとしても、エンシェントドラゴンのHPは733942、1秒で回復するHPは7339HPだ。
だからHPを1にして1秒以内に7500ダメージを与えれば殺せる。
僕の攻撃は称号の効果で2500ダメージはいる。
つまり3回攻撃すればで7500ダメージだ。
これでエンシェントドラゴンは死んだだろう。
今回の戦闘は、それなりにいい戦闘経験になったと思う。
また僕は最強に一歩近づけたかな。
「ガァァ!」
え?
「がっ!」
殺したと思い、油断していた僕はエンシェントドラゴンに突撃され、吹き飛ばされた。
なんで生きてるの!?
僕はなんとかジェットを調整してギリギリ[フォースコンバット]の範囲内にとどまった。
その時、エンシェントドラゴンは魔法陣を作成した。
僕は吹き飛ばされ距離が離れたため、その魔法陣の発動ができない。
「ガァァァァァァ!」
エンシェントドラゴンは[フォーリンダウン ・フレイム・テンペスター]を使って来た。
それによって、僕の周りに炎の竜巻が起こり、僕は地面に叩き落とされた。