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第20話 エンシェントドラゴン

 まだかなー?まだかなー?

 それなりに時間が経ったけど、いまだに街の入り口のおじさんが戻って来ない。


 どうしよう?何かあったのかな?


 幾ら何でも長すぎるかな?早く僕はドラゴンと戦いたいし、ダンジョンにも行きたい。

 でもここを僕たちが離れると、入り口に誰もいなくなる。それは良くないよね?


 どうしようかな?


 僕がそう悩んでいた時、[生物感知・魔法]で、街の中からここに近づいて来ている人に気づいた。


 もしかして、街の入り口のおじさんが帰って来たのかな?


 ドラゴンの方を見ると結構近くまで来ている。

 そろそろ戦いに行かないと、街までの距離が近くなりすぎて街にまで攻撃が流れるかもって思ってたから、ちょうどよかった。


 そうだ、先にドラゴンのステータスを確認しておこうかな?


「[ディテクション]」


 名前 相殺する審判竜


 種族 エンシェントドラゴン


 LV 40


 HP 733942/733942


 MP 302045/326089


 さすがドラゴン、HP、MPが高い。


 レベル1とレベル40のステータスの差は同一個体、同一種族なら、約1630倍だから、えっと、もしこのドラゴンがレベル1なら、大体HPは約450で僕の4.5倍、 MPは約300で僕の12倍だ。


 やっぱりドラゴンは素のステータスが高いんだ。


 でも残念なのはレベルが40だからグランドドラゴンより10も低いところかな。


 えっと、2500ダメージを294回当たれば殺せるのかな?

 うん、そんなに苦労しなさそうだ。


 と、HPだけを見ればそう思うかもしれないけど、グランドドラゴンとは違って、エンシェントドラゴンは魔法特化のドラゴンだ。

 だから厄介なスキルを使って来たりする。


 エンシェントドラゴンの種族スキルの1つに、とっても羨ましい、僕が求めてやまないスキルがある。

 そのスキルのせいで、戦い方を間違えると、というか知らないとかなり苦戦するドラゴンだ。


 まあ、僕は戦い方を知っているからスキルは大丈夫。


 だけど何の称号を持っているか分からないから、苦戦するかもしれない。


「・・・何でここに?」


「ん?」


 あ、ダメージ計算に夢中で忘れてた。さっき街からこっちに近寄っている人が居たんだった。


 あれ、でも街の入り口のおじさんじゃない?

 振り返って見ると、そこにはギルドで[ショックウェイブ]を使って3人組を吹き飛ばした女性がいた。


 僕はエンシェントドラゴンのステータスを見るために発動していた[ディテクション]を切っていなかったから、ステータスが見えた。


 名前 ミルタ・ウィンター


 種族 エルフ


 LV 30


 HP 46529/46529


 MP 32456/32456


 あ、エルフだったんだ。

 そっか、エルフって確か耳が長いのが特徴だった。


 よく見れば耳が尖ってる。


 なるほど、エルフはこんな感じの見た目の種族なんだ。覚えとこう。


「・・・早く逃げて」


「・・・」


 イリアが首を全力で縦に振ってる。

 どうしたんだろう?


「逃げる?何からだ?」


「・・・」


 ミルタさんは指をさした。

 だけどその方向には、ドラゴンしかいない。


「ドラゴンしかいないぞ?何から逃げるんだ?」


「・・・ドラゴン」


「?何で逃げる必要がある?」


「・・・危ない」


 ドラゴンが危ない?ああ、わかった、ミルタさんは僕が空を飛べないと思っているからうまく戦えないと思っているのかな。


「俺は空を飛べるから大丈夫だ」


「・・・何言ってるの?」


「ん?」


 違ったのかな?


「・・・早く逃げて」


 そう言ってミルタさんはドラゴンの方に走っていこうとした。


「あ、待ってくれ!」


 ミルタさんは確か冒険者だったはず、冒険者は先ほどギルドに呼ばれていたから、ギルドに向かった街の入り口のおじさんのことを知っているかもしれない。


「いつもここに立っている人を見なかったか?」


「・・・もう逃げた」


「え?」


「・・・じゃ」


 ミルタさんは走り出した。


 逃げた?何から逃げたんだろう?


 あ、もしかして街の入り口にいる仕事から逃げたのかな。

 ずっと街の入り口にいることが嫌になったのか、それとも疲れたのか。


 仕事を放棄するなんてダメな大人だ。

 もしかしたら、たまたまドラゴンを見かけたから、それを口実にして入り口から離れたのかもしれない。


 そうしてもう帰ってくる気はないのかな。


 どうしよう、ほんの少しの間だけだと思ったからここにとどまっていたけど、僕は街の入り口のお仕事なんて知らない。だから代わりなんてできない。


 でも本当にここを離れてもいいのだろうか?

 この街に入ろうとしてくる人がいたら、どうすればいいんだろうって困っちゃうよね。


 どうしよう。






 しばらくそこで考え込んでいたけど、よく考えたら、僕がここにいてもほとんど意味がないことに気づいた。

 だって街の入り口の仕事なんてわかんないもん。

 なら僕がここにいても仕方ないか。

 もし街に入ろうとしている人が来ても、何もわからない僕じゃどうしようもない。


 そんなことに気づくのに結構時間がかかった。


 ここにいても仕方ない、よし、ドラゴンと戦いに行こう。


 あれ、ミルタさんはドラゴンの方に行ったから、もしかしてドラゴンと戦いに行ったのかな?

 ああ、そういうことか、さっき逃げてって言ってたのは、ミルタさんがドラゴンと戦うから、逃げてって言ってたんだ。


 あー、いい戦闘経験になるかもって思ってたのに、先を越されちゃった。

 街の入り口のおじさんが、街の入り口から離れなければ先に戦えたのに。


 はぁ、他人の獲物を取るのはダメだもんね。

 仕方ない、ドラゴンはミルタさんに譲ろう。

 でも、他人の戦闘を見るのもいい経験になるかもしれない。他の人がどうやって戦っているかを知れば、自分に何か活かせるかもしれない。

 まだ戦ってるかわからないけど、一応見に行こうかな。


「よし、見に行こう」


 僕たちはミルタさんを追いかけた。






 僕がミルタさんに追いついた頃には、もうほとんど戦闘が終わっているようなものだった。


 ミルタさんの敗北で。


 ミルタさんのHP、MPは、もうほとんどなくなっていて、逆にエンシェントドラゴンのHPは、ほぼ満タンで、 MPは10分の1程度減っているだけだった。


「・・・くっ」


「ガァァ」


 ミルタさんは地に膝をつき、エンシェントドラゴンはここから飛び去ろうとしている。


「・・・ま、待て」


 ミルタさんはまだ諦めていないのだろう。ドラゴンを追いかけようとしている。


 うーん、手助けしたほうがいいのかな?うん、そうしよう。


「逃がさない、逃れられない戦闘へ、[フォースコンバット]、[アディション][ホーミング]」


 僕は[フォースコンバット]を飛び去ろうとしたエンシェントドラゴンに当てた。

 その時、エンシェントドラゴンを中心に光の空間が広がった。


 エンシェントドラゴンは、気にした様子もなく飛び去って行こうとしたが、光の壁にぶつかって、光の空間から出られない。


 これで、僕の後ろにある魔法陣を破壊されるか、僕が吹き飛ばされ、範囲から外れるか、殺されるかしない限り、もう逃げられない。


「・・・なに、これ」


「[フォースコンバット]だ、対象を光の空間の範囲内から出られなくするスキルだ」


「・・・!?、なんで?」


「あのままでは逃げられていただろ?」


「・・・なんで、ここにいる」


 もしかして、僕が戦闘に参加して、経験値が減ることを嫌がっているのかな?


「安心しろ、経験値の分散ならしない、確かにスキルを使ったが、俺は[レベルカーズ]状態だ、だから経験値の分散はない」


「・・・な、何を言ってるの?」


「ガァァ!」


 エンシェントドラゴンが、僕を見て僕を標的にしたようだ。


「おい、お前の相手は俺じゃないだろ?ミルタ、そんなところに突っ立ってどうしたんだ?戦わないなら俺が倒してもいいか?大丈夫、経験値は全てミルタに入る」


「・・・呼び捨て、ううん、あなたに倒せるはずない」


 倒せるはずがない、つまり倒せるなら倒していいってことかな。

 よし、許可ももらったし、倒すか。


「やって見ないとわからないだろ?」


 エンシェントドラゴンは、僕に向かって突撃して来た。


 エンシェントドラゴンなのになんで突撃してくるんだろう? スキルを使えばいいのに。

 MPの節約のためなのかな?


「・・・逃げて!」


「我は何人たりとも揺るがせぬ、不動の砦なり![イモータル]!」


 エンシェントドラゴンは僕にぶつかった。

 そして、エンシェントドラゴンの勢いは止まった。


「・・・え?なんで」


 僕のHPは2になったけど、エンシェントドラゴンは、僕を微塵も動かすこともできなかった。

 僕はエンシェントドラゴンの動きを止めた後、 MP回復のため一度殺気を込めて殴っておいた。


 その後、エンシェントドラゴンは慌てるように羽ばたき、空に逃げて行った。


 僕は目を閉じ口を閉じて足の指を閉じた。


 そして5秒後、一切に開けながらスキルを発動した。


「[ジェット]」


 僕は体の17箇所から[ジェット]を発動させた。

 そしてエンシェントドラゴンを追いかけた。


「もう逃がさない、準備は整った、さあ始めよう、俺の勝利で終わるゲームを」

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