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第19話 迫るドラゴン

 次の日になった。

 僕は昨日食材を買っている際に、近くでバックが売ってたからそれを買った。


 そのバックに、[アイテムボックス]から取り出した魔法陣が書いてある紙をそれなりに詰め込んでいる。


 この間ヘルフレイムハウンドと戦った時、あの魔法陣が今手元にあったらなーと思ったから、いつでも魔法陣スキルがパッと使えるように、バックに入れておいた。

[アイテムボックス]に入れていると、一度取り出す手間がかかるからだ。


 それに、魔物を倒すたびに、魔石や魔物の素材を一々[アイテムボックス]に入れていたら、一瞬で[アイテムボックス]の魔法陣がなくなってしまう。

 だからある程度はバックに入れて、バックに魔石や素材が溜まってきたらアイテムボックスに入れるように、大きめの背負えるバックを昨日買った。


「今日はダンジョンに行こう」


 ピィナーとイリアに僕はそう告げた。


「・・・」


「ピィ!ピィピィ!(だんじょん!たんさくたくさん!)」


「いや、ピィナーは留守番だ」


「ピィ!?(なんで!?)」


 ピィナーは愕然としている。


「ペットは家に留守番して、飼い主の帰りを待つものだ」


「ピィピィ!(やだ!いっしょがいい!)」


 ピィナーは僕のズボンを引っ張って僕に抗議している。


「だけどな、ピィナーを連れて行くと範囲攻撃できなくなるんだ」


「ピィ?(はんいこうげき?)」


「そうだ」


[パーティ編成]というスキルがある。

 そのスキルを使いながら相手に接触するとパーティ申請を送れて、相手がそれを了解してくれればパーティを組むことができるようになる。


 パーティを組むと、パーティメンバーの名前、HP、MPが把握できるようになり、他のパーティメンバーの範囲攻撃でHPが減ることがなくなる。


 範囲攻撃は[グラビティ・バインド]や、[アースクウェイク]、[ハイパーボイス]などがある。


 ただし、範囲攻撃以外のスキル、[ソーラー・メテオ]や、[ショット]、[サンドボール]などは普通に味方にも当たるし、殺気を込めて味方を殴れば当然HPを減らせる。


 範囲攻撃以外の攻撃はうまくすれば味方に当てないように戦えるけど、範囲攻撃を味方に当てないように戦うのはほぼ無理だ。

 だから範囲攻撃をしたら味方が死にました、ということになりかねない。

 そうならないようにするために、[パーティ編成]は必要だ。


 そしてパーティを組める最大人数は5人までだ。


 効果は街や村などに入った際に切れる。

 街の中では切れないし、街から出るときも切れないが、一度外に出て街や村に入った時に切れる。


 僕は女の人以外をパーティに入れることはできない。ハーレムじゃなくなるからだ。

 だからピィナーには、って、そういえばピィナーは女の子なんだろうか?男の子なんだろうか?


 でもピィナーは妖精か。

 結局、人系の種族じゃないからパーティに入れちゃダメだね。

 あれ?でも妖精って、まあいいか。


「お留守番だ」


「ぴぃぴぃ!(やだやだ!ピィナーもいく!)」


 ピィナーが宿屋の床に転がりながら手足をジタバタさせ、駄々をこねている。


 どうしようかな?うーん、でもそうか、ここは宿屋だから家じゃないのか。


 仕方ない、範囲攻撃できなくなるけど連れて行こうかな。


「分かった、付いて来い」


「ピィピィ!!(やったー!!)」


 とりあえずイリアとパーティを組もう。


 僕は[パーティ編成]のスキルを発動して、イリアに触れた。


 イリアは少し驚いたあと、了承をしたようだ。


 それによって、視界の左上にイリアの名前、HP、 MPが表示された。


 イリア HP 13924 MP 0


 HP、MPの最大値は表示されない。表示されるのは現在HP、MPのみだ。


「・・・!?」


 ん?イリアが何かを驚いている。

 もしかしてパーティ編成は初めてなのだろうか?


「どうした?イリア」


「・・・」


 イリアは何も話せない。うーん不便だ。なんとか意思疎通を図りたいんだけどなー。


 どうすればイリアは話せるようになるんだろう?

 まずはイリアが話せない原因を調べるしかないかな。

 原因が分からなければ、対策や解決なんてできないし。


 でも原因ってなんなんだろう。

 状態異常じゃなかったし。

 身体的な障害なのかな。


 まあ、ここで考えていても分からないかな。

 よし、ダンジョンに行こう!


「行くぞ、ダンジョンに出発だ」


「・・・」


「ピィ!(おー!)」






「宿に泊まりたい、4人だ」


「はいよ」


 宿を出ようとした時、宿に泊まる客とすれ違った。

 今は朝なのにもう泊まるのかな?いや、先に宿屋を確保して置きたいって人たちかな?


「やーっとー、街についたねー」


「マジヤバすぎっしょ!怖すぎっしょ!」


「いつ追いつかれるかとヒヤヒヤしましたからね、でもなんとか街まで着きましたね」


「ああ、あとは口下手エルフに押し付けて、あいつが戦っている間にとっとと国に帰るぞ」


「あれ?戦っている間に帰るんですか?」


「ああー、タイチョー、早く国に帰りたいんだねー」


「・・・悪いか、もう我慢ならんのだ、それに一度戦闘を始めたら問題ないだろ」


「分かる!分かるぜ!その気持ち!はよ帰りてー!」


「じゃあ、街が騒がしくなるまでは、宿で待機ですかね」


 あれ?ピィナーがなぜか宿に泊まりにきた4人組の人の方によって行った。


「ピィ?ピィピィ(なんだろう?おいしそう)」


「ん?なんだこの兎?」


「ピィナー、何をしている、早く行くぞ」


「ピ、ピィ(あ、うん)」


 俺たちは宿を出た。






「青色の兎?うちの我儘な姫様が欲しがりそうだな、いや、今は卵を見せるのが先だ」






 僕たちは街の入り口まで来た。


「よう、2日ぶりだな、・・・へぇ、いい趣味してるな」


 街の入り口のおじさんだ。

 あれ?なんで僕の趣味を知っているんだろう?

 街の入り口のおじさんに僕の趣味を話したことなんてないのに。

 でもいい趣味って褒められた。


「ありがとう」


「・・・ま、俺がとやかくいうことじゃないか、それで、お前さん達はこれからどこに行くんだ?」


「東の森のダンジョンに向かう」


「ああ、あそこか、あのダンジョンならお前さんでもなんとかなるんじゃないか?」


「何がだ?」


「あそこは子供でも老人でも誰だって攻略できる初心者のダンジョンなんて呼ばれていてな、弱い魔物しか出てこないんだよ」


 弱い魔物しか出て来ない?なら、そのダンジョンの中ボス後は簡単な魔法陣の仕掛けなのかな。


「って、俺に言われなくても冒険者ならギルドで聞いてるか」


「いや、俺たちは冒険者じゃない」


「は?冒険者じゃない?お前さん、確か2日前俺にギルドの場所を聞いてきたよな?行ってないのか?」


「ギルドには行った、だが冒険者にはなれなかった」


「あー、そうか、・・・え?マジか?冒険者になれなかった?そんなやつは初めて見たぜ」


「ああレベル1はダメだとな」


「・・・!?」


「そうか、じゃあ俺がお前さんにダンジョンについて教えてやろうか?」


「大丈夫だ」


 ダンジョンの形はそのダンジョンによって違ってくる。

 上に上がって行くダンジョンもあれば下に降りて行くダンジョンもある。

 森のダンジョンもあれば山、平原、沼、海の中、空の上、塔、城、洞窟など、たくさんの種類がある。


 そしてダンジョンの中の魔物は外の魔物とは少し違っており、魔物同士で争うことがない。

 だから、魔物同士で争ってレベルが上がるということはないため、同じ階層にいる魔物はほとんどレベル差はない。


 そしてダンジョンにはトラップがある。

 トラップの種類は様々だけど、僕が一番気をつけなければならないトラップはスキル封印トラップだ。


 これにかかれば僕は恐らく死ぬ。


 スキル封印トラップや、転移トラップ、召喚トラップ、落とし穴トラップなどのいやらしい罠や初見殺し系のトラップは中ボス後に出て来るようになる。

 中ボス前まではあまりえげつないトラップと言うものはない。


 一応僕は[トラップサーチ]のパッシブスキルを持っているが、罠解除用の装備やアイテムは持っていない。

 だから中ボス後からはトラップに警戒しておこう。


 そしてダンジョン内では一部スキルの効果が無くなり、使用もできなくなる。


 例えば魔物が寄ってこなくなる[アミュレット]や、一部の移動系スキル、[シャドウムーブ]などがだ。


 どれも使えたら簡単にダンジョン攻略ができるスキルが基本的にダンジョンでは使えない。


「まあ、あのダンジョンなら、いや、どうだろうな?他のやつなら大丈夫だろうが、お前さんは、まぁ気をつけな」


「ああ」


 それにしても、初心者のダンジョンか、強い魔物がいないならあんまりお金にはなりそうにないかな。


「ん?何だあれは、鳥・・・か?いや、ドラゴン?いや、まさかな」


「どうしたんだ?」


「いや、あそこ、ん?大きくなって来ている?やっぱりドラゴンか?」


 街の入り口のおじさんが指した方を見てみた。


「・・・こっちに向かって来ているようだな」


「い、いや、だが、流石にこの街に来るってことはないだろ、街や村にはよっぽどのことがない限り魔物は来ないからな」


「だが、真っ直ぐこっちに来てるぞ」


「・・・不味いかもな、一応俺はギルドに伝えて来る、万が一があるかもしれないからな」


 そう言って、街の入り口のおじさんは走り去った。


 ・・・あれ?ここに人がいなくなっていいのかな?

 もしここに人がいなくなると、街に入ろうとして来た人が困るかもしれない。


 僕たち、一応ここにいた方がいいかな。

 僕たちがいても何か出来るわけじゃないと思うけど、誰もいないよりはいいかな。


 街の入り口のおじさんが帰って来るまでここで待とう。


 それにしてもドラゴンか、いい戦闘経験になるかもしれない。

 街の入り口のおじさんが戻ってきたら倒しに行こうかな。


「ここでしばらく待つか」


「!?・・・」


 ん?イリアが全力で首を横に振っている。


「どうしたんだ?イリア」


「・・・」


「もしかして、早くダンジョンに行きたいのか?」


「・・・」


 イリアは首を振っている。


 うーん、何なんだろう。何かいきなり用事でも思い出したのかな?


「何か用事を思い出したのか?行ってもいいぞ?」


「・・・」


 だけどイリアは動かない。

 本当どうしたんだろう?


 僕はしばらくイリアとの意思の疎通を図った。






 ダメだ、イリアが何を言いたいのかがわからない。


 僕はイリアと意思の疎通ができないかを頑張って試していたら、突然街の方から大きな声が聞こえて来た。


「[冒険者の皆さん!緊急依頼です!至急ギルドにお集まりください!一刻の猶予すらない可能性もあります!冒険者の皆さん!直ちにギルドへ!]」


「何だ?」


 でっかい声だ。すごい。この声、確かギルドの受付の女の人の声だ。


 ここからギルドまでそれなりに離れているのに、ここまで声が届くほど大きな声が出せるんだ。

 もしギルドの受付の女の人が[ハイパーボイス]なんて使ったらどうなるんだろう?

 もしかしたら街の中全体にダメージ判定が届くかもしれない。


「冒険者が呼ばれていた?」


 緊急依頼って何だろう。でも僕は冒険者じゃないから関係ないかな。


 僕は街に近づいて来るドラゴンの方を見た。


 ドラゴンは結構近づいて来ている。

 やっぱりこの街に向かってきているのかな?


 まあ、街の入り口のおじさんが戻って来るまではゆっくりしておこう。


 それにしても遅い。確かギルドに何かを伝えて来るって言ってたのに。

 もうとっくにギルドに着いて、帰って来れるくらいの時間が過ぎていると思う。


 まだかなー?


 僕はドラゴンが近づいて来る街の入り口で、ただ待っていた。

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