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第14話 どれいって何?

 どうしよう、僕は冒険者になれないらしい。


 仕方ないけど、冒険者になることも後回しにするしかないのかな。


 お兄ちゃんならきっと全部簡単に済ませられるんだろう。

 でも、僕は全然ダメだ。


 僕はお兄ちゃんじゃないからなんでも完璧にこなすことができない。

 だけどいつかは完璧なお兄ちゃんになる。

 そのためにも、今は焦らず、できることからコツコツとやって行こう。


 冒険者になれないなら、ギルドにいても仕方ないかな。

 これから何をしよう?

 最強を目指すのと人々を助けて感謝されるのと、ハーレムを作ること。これが今の僕の目標だ。


「ん?」

 

 何か視線を感じて振り返って見た。


「・・・」


 あの[ショックウェイブ]を使って3人組を吹き飛ばした女性が僕のことをじーっと見ている。


「どうした?」


「・・・」


 どうしたんだろう?僕をじっと見つめて?

 何か僕変なところがあるのかな?うーん?


 ・・・あ!分かった!これお兄ちゃんが言ってたやつだ!


 確か、仲間になりたそうにこっちを見ている、ってやつ!

 もしかして僕の仲間になりたいのだろうか?

 よし、誘ってみよう。幸いここはギルドだ。お兄ちゃんはギルドにいる人をパーティに誘えば一緒に冒険できるようになるって言ってた。


 これはきっとお兄ちゃんの夢を叶える千載一遇のチャンスだ。


「俺のハーレムに入らないか?」


「・・・は?」


 ん?聞こえなかったのかな?


「俺のハーレムに入らないか?」


「・・・最低」


「え?」


「・・・消えて」


 ・・・どうやらダメらしい。

 うーん、冒険者にならないと誘ってもダメなのかな?

 それと何故か顔を歪めて不快に思っているようだ。

 僕が不快にさせてしまっただろうか?


「何か不快にさせてしまったか?謝ろう、すまなかった」


 うーん、僕にはハーレムも難しそうだ。

 いや、一人に断られたからって諦めるなんてダメだ。幸いこのギルドの中には女の人がたくさんいる。

 全員に声をかければ僕のパーティに入ってくれる女の人がいるかもしれない。


 僕はギルドにいる女の人に片っ端から声をかけて行こう。


 ギルド職員さんは多分パーティには入ってくれないだろうから、声はかけなくていいか。






「俺のハーレムに入らないか?」


「え?いきなり何を言ってるんですか?入るわけないじゃないですか、初対面ですよね?」






「俺のハーレムに入らないか?」


「きゃー、ナンパ?ナンパかな?私ナンパされちゃった!」


「おい、てめぇ!人の女に何言ってやがる!」


「いや、すまなかった、もうお前のハーレムメンバーだったんだな」


「え?シュー君、私以外に女がいるの!?」


「は?な、何言ってんだ!そ、そんなわけないだろ!ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!てめぇ!」






「俺のハーレムに入らないか?」


「おやおや、私をハーレムに誘っておるのかい?ホッホッホ、私もまだまだ若いんじゃのぅ、嬉しいものじゃ、じゃが生憎、私は爺さん一筋でのぅ、すまないね」






「俺のハーレムに入らないか?」


「あんたレベル1なんでしょ?そんなレベルで私を誘うとか、恥ずかしくないの?」


「ん?何故だ?」


「あんたがもっと強ければ考えて上げても良かったんだけど、1レベルじゃあねぇ」


「レベルで全てが決まるわけじゃないぞ?」


「それ、さっきそこで絡まれている時も言ってたみたいだけど、でもレベルは強さの一つの目安にはなるでしょ?私はあんたのレベルしか知らないんだから、弱いって思って当然じゃない?」


 そっか、確かにレベルは一つの目安だ。僕も他の人や魔物の強さを測る時、レベルも目安にしている。

 もちろん、レベルで全てが決まるわけじゃないけど、レベルを見ただけなら僕は弱い。


 あの3人組はきっとスキルや称号を見れないからこそ、レベルで判断して、僕が危険に会うのを防ごうとしていたんだ。


 あの3人組は親切で僕に冒険者になるべきじゃないって言っていたんだ。


 それを僕はただの酔っ払いの戯言にしか思っていなかった。

 相手の気遣いにすら気づかないなんて、反省しないと。


 僕はいつのまにかあの3人組に僕の価値観を押し付けようとしていたのかな。


 お兄ちゃんの考えは全て正しいけど、僕の考えは全て正しいってわけじゃないのかもしれない。


 お兄ちゃんはとても広い心を持っていた。

 人には人それぞれの考え方があるんだから、僕みたいに他人の考えを否定しているだけじゃ、まだまだお兄ちゃんには程遠い。


 広い心を持たないと。


「ありがとう、君がいなければ俺は間違え続けていたかもしれない、そして君のおかげでまた一つ成長できた、感謝する」


「え?ちょ、ちょっと!何よいきなり」






 全滅だった。うーん、ギルドではパーティを組むのは簡単だって聞いてたけど、やっぱりそれはお兄ちゃんだからなんだろうな。


 ハーレムは自分以外が女の人のみのパーティだってお兄ちゃんが言ってた。

 だから女の人をパーティに誘ったけどダメだった。


 僕がまだ冒険者になれてないから断られるのかな?

 あとレベルが低いからって言って断ってきた人が何人かいた。


 やっぱり僕のことをレベルしか知らないから断られたのかな?


 何処かで僕が強いことをアピールできれば、冒険者にもなれてハーレムも作れるかもしれない。

 うーん、どうしようかな?


 そうだ、とりあえずこの街を探索して、困っている人を探そう。


 その後のことはその後考えよう。






 僕とピィナーは色々街の中を回って見た。

 だけど、誰が困っているかはさっぱりわからなかった。


 とりあえず街の中を探索中に宿屋を見つけたからそこに部屋を借りた。

 ピィナーは歩き疲れたのか、一度宿屋の部屋の中に入った時に寝ちゃった。

 僕はもう少し街を探索したかったからピィナーを置いて一人で街に出た。


 街の大通りは随分と歩いたから、今度は路地裏の少し薄暗いところに来た。

 もしかしたらこう言った場所に困っている人がいるかもしれないから。


「うーん、どうしようかな、困ったな」


 あ!困っている人がいた!困っている人って普段はこういう場所にいるのかな?ここまで来てよかった。


「何か困っているのか?」


「おや、いらっしゃいませ、お客様ですか?」


「え?」


「ささ、どうぞこちらに」


「いや、俺は」


「遠慮なさらず、うちの品揃えはなかなかですよ」


 そう言って僕は建物に連れていかれた。

 僕は買い物に来たわけじゃなくてこの人が困っていそうだったから助けようと思っただけなんだけど。


 この人は商人なんだろうか?何を困っていたんだろう?

 もしかしたら、困りごとは他人にはなかなか話しにくい内容なのかもしれない。


 でも商人なんだから、商品を買ってから聞いて見たら話してくれるかな?とりあえず何を売ってるのかを見てみよう。


 それにしてもこんな路地裏の薄暗いところで商売なんてしても、あんまり人が通らなくて売れないんじゃないだろうか?


 商売に立地はかなり大切だって聞いてるけど。


 僕は建物の中に入った。

 その中には柵があって、その柵の中にいろんな人がいた。

 みんな似たような服を着ている。

 この人達はなにをしているんだろう。


「うちでは様々な種類の奴隷を扱っていましてね、まず左から」


 ん?どれい?どれいってなんだろう?


 あれ?どこかで聞いたことがあったような?

 何処だろう?だいぶ昔、本当にかなり昔に聞いたことがあった気がする。


 うーん、なんだったか、思い出せそうで思い出せない。

 うーん、いつだったか。


「・・・でしてね、ふむ、どれも気に入りませんでしたか?」


 あ、やばい、考え事に集中しすぎて何も聞いてなかった。


「うちにはあと、扱いに困っている奴隷しかいないんですが」


「困っているのか?」


「ええ、一応見ますか?案内しますよ」


 もしかして、さっき困っていたのはそのことについてかもしれない。


「頼む」


「かしこまりました」


 僕はまだどれいって言うのが何かは知らないけど、とりあえず僕は商人さんについて行った。






 その部屋の中には、同じように柵があって、その中には先ほどと同じような服を着ている女の人が一人だけいた。


「なにが困っているんだ?」


 それとそのどれいっていうのは何処にあるんだろう?


「ええ、実はこの女性は[魔力抜き]が出来なくてですね、そう行った目的に使えないんですよ」


「[魔力抜き]が出来ない?」


「ええ、人系の種族でもですね、産まれながらにMPを持っていない一部の人は魔力の存在を一切感じられないとかで、[魔力抜き]が出来ないらしいのですよ、[魔力抜き]なんて言っているんですからMPがない人はむしろずっと[魔力抜き]の状態でもおかしくないと思うんですけどね」


 うーん、なぜこの女の人の話をしているんだろう?

 どれいを売りたいんじゃないのかな?

 あ、もしかしてどれいってこの女性が着ている服のことなのかな?

 さっきの部屋の人たちも同じような服を着ていた。

 だからきっとそうだ。


 そしてこれは実演販売ってやつなのかな?

 実際に着ているところを見せて販売するってやつだ。


 この服は何か特別な効果のある防具なのかな?


 でもそれで女性の身の上を話す意味があるのかな?服について話せばいいのに。


 ああ、さっき僕がどれいについて聞いていない間に、どれいのことは語り尽くしていて話すことがないから、どれいを着ている女性のことを話してるのかな?


 でもいらないかな。防具は別に。


 何よりこの服、お兄ちゃんには似合わなさそうだ。


 ・・・あ、あ!そうだ!思い出した!どれいって何処かで聞いたことあると思っていたけど、そうだ!お兄ちゃんが言ってたんだ!


 僕が1歳、いや、もうちょっと前だったかな?それくらいの時に、


「イベントか何かで奴隷紋が出てきてくれてたら、はぁ、奴隷が欲しいな」


 って言ってたんだ!そうだった。お兄ちゃんは奴隷を欲していたんだ!


 なら買わないと!


「買おう」


「え?よろしいのですか?」


「構わない」


「ありがとうございます!早速準備してまいりますね!」


 あ、そういえば様々な種類があるって言ってたっけ?

 見た目は同じような服でも、実は一つ一つ効果が違ったのかもしれない。


 でもこの商人さんが困ったって言ってたのは、このどれいだったはずだから、これで商人さんの悩みも解決できてどれいも買える。


 一石二鳥ってやつだ。

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