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第12話 街

 僕は村を出て、まず真っ先にある魔法陣スキルを発動した。


「[リメイク]」


 そのスキルが発動した時、僕の体は変化した。

 このスキルは容姿を変更できるスキルだ。

 変更できるのはあくまでその種族の範囲内だけなので、例えば人間種なのに10メートルも身長がある姿になるとかは出来ない。


 僕はこのスキルでお兄ちゃんが大人になったらこうなるだろうなって言う姿になった。


 このスキルは容姿を変更するだけのスキルなため、例えば80歳のお爺ちゃんがこのスキルを使って20歳の体を手に入れても、ステータスは80歳分の老化の影響を受けるし、寿命も変わらない。


 このスキルをグランドドラゴンを倒した後に思い出していれば、髪の毛を切るために[魔力抜き]をするなんてリスクを背負う必要もなかったけど、あの時は忘れていた。


 僕には戦闘経験が全然足りない。今考えればあのグランドドラゴンの最期の[ブレス]を防ぐ方法だってあったのに、あの時は全然思い浮かばなかった。


 だからもっと色々経験して、完璧なお兄ちゃんに近づかないと。


 僕が今このスキルを使ったのは、ほかの人に舐められないようにするためだ。


 お兄ちゃんが言ってた。舐められるのはダメだって。


 それに6歳の姿だと色々不便なことがあるだろうし、第一印象はとても大切だから、僕は大人の姿になった。


「ピィ?(誰?)」


 青兎のピィナーが立ち止まって僕のことを不思議そうに見ている。

 僕の姿が変わったから、誰かわからなくなったのかな?


 いつまでも青兎って言うのもアレだったから、僕はこの青兎をピィナーと呼ぶことにした。

 ピィピィ泣いているからピィナーだ。


「ピィナー、早く行くぞ」


「ピ、ピィ!(分かったー!)」


 ピィナーには、僕の小さい頃の服を着せている。僕がまだ赤子だった頃の服だ。それでもまだ少し大きかったけど、シスターが手直しをしてピィナーの服を作ってくれた。


 僕はその服にある2つの魔法陣を書いておいた。

 書くのには本当にかなり苦労した。

 なぜなら服が小さいから魔法陣も小さく書かなくてはならなかったからだ。


 魔法陣の大きさは自由だ。大きくても小さくても構わない。

 だけど大きければ大雑把に書いても発動するけど、小さければ小さいほど、ほんの少しのズレで魔法陣が機能しなくなる。


 だから本当に大変だった。


 何のスキルの魔法陣を書いたかというと、まあ、虚仮威し?ハッタリ?用のスキルだ。

 いや、物理的にはかなり強くなれるけどね。






 僕はこれから最強を目指す。

 最強を目指すならやっぱりダンジョンを攻略していかなければならない。


 ダンジョンを制覇することでもらえる称号の中にかなりいい効果の称号があるからだ。

 最強を目指すなら取らないとダメだろう。


 そしてダンジョンの中にはレベルが高いと入れないレベル制限のあるダンジョンがあるってお兄ちゃんが言ってた。


 だからレベルを上げるわけにはいかない。


 でも僕はそのダンジョンがどこにあるかなんて知らない。お兄ちゃんは知っていただろうけど僕は分からない。

 そのダンジョンの場所について知ってる情報は、その周囲にはかなり高レベルの魔物がうろついているから低レベルでそのダンジョンまで行くには[アミュレット]が必須ってことをお兄ちゃんから聞いただけだ。


 高レベルって言うくらいだから、きっと50レベルとか、もっと高いレベルの魔物がうろついているところにあるんだろう。だから強い魔物が出るところを情報収集していけばいつか見つけられると思う。


 街についたらまず冒険者になろう。

 お兄ちゃんは将来は冒険者になるって言ってたから、僕が冒険者になる事は確実だ。

 冒険者にはギルドってところでなれるらしい。

 街についたらまずはそこに行こう。


 あ、そうだ、僕はお兄ちゃんになるんだから、魔法陣スキルを使うときの詠唱を考えないと。


 魔法陣スキルを使うとき、お兄ちゃんは詠唱を行なうべきだって言っていた。

 何か効果があるわけではないし、詠唱はなくてもスキルは使えるけど、かっこいいから詠唱はするべきだって。


 詠唱、考えておかなきゃ。

 攻撃系の大規模魔法陣スキルはお兄ちゃんが考えたものを知っているけど、他の魔法陣スキルの詠唱は知らないから。






 僕は詠唱を考えながら歩いていた。

 その時、僕のパッシブスキル[生物感知・魔法]に反応があった。


 右から何かが近づいて来ている。

 僕は右を見た。


 すると、そこには真っ黒く燃える大きな犬がいた。

 大体高さは3メートルくらいだろうか?グランドドラゴンと比べるとかなり小さいけど、それなりに大きい犬だ。


「[ディテクション]」


 名前 サンガーラザの獄炎獣


 種族 ヘルフレイムハウンド


 LV 30


 HP 251436/251436


 MP 114316/114316


「グルルルル!」


「ピ、ピィィ!(怖い!)」


 ピィナーが犬を怖がって僕の後ろに隠れた。


 僕は戦闘経験を積まないと行けないから、この魔物で色々練習しよう。

 そんなに強くなさそうだし。


 でも油断はしない、どんな攻撃を持っているか分からないから。

 犬の体から出ている黒い炎は、触っている間ダメージが入るけど、魔法の炎だから熱くはない。


 HP MPが満タンだから、この魔物は寝起きなのか、食後なのか、それともオートリジェネのHP MPの両方を持っているのか、どれかだと思う。


 とりあえず[ジェット]を発動するか[イモータル]を発動したいけど、[ジェット]の場合、スキルモーションのせいで5秒間完全に無防備になるし、[イモータル]の場合、今考えた詠唱を唱えないといけない。


 その間に攻撃されて、もしこの魔物がグランドドラゴンのように僕を殺せる何かを持っていたらマズイ。

 それにもしこの魔物に僕を殺すすべがなかったとしても、ダメージをらってもいいや、なんてやっていたら練習にならない。


 とっさに[イモータル]や[シャドウムーブ]が使えないというのは色々と厳しい。だけど僕は詠唱するって決めたんだ、なんとかその隙を作らないと。


「グルルルル!」


 魔物はこちらの様子を伺っている。

 僕は腰に付けていたナイフを抜いた。


 これが剣だったら、[剣の結界・100閃陣]が使えるけど、ナイフだから使えない。

 あ、後ろにピィナーがいるから使ったらピィナーが最悪死んじゃうか。


 あ、待って、そういえばよく考えたら別に100回くらい攻撃すれば倒せるのか。


 そうか、僕は全力で殺そうとしていたけど、わざわざ魔法陣を使うまでもないのか。


 練習の為に魔法陣スキルを使って戦ってもいいけど、魔法陣は数に限りがある。また書けはするけど時間がかかる。

 それなら出来るだけ強い奴の方がいい練習になると思うから、強い魔物が現れたら練習しよう。


 じゃあこの魔物はサクッと倒しちゃおう。


 僕はナイフを腰に付け直した。


「グルル、ガァ!」


 魔物が口を大きく開きながら僕に飛びかかって来た。


 僕は地面を踏みしめて土を蹴り上げた。


「[サンドボール]、[アディション][ディスアセンブル]」


 魔法スキル[サンドボール]はスキルモーションのある魔法スキルだ。


 そして飛びかかって来た魔物の口の中に入った瞬間に[サンドボール]に付加した[ディスアセンブル]の効果で[サンドボール]が分解した。


 その瞬間、魔物はHPが0になり倒れた。


「・・・弱いな」


「ピィ!!(凄い!!)」


 なぜ魔物が倒れたかというと、僕の攻撃を256回受けたからだ。


 付加スキルの[ディスアセンブル]では分解できるスキルとできないスキルがあるが、[サンドボール]は特に分解できる個数が多くて、最大256個まで分解できる。

 そして、その分解した全てにダメージ判定がある。


 ただし[ディスアセンブル]で分解したスキルは攻撃力が激減する。2個に分解したら攻撃力が4倍下がり、4つに分解したら攻撃力は16倍下がる。


 256個に分解した場合、一つの攻撃力は65536倍低下する。


 でも、僕の場合攻撃力が下がってもダメージが50倍と、49プラスな為、1つあたり2500ダメージを与えられる。

 それが256回。あの魔物のHPを削りきるのには十分だ。


 少し時間が経ち、魔物の蘇生時間がすぎて、魔石だけを落として魔物は消えた。


 この程度の魔物だと、やっぱり戦闘経験は積めないかな。





 街が見えてきた。

 道中の魔物は1度戦っただけだ。

 ここのあたりの魔物だと、多分弱くて戦闘経験になりそうになかったし、早く街まで行きたかったから[アミュレット]の魔法陣を書いて使った。


 だから戦闘したのはあの一回きりだ。

 魔物が落とした魔石はポケットに入れている。いちいち[アイテムボックス]に入れていたら、魔法陣がいくつあっても足りないから。


 街の入り口の門の前にはおじさんがいた。


「止まれ」


 僕はそのおじさんに呼び止められた。


「・・・黒髪黒目だが、子供じゃないな、それに名前も違うか」


 ?誰かを探しているのかな?


「いや失礼、何か身分を証明できるものは持ってるか?」


 身分を証明できるもの?なんだろう、僕はそんなアイテムを持っていないと思う。


「・・・持っていない」


「そうか、少し待っててな」


 そう言って、門番の人は何か道具を弄りだした。


「よし、じゃあ質問に答えてくれ、今まで盗賊以外で人を殺したり犯罪を行なった事はあるか?まあそんなレベルじゃ、無いとは思うがこれも仕事なんでな、答えてくれ」


 人を、殺した・・・僕のせいでお兄ちゃんは死んだ。

 だから僕がお兄ちゃんを殺したようなものだ。


「・・・」


「おいおい、黙ってちゃ分からんぞ?って、まさかあるのか?」


 でも僕は今お兄ちゃんなんだ、僕がお兄ちゃんを殺したようなものでも、お兄ちゃんは何も悪くない、お兄ちゃんは人を殺していない。

 だから人殺しも犯罪も行なっていない。


「いや、無い」


「・・・そうか、この街に来たのは何か良からぬことを企んでのことか?」


「いや、違う」


 なんだろう、僕はこの門番に疑われているのかな?


「・・・よし、大丈夫そうだな、すまんな嫌なことを聞いて、これも仕事なんでな、お前さんはこの街にはどんな用事できたんだ?」


 どうやら疑いは晴れたらしい。


「俺は夢を叶えるために来た」


「夢?どんな夢なんだ?」


「世界最強になることだ」


「・・・ふっ、若いっていいな、ただ無茶はダメだ、見た所ペットと一緒のようだが、そんなレベルなんだ、魔物に襲われたらすぐに死ぬぞ、いや、ペットはレベル10?うさぎにしては随分と高いが、やっぱり危ないぞ、この街に来るまでにたまたま魔物が出なかったのかは知らないが、街を出るときは誰か冒険者にでも護衛についてもらったほうがいい」


 ・・・ああ、このおじさんは[ディテクション]を発動しているのか。

 だから僕やピィナーのレベルがわかるんだろう。


「その心遣いには感謝する、だが心配無用だ、俺は誰にも負けないからな」


 そう、僕はもうお兄ちゃんになったんだ、だから絶対に、誰にも負けるわけにはいかない!


「・・・俺は忠告したぞ、まあいいか、自己責任だ、ようこそレイルガルフへ」


 僕は初めて街の中に入った。

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