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外伝2 ガーナック・レイダース 2

 僕は村の人に商品を売って、出来るだけ荷車の商品を減らした。


 申し訳なかったけど、他の人が売ってくれるって言ったものはまた今度にしてもらった。

 お金は全部アルター君に渡すし、今荷物を増やすと確実に帰れなくなるから。


 村を全部回ってもまだ結構商品が残っていたけど、それは全て事情を知ったシスターが買い取ってくれた。昔は冒険者だったシスターは何気にお金持ちだ。


 だからあと残っているのは僕の分の水と食料、それと魔物が寄ってこなくなる魔道具に予備の魔石だけだ。


 教会でシスターと少し話していたらいつのまにか荷車に爪が乗っていた。


 アルター君がどうやって荷車に爪を乗せたのかはわからないけど、爪は大きすぎてかなりはみ出していたから、僕は爪が落ちないように頑張って固定して、アルター君にお金を払って、村を出た。


 帰りは2倍以上の時間がかかった。それだけ荷車が重たくて、何度も休憩を挟みながらゆっくりと進んでいたため時間がかかった。






 僕はレイルガルフの街にある家に帰って来た。


「ただいまー、ごめんリリア、また所持金全部使っちゃった」


「・・・はぁ、いつかはやると思っていたけど、また無駄遣いしたの?今度は何を買ったの、変な形の青い石?それとも子供の落書きのような絵?もしくは石で出来た人型の人形かしら?・・・はぁ、せっかくお金が貯まって来たところだって言ったのに、お金を全部使うなんて、また借金生活するつもり?」


「あはは、でも無駄遣いじゃないよ、その村の子供がね、今度旅に出るって言っててお金が必要だって言ってたから」


「はぁ!?それでお金を子供に渡したの!?お父さん確か金貨50枚くらい持ってなかった!?子供に渡すお金じゃないわよ!」


「いや、ちゃんと物を買ったよ」


「子供が渡せるものなんてたかが知れてるじゃない!何を買ったの!?・・・はぁ、どうせ子供からもらったものなんて何の価値もないでしょうね」


「えっと、もぐらの爪だったかな」


「・・・はぁ、もぐらの爪に金貨50枚って、そんな高価なもぐらの爪あるわけないじゃない、やっぱりお父さんは人を見る目はあっても物を見る目はないわね」


「あはは、ごめんねリリア」


「別に私のお金じゃないから何に使おうとお父さんの勝手だけど、苦労するのはお父さんなのよ?その金貨50枚はお父さんがいろいろなところに頑張って行って頑張って稼いだ努力の結晶なんだから、そんなにポンポン使っていいの?」


 僕はいつもリリアに心配をかけているな。


「ありがとう、心配かけてごめんね」


「・・・はぁ、まあ一応もぐらの爪を見ておきましょう、もしかしたら銀貨10枚くらいにはなるかも知れないから」


「そんなに安いのかな?」


「むしろ高い方よ」


「そっか、もっと高くなると思ってたよ、やっぱり僕には物を見る目はないね、せっかく頑張って運んだんだけどなー」


「はぁ、ほんとお父さんにはものを見る目がないんだから」


「リリア、ため息をつきすぎると幸せが逃げるって言うらしいよ?」


「誰のせいで私がこんなにため息をついていると思ってるのよ!」


「あはは、ごめんね」






 僕とリリアは荷車を置いてある場所まで来た。まだ爪はおろしていない。下ろすともう運べなくなりそうだから。

 それにしてもよく荷車が持ってくれた。これだけ重たいからいつ壊れるかヒヤヒヤしてたけど、僕の荷車は頑丈さが取り柄だから壊れてはいない。その分重たかったりするけど、この荷車で本当に良かった。


「・・・何よこれ」


 リリアは荷車に乗った爪を触っている。


「あー、やっぱり売れないかな?」


「うそ、でしょ、こんなのありえない」


 リリアは爪を触り叩き、様々な角度から観察している。


「え?そんなに価値ないの?」


「違う、違うわ、・・・お父さん、これ幾らで買い取ったって言った?」


「え?金貨50枚だけど?」


 リリアは何を驚いているのだろうか?


「・・・ありえないわ、そんなお金で買い取れる筈がないわ」


 やっぱりそんなに高くないのか。あはは、・・・あれ?


「今の発言だとまるで金貨50枚以上の価値があるように聞こえるけど」


「・・・詳しくはうちの商会で魔道具を使って調べて見ないとわからないけど、ミスリル貨、いやアダマン貨、ううんオリハル貨でもきっとこんなの買えないわ」


「・・・え?」


 ミスリル貨って言うのは正式にはミスリル硬貨、アダマン貨はアダマンタイト硬貨、オリハル貨はオリハルコン硬貨のことを言うけど、価値は下から銅貨、銀貨、金貨、ミスリル貨、アダマン貨、オリハル貨の順になっている。

 100枚で一つ上の価値のある硬貨と同等の価値がある。

 だから銅貨100枚で銀貨1枚の価値、銀貨100枚で金貨1枚の価値がある。


 パンは1つ1銀貨くらいだから、1オリハル貨の価値はパンが1億個、銅貨で数えると100億枚の価値があるってことになる。


 リリアは嘘をついている様子はない。

 つまりこの爪にはパン1億個分の価値があるってこと?


「これがもぐらの爪?ありえないわよ、大きさ、材質、硬度、全て桁違いじゃない!お父さん、これ本当にもぐらの爪なの?」


「えっと、もぐらの爪って言ってたよ、あれ?違ったかな?そうだ確かグランドドラゴンの爪って言ってたかな」


「グランドドラゴン?聞いたことないけど、間違いない、この爪ドラゴンの爪だわ!お父さん!何でもぐらの爪なんて言ったの!?」


「え?だってもぐらって土竜って書くでしょ?だからグランドドラゴンってもぐらの種類なのかなって」


「グランドはグラウンドじゃないわよ!雄大とか壮大とか立派なとかって意味でしょ!?何間違えてるのよ!」


「え?そうなの?でも6歳の子供が倒したって言ってたんだよ?」


「それこそ冗談でしょ?これきっとかなりの魔物よ、こんなのきっと誰だって倒せないわよ」


「え?魔物なの?」


「魔物以外にはありえないわよ!・・・はぁ、お父さんの物を見る目がここまで無いなんて、お父さん、これオリハル貨1枚で私が買い取ってもいいかしら」


「え?いやいや、僕そんな大金貰えないよ、だって金貨50枚で買い取っちゃったんだよ?」


「この爪にはそれだけの価値があるのよ、これだけのものはこの世に2つとありはしないわ」


「でも、村の子供がグランドドラゴンの全身持ってるって言ってたよ?」


「・・・はい?全身?本当に」


「うん、本当だよ、その子嘘付いてなかったし、グランドドラゴンを倒したって言うのも嘘付いてなかったよ」


「・・・これがお父さんが言ったことじゃ無ければ絶対に嘘って思ったのに、お父さんの人を見る目だけは信頼できる、まさか本当に6歳の子供が?お父さん!その子はなんて名前なの!?」


「アルター・カイ君だよ」


 あれ?イーシスって名乗ってたっけ?まあいいか。


「・・・アルター・カイね」


 リリアはそう呟いた。


「私はこの爪を鑑定した後、そのアルター君に会いに行くわ」


「僕も会いに行こうかな、こんなに価値があるなんて知らなかったから、金貨50枚で買っちゃったし、あーでも、アルター君は旅に出るって言ってたからもう村にはいないかも、それに僕行かなければならない場所があるんだよね、どうしよう」


「・・・そう、じゃあ、しばらくこの街でアルター君が来るのを待とうかしら、あの村からなら一番近くのこの街を通るわよね?会ったらお父さんのことも言っておくわ、何か伝えてほしいこととかある?」


「ありがとう、じゃあ、爪の適正な価格を後で払うって言うのと、ごめんなさいって伝えといてもらえるかな?」


「分かったわ、さて、まず街の門番にアルター君が街に来たらうちに話が通るようにしておいて、後は資金の準備と爪の鑑定、いろいろやることが山積みね、・・・ふふ、誰にも渡さないわ、私が、私が全てを手に入れて見せるんだから!そして誰よりも、・・・ふふ、ふふふ!」


リリアが黒く笑ってる。

あまりいい感情じゃないと思うけど、リリアはお金のことを考えている時が一番楽しそうにしているからね、今が一番楽しそうだ。


「お父さん!アルター君の容姿の特徴ってどんな感じかしら?」


「えっと、アルター君は黒髪黒目の6歳の子供で・・・」

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