表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/82

第10話 村

「いやー助かったよ、ありがとう!」


「どうしてこんなところに一人でいるの?」


「分からん、さっきあっちで目を覚ましたばっかりでな、俺は自分の名前以外なんにも覚えてないんだ」


「君は記憶喪失なの?」


「ああ、そうだろうな」


「そうか、僕はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーだ」


「そうか、よろしくな!俺はーーーーだ!俺の唯一の記憶ってやつだな!」


「えっと、大丈夫?記憶がなくて不安にならない?」


「大丈夫大丈夫!記憶がないことは事実なんだ、ならいつまでも記憶がないことを引きずっててもしゃーないだろ、どうせいつか戻るさ!それに全部が新鮮、新しいって考えると、記憶喪失も悪く無いってな!」


「強いんだね」


「そうか?なるようにしかならないんだから、楽しまなくちゃな!あー、どこか村とかまでついて行っていいか?戦い方とか俺全くわかんないから、お前がいなきゃ、俺もう死んでたからな!」


「あはは、いいよ付いてきて、僕の村に案内するから、ついでに魔物が出て来たら戦い方も教えるよ」


「マジか!本当にありがとな!命の恩人だぜ!」


「・・・そっか、よろしくーーーー」


「よろしくな!えっと、・・・長いからアルターだな!」






 僕は目を覚ました。

 喉がかなり渇いている、それにお腹も空いたし、まだ眠たい、そして体を早く洗いたい。


 僕は自分の周りの土をピットフォールで退けた。


 ピットフォールは両手のひらを地面に触れさせてその状態で動かずに5秒感待機したら、周りの土を動かせるスキルだ。範囲は自身の魔法攻撃力によって決まる。

 だからこのスキルは埋められていても使える。


 川の水を飲み、体を洗った。

 川で体を洗っている間に眠気はどこかに吹き飛んだようだ。

 僕は[アイテムボックス]から新しい服や食べ物を取り出した。


 もう[アイテムボックス]の魔法陣が[アイテムボックス]の中に無くなってしまった。適当に使いすぎたかな。


 じゃあ必要なものは今取り出しておかないと。

 何が必要かな?髪の毛を切るためのナイフは必要だ、あとは、村に帰るまで魔物と会いたくないし、[魔力抜き]の時に魔物が来ると危ないから[アミュレット]の魔法陣も取り出しておこう。確かあと1枚あったはず。

 これくらいでいいかな?それにしても、かなり魔法陣を使っちゃったな。


 グランドドラゴンとの戦いで、あの魔法陣があったらって状況に結構陥ったから、村に帰ったら魔法陣を沢山書こう。

 それである程度魔法陣を書き貯めたら、村から出て、世界中を旅しよう。

 お兄ちゃんの夢を叶えるために。


「ピィ!」


 青兎が寄ってきた。


 どうしよう、この青兎も旅に連れて行った方がいいのかな?

 僕は飼うって決めたから、村に放置なんてしちゃダメか。

 よし、連れて行こう。もし村が気に入ったりで付いてこなかったら、それはそれでいいかな。


「おはよう」


「ピィ」






 僕は[アミュレット]を発動した後、[魔力抜き]をして、髪を短く切った。


 本当に[魔力抜き]の時は脆い。簡単に髪の毛が切れてしまった。それにすこし髪を引っ張りながら切っただけなのに、ちょっと頭が痛かった。


 本当に[魔力抜き]の時は気をつけないと。こんなちっぽけなナイフでも致命傷を負うかもしれないから。


 髪を切った僕はすぐに[魔力抜き]を解除した。


 切った髪の毛は脆いままだ。というより体から切り離した部位も、基本的に脆くなる。


 これで大丈夫、もう村に帰っても、僕はお兄ちゃんと思われるはず。


 帰ろう、村に。


「俺は村に帰るけど、君はどうする?」


 もしかしたら青兎は僕が寝ている間にここに愛着を持って残るってことがあるかもしれない。


「ピィピィ!」


 どうやら僕に付いてくるようだ。






 僕はお兄ちゃんからペットについて聞いている。ペットにはお手やお座りなどを躾けて他人の迷惑にならないようにしないといけないらしい。

 それでペットが行った悪いことは全部飼主が悪いことになるって。

 だから色々しっかり教え込んでおかなきゃ。


 僕は村に帰る道すがら、青兎に躾けをした。






 村に着いた。青兎は僕の後ろをついて来た。


 こんなに長く村を離れたことはなかったから、ちょっと懐かしく感じる。


「あ、お前!イーシスか!?生きてたのか!?良かった!」


「あ、バロックおじさん、こんにちは」


「あ?アルターか?」


 あ、いつもバロックさんと話す時のように話してた。僕はお兄ちゃんなんだ、お兄ちゃんみたいに話さないと。


「いや、イーシスだ」


「そうか?イーシス、どこに行ってたんだよ!みんなお前達が心配で探し回ってたんだぞ!アルターはどうした、一緒じゃ無いのか?ん?青い毛の兎?なんだ?どこから拾ってきたんだ?」


「・・・アルターは」


「お、おお!イーシス、イーシスじゃないか!?帰ってきたのか!?おーいみんなー!イーシスが帰ってきたぞー!」


「本当か!見つかったのか!?」


「本当だ!イーシスだわ!あれ?アルターはいないのかしら?」


「イーシスが見つかっただって!?おーいイーシスー!」


 村中のみんなが集まってきた。

 その中にはシスターもいた。

 近寄ってきたシスターはいきなり僕にゲンコツを落としてきた。


「この悪ガキが!今までどこに行ってたんだい!全く、心配かけさせんじゃ無いよ!」


 全然痛く無い、でもお兄ちゃんはいつも痛そうにしていた。

 僕も痛そうにしないと。


「いたーい!」


「痛く無いだろ!全く、いつもいつも大げさなんだから、・・・よく帰ってきてくれたよ」


 そう言って、シスターは僕を抱きしめた。


「イーシス、アルターはどこにいるんだい?」


「イーシスから基本離れないアルターがいないなんてどうしたんだ?」


「そういえば、あの子と一緒にいないなんて珍しいわね、初めて見たかもしれないわ」


「・・・アルターは、死んだ」


「・・・何、言ってんだい」


「おいおい、笑えない冗談やめてくれよ、なぁ、冗談だろ?」


「・・・死んだ?」


「アルターは、魔物に食べられた」


「・・・あんたら、まさか森に入ったのかい!?あれほど入るなと私は言ったはずだよ!」


「なんで森に入った!?しかも子供達2人だけでなんて」


「魔物を狩りに行ったんだ」


「イーシス、自分のLVが分かってるのか?1レベルだぞ!そんなレベルでしかも子供だけで魔物なんて倒せるはずがないだろ!」


「なんでそんなことをしたの!?そのせいでアルターは、なんで!」


 なんで、お兄ちゃんが責められているんだろう?悪いのは全部僕なのに。


「俺は一人で森に入るつもりだった、アルターは勝手についてきただけだ」


「お前はアルターのことわかってるだろ!お前が森に行ったらアルターだって着いてくるって!」


「アルターがイーシスから離れるわけないじゃない!」


「お前が迂闊に森に入るなんてしたから、アルターは死んだんじゃないのか!?」


 なんで、お兄ちゃんが責められるの?


「お前はアルターのお兄ちゃんだろ!?なんでアルターを守ってやらなかった!」


「なんでアルターは死んで、イーシスは生きてるの?」


「お前、自分の弟を置いて逃げたのか!?」


「自分の弟を囮にして、見捨てて逃げたのか!?」


 違う、お兄ちゃんは僕を庇ってくれた、お兄ちゃんに僕は助けられたんだ。


 なのになんで村のみんなはお兄ちゃんを責めるの?


「・・・なんで」


「え?」


「なんで俺が責められなきゃならない」


「何言ってんだよ?お前のせいで」


「俺は、俺は何も悪くない」


「悪いだろ!お前が森に行かなければ」


「俺は悪くない!悪いのは全部アルターだ!」


「・・・」


「アルターが勝手について来なければ!アルターがすぐに逃げていれば!アルターが戦っていれば!」


 全部僕が悪いんだ、お兄ちゃんが死んだのは、全部僕が、僕のせいで、僕がいなければ、お兄ちゃんは。


「アルターなんていなければ、死ぬことなんてなかったんだ!」


 バシン!


「見損なったよクソガキィ!!」


 僕の頬をシスターが叩いた。


 シスターはそういうと、協会に帰って行った。


「お前がそんなやつだったなんてな」


「最っ低!」


 村のみんなも僕を残して帰って行った。


 なんで?なんでみんなお兄ちゃんを責めるの?


 憎イダロウ、恨メシイダロウ、何モ知ラナイデ兄ヲ責メル村ノ人タチガ。


 僕が悪いのに、お兄ちゃんは何も悪くないのに。


 滅ボシタイトハ思ワナイカ?オ前ニハ力ガアル、コノ村ノ人間ナラ誰ダッテ殺セルゾ。


 僕が、僕だけが悪いのに、なんで?


 滅セ、人ヲ、村ヲ、世界ヲ!


「ピィ、ピィピィ」


 僕の後ろから青兎の声が聞こえた。

 なんだろう、僕を慰めようとしてくれているのかな?


「ごめんね、ありがとう」


 僕は協会に帰った。


 シスターはいなかった。部屋にいるのか、外に行っているのか。

 顔も見たくないのかな。

 僕はお兄ちゃんと共同の自分の部屋に帰った。


 僕は自分の部屋に入ると、一気に眠気が襲ってきた。

 まだ全然寝足りなかったんだろう。


 僕はそのまま、ベッドに倒れ意識が沈んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ