7話 教室での攻防。意地と意地のぶつかり合い…そこまで大げさな話でもないですね【湊視点】
前話では、少し遊び過ぎたので反省中。
あの後、僕は急いで病院に行き、治療してもらった。所々傷が深く縫ってもらう事に…。
その後帰宅し、何事もなく妹と過ごし、その翌日は近所のショッピングモールで買い物。
妹と一緒に居たからだろう。終始周りの視線を集めていたが、彼女が楽しそうにしていたので問題はなかったのだろう。
明けて月曜日。学校に行った僕は、ここで大変な事に気づく。
手が痛くて、ノートを書くのが…きつい。
昨夜もお風呂に入る時に手間がかかったりと、考えたらこの展開は予想出来たと言ってしまえばそれまでだ。
ノートを貸してもらえる友達は…
もちろん、いない。
その事実が重くのしかかる。
だが、こんな事で落ち込んでいても仕方がないので…僕は重大な決断をする。
『そう、今度の試験は諦めようと…』
とりあえずその件は、横に置いておこう。
何故なら、今はもっと考えなければいけない事があるからだ。
実は、朝からずっと違和感を感じている。
見られている…。
そう、僕は誰かに見られているのだ。
へ?誰かは言わなくとも予想がつく?
そうですか…。まー、ご推察の通りその視線の主は…広瀬さんで間違いないんですけど。
もう少しほら… 『え!? だ、誰だろう!? 』とかのリアクションがあってもいいと思いますよ。
最初はただの勘違いだと思ったけど、3回も目があった。
僕を気遣うというより、何かを探るような感じの視線。
それに気づいてからはもちろん全く見ていない。
臆病者と笑いたければ笑え。
なんと言われようと…僕は絶対に広瀬さんの方を見ない。
授業が終わり、帰る準備をさっさと終わらせ、教室を出ようと席を立つ。
深刻な雰囲気を漂わせ(周りからは眼鏡で表情は見えない)、歩みを進めながら考えるのは今日の晩飯。
あー、疲れたし今日は早く寝よう。
晩飯どうするかな。外食とかしたくないけど、背に腹はかえられない。
作るのは無理そうなので、近所の牛丼屋にでも行くか。いや、やっぱ箸持つのしんどいのでカレーにしよ。
突如現れる僕の進路を邪魔する黒い影…。
その存在に気づき慌てて立ち止まる。
「ねえ、ちょっと!? さっきから話しかけてるのに無視とか酷くない!?」
どうやら広瀬さんから話しかけられていた様だ。
彼女の顔を恐る恐る見ると、不機嫌そうな様子を隠そうともしていない。
無視したせいで怒らせてしまったのだろう。
もちろんワザとじゃないし、僕は彼女に用はない。
それで怒られてもな…とか思ったのはここだけの話。
「ちょっと聞きたいのだけど、この後少し時間ある?話したい事があるから少し付き合ってもらっていいかな?」
まさかの彼女の発言に、教室が色めき立つ。
接触を避ける為に、大人しくしていたのに、僕の努力はどうやら無駄に終わったらしい。
このままという訳にもいかないので渋々答える。
「こ、この後は、よ、よ、用事があるので、ご、ごめんなさい」
そう告げて、僕は足早に彼女の横を通り過…
ぎる展開を、どうやら神様は許してくれないらしい。
僕がわざわざ横にずれたのに、彼女も同じ様にずれて、僕の進む先を完全ブロック。
うわっ…めんどくさっ。ほんとこういう展開は求めてませんから。
本音が喉まで出かけたが、何とか飲み込む。
僕はすかさず、逆サイドからの突破を試みる。
そうはさせじと彼女が再びのブロック。
何このやり取り…。周りの視線集めまくってます。
クラスメイトがほとんどが奇異な視線を向けている中、彼女の親友の花見さんだけがケラケラ笑っている。
何が楽しいのやら…。
これ以上目立つより彼女の要求を飲んだ方が被害は少なそうだ。
「す、少し…少しだけなら」
そう告げた僕を見る彼女の満足そうな顔を、僕はきっとこの先も忘れる事はないだろう。
直感的にそう思った…。
次の話は、杏視点からにしようと考えてます。ころころ視点が変わるのは読みにくいでしょうかね?
私としては、杏視点をたくさん書きたいので、もう少し様子見しようと思います。