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4話 怪我をするよりツライ事って、まあ…ままありますよね【湊視点】

「痛っ」


手のひらを鋭い痛みが襲う。尻餅をついた時に手をついた場所に、割れたガラス瓶が刺さっていた様だ。

どうやら運がなかったらしい。なにも掃除した後に、こんな怪我をするなんて…ついてない自分を恨めばよいのか、それともこの辺りを掃除していた生徒のずさんさを恨めばよいのやら。


怪我をしていない方の手に力を入れて、立ち上がろうとした矢先、思いもよらない声が聞こえてきた。


そう!? もう、遅いじゃない。そんなところでなに尻餅ついて遊んでるのよ…掃除はまだかかりそうなの?」


あ…。神様は、かくも残酷だったのですね。

どうやら僕の最大の不幸は…今まさに始まろうとしていた。

なにもこのタイミングで顔を出さなくてもいいのに…な。

上の空で答えなかった僕に、もう一度問いかけてくる。


「ちょっとそう!? 私の話聞いてるの!? 掃除は終わったの!? 終わってないの!?」


はぁ…手はどんどん痛くなってくるし、この状況のせいでなんだか頭も痛い。

さて、この状況をどう切り抜けよう。

まずはこの声の持ち主こと我が妹様である音羽おとはと対峙する事から始めよう。


僕は素早く立ち上がり、怪我した手をポケットに突っ込む。


「〜〜〜〜〜っ」


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い〜。


いや、大げさではなくほんとに痛いんです。なんですかこの痛みは!? 怪我の状況見てないけど、想像以上にこれなんかヤバイ雰囲気がします。


「ちょっとあんた大丈夫なの!?」


普段見た事がない程に青ざめた顔をした広瀬さんが僕に近づいてくる。

ま、まずい。雰囲気からしておそらく広瀬さんは僕の怪我の状況を見ていたのだろう。

動揺してるのがすぐに見てとれる事からも、嫌な予感しかしない。


「だ、だ、大丈夫です。す、砂に、あ、あ、足を取られて、尻餅をつ、ついただけ…です」


うまく返せただろうか?普段の様にうまく振る舞えたか判断がつかない程度には、僕も動揺している様だ。


「お…音羽おとは。ま…まだ。掃除、ま…まだだから。さ…先に、も…戻ってて。ぼ、僕もす…すぐに…終わったらすぐに、も…戻るから」


なんとかうまく言えたと思う。音羽は怪訝けげんそうな顔をしているが、


「まだ終わってないの!? 私もいい加減待ちくたびれたから、先に戻るのは別に構わないけど…。そのかわり帰りになんかお土産買ってきてよ!! それじゃ、後でね」


内心ガッツポーズをして、そう言いながら踵を返す音羽おとはの背中を見送りながら、ホッとひと息つく…。
















てなればどれだけ良かっただろう…。


無情にも…僕を心配する広瀬さんの耳に心地よい声が響いてきた。


「あんた、右手ひどい怪我なのになにしてんの?ポケットから出してすぐに綺麗に洗わないとでしょ!? 先生にも言って病院で診てもらわないと」


本当に心配してくれてるのだろう。いつもの刺々しい感じではなく、本当に心配してくれている声だ。

この状況で聞いたのでなければ、嬉しかった事だろう。


あ…。まだ全く小さくなってもいない音羽おとはの背中(要するに全く離れていないとも言える)が…止まった。うん、止まったな完全に…。見間違えって事は残念ながらない。


振り向くと同時に言葉が紡がれる。


「ねえ!? そこのあなた…。今なんて仰られました!?」


あ、そこは僕に聞かないんですね。

多分僕に聞きたくないと思う程度に、既に頭にきているんだろうな…。

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