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2話 校外美化活動とか面倒以外の何物でもありません【湊視点】

《この物語の主人公の名前は鷹野湊たかのそう。どうやらこの日は彼の人生を左右する運命の日となる様だが、彼はまだその事に気づいていない》


「そうしたら本日の校外美化運動の当番は鷹野と広瀬に決まりだ。お前ら放課後寄り道なんかせずに、まっすぐ向かえよ。くれぐれも別のクラスの生徒に、なにより吉野先生に迷惑かけるんじゃないぞ」


担任の松永が何か話しているが、全く耳に入ってこない。


今日は、毎週恒例の妹と会う約束の日なのに、参ったな…。

遅刻するって連絡しないとだ。怒らせたら怖いからな、忘れずにやらないと。

しかもなんで、美化活動に参加する女子が広瀬さんなんだよ。


広瀬さんと言えば、クラスで…いや学内で1番か2番目ぐらいに男子から人気のある女子だと聞いた事がある。

髪は肩まで伸びた黒のストレート。日によってポニーテールにしたりツインテールにしたりと色々変えているのだが、そのどれも男子からのウケがいいと聞く。


顔立ちはどちらかと言うと綺麗よりも可愛いと言った感じで顔面偏差値というものが存在するならば、かなり高得点なんだと思う。

だが神は二物を与えずとはよく言ったものであるが、胸元がなんとなく寂しい感じがする。これは個人の好みによるところなので、もしかしたらこれはこれで良いのかもしれない。


僕があれこれ言えた義理ではないけど…と思わず苦笑が漏れる。



「なんで私が…」


自分の世界に浸っていた僕には、そんな広瀬さんの嘆きの声も、当然僕の耳には入ってこない。


松永が教室から出て行ったのを境に、教室が騒がしくなる。

その騒音で、はっと我にかえる。そんな矢先、誰かの会話が耳に届いたのでそちらに目を向ける。


きょうちゃん、ついてなかったね〜」


間延びした声で広瀬さんに近づいていくのは、彼女の親友の花見さんだ。


「まーね。美化運動とか正直面倒。それよりも『アイツ』と一緒とかどんな罰ゲーム?私の日々の行いはそこまで悪かったでしょうか?って神様に聞きたくなるよ」


きょうちゃんもこれに懲りて心を入れ替える様にね♪なんちって〜」


思わず息を飲む。僕をネタに軽口を叩いているのが耳に入り、自然と肩が震える。

もう説明は必要ないと思うが、僕はクラスでとても嫌われている。なぜ嫌われてるかの自覚は当然あるが、だからと言って自分を変えようとも思わない。

『今の僕』を自分では結構気に入ってたりするし、他人ひとからどう思われようと関係ないって、絶対に気にしないって決めたんだ。


でも、僕と参加する事に彼女は不快感がある様なので、ここは一つビシッと言ってやろうと思った。

そんな決意を胸に秘め、席を立つ。目指すは彼女達のいる場所だ。

近くまで行ったところで立ち止まる。あと少しの所で急速に気持ちが揺らいだからだ。

び、び、ビシッと決めてやる。少しだけ揺らいでしまった決意を改めて確認する。


あ…広瀬さんが僕に気づいた。不機嫌さを隠す事なく僕を睨んでくる。

でも、僕はそんな圧力プレッシャーに負けたりなんかしない。

さあ、ビシッと言ってやる!!


「そ、そ、そ、その。も、も、もし良かったらぼ、ぼ、僕1人でやるので、ひ、ひ、広瀬さんは参加しないでも、だ、だ、大丈夫です」


ど、どもった…

いつもの悪い癖が出てしまう。


え、なになに?僕の嫌われる理由が知りたいって?

そりゃ全く気を使ってなさそうに見えるこの容姿と、挙動不審な態度や言動が原因ですよ。

自分で言うのもなんですが、世間的に見て僕はコミュニケーションに若干の不安がある男子の様です。

避けられて当然と言えば当然ですよね。改めて確認するまでもなく、ええ、分かっていますとも。


「流石に理由なく不参加って訳にはいかないでしょ?一応私も行くわよ。でもね?あんた気安く私に話しかけないでくれない?掃除の時間も私には近づかないでね」


不機嫌を隠しもしない声音でそう仰る広瀬さんは…なぜか僕に微笑んでいる。ど、どうやら僕の態度が逆鱗に触れたらしい。

言動と…か、顔が一致してないですよ広瀬さん。こ、怖いですからね今のあなた。


なんでこんな事になったかな…神様は試練を与えるとか聞いた事があるけど、僕に少しぐらい優しくしても損はないだろうに…はぁ…。

《そんなくだらない事を考えて目の前のあんから逃避するそうであった》

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