第一話『足利政知の悲願』
病に伏せた足利政知の見舞いに来た伊勢新九郎。
政知は自分が果たしたかった悲願を新九郎に話す。
新九郎は、堀越御所の入り口にたどり着く。そこには門番が守っていた。
「ややっ!あなたは伊勢新九郎盛時殿ではありませんか!?」
「そうだが。」
「どうかお入りください。殿がお待ちです。」
「わかった。」
新九郎は早速、政知の部屋に向かう。
「おお…来てくれたか、伊勢殿…。」
「政知殿…私を呼び出して何の用だ?」
政知の体は完全に衰えていた。さっきまで元気だった彼がなぜ急に病に倒れたのか、新九郎は疑問に思っていた。
「伊勢殿…もしかしたら余もここまでかもしれない。」
「成氏殿が起こした乱を鎮めたいあまり、将軍様を失脚させようと神経を尖らすからだ。」
無茶をしすぎたから体を壊したと戒める盛時。しかし…
「違う…余が神経を尖らせているのは、跡継ぎの事じゃ。」
「跡継ぎ?」
「余はいつかは将軍になりたかった。しかし、そのためには何かを捨てねばならなかった…尤も、そう薦めたのは富子様と細川殿だ。」
日野富子と管領の一人・細川政元…いずれも幕府においては大きな影響力を持っている人物である。
「詳しく説明してくれ。」
「それは…四年前の事だった…。」
そう言って、政知は四年前の出来事を語る。その時は、最終的にあのような出来事が起きるということは知る由もなかった…。