1/2
序章『伊勢新九郎盛時』
はじめまして、前田杞憂です。
戦国時代の伊豆堀越を舞台とした、堀越公方の家督を巡るお話です。
延徳三年、一人の男が伊豆に向けて疾走していた。
彼の名は伊勢新九郎盛時。かつて今川家の家督騒動を解決した武士であるが、彼が何処で生まれたかは謎に包まれている。
自身の甥である龍王丸が元服して今川氏親を名乗るのを見届けた彼はある日、ある知らせを受ける。堀越公方である足利政知が病に倒れたというのだった。
「成氏殿を牽制したくて神経を尖らせていた事は知っていた。それ故に、自身が日頃から憎んでいた上杉政憲殿を切腹させたと聞く。政知殿…いったい私を呼び出して、何のつもりか…?
馬に乗った盛時は、政知のいる堀越御所へと向かうのだった。
これは…堀越公方の家督を巡って起きた、激動の物語である。