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魔王! 引きこもる!

 ぼくの新しい生活が始まった。

 朝。起きない。キングサイズのベッドで無限に転がり続けて時間が過ぎる。

 昼。お腹が空いた頃合いで食堂へ行くと、それに合わせて召使いがちょっとした料理を作ってくれる。

「なんだか悪いね」

「いえ、勤めですから」

 などと言いつつ、召使いは時々、食卓に突っ伏してガッツリ寝ている事がある。その鳥仮面を剥がしてやろうかと思ったが、封印が解けて伝説の魔物が出てきても困るのでやめておいた。

 遅い朝食を済ませたら、部屋に戻ってパソコンを起動。検索エンジンにはつながるが、SNSの類にはつながらない。どうも、生きた人間が集まるようなコンテンツが規制されているような気がする。仕方がないので「王様 仕事」なんて検索をして個人サイトを見て社会勉強に勤しむ。

 飽きたら昼寝の時間だ。

 目が覚めるといい感じに空腹なので、ディナーの時間になる。たまに四天王の誰かがいるので、

「調子はどうだい」

 とか聞くと、

「順調です! 陛下!」

 とか返ってくる。その他、この世界のことを聞く。色々聞いた結果、魔王ことぼくの治めるこの国は無法者の楽園で、他の国から犯罪者が島流しにされてきたりするらしいことが分かった。魔物モンスターは仲間になるのか? と聞いたら、そんな仲間はおらず皆人間であるらしい。四天王も間違いなく人間らしい。

「そう、人間」

 と言う雷帝に生えた角と牙。本当に人間なのか。

 しかし、そういう事情があるために国を治めるのも一苦労で、だから魔界から強力な指導者を召喚し、王として迎えているというのだ。

「強力な指導者ねえ」

「まあ象徴のようなものです。実際の指導力とは関係なく、魔界より陛下がおいでになったというだけで民は安堵し、団結できるのです。とはいえ歴代の魔王は陛下とは異なり、その名に違わぬ強大な力を駆使したそうですが」

 氷帝はさりげなく失礼だった。

 食後のひとときを楽しんだら、次は入浴タイムだ。この魔王城、なんと地下に大浴場がある。城といえば地下牢でもあるのかと思いきや、王国自体が牢獄のようなものだからこれでいいのか。

 大浴場では召使いがタオルとパジャマを用意してくれている。

「せっかくだから背中を流してくれないか?」

 声を掛けてみると、

「いや、それはちょっと無理です」

 きっぱりと断られた。ぼくも少年愛の趣味は無いので、なんとなく言ってみただけだ。

 そこへ今まさに風呂から上がった全裸の風帝が現れた。こいつの顔面の変形具合はハンパないし、背中の羽根も間違いなく背中から直接生えている。本当に人間なのか。

「陛下! 丁度いいところに! お背中を流しましょうか!」

「いや、それはちょっと無理です」

 そっちの趣味も無い。

 しかしこの大浴場、壁には堂々と富士山らしき絵が描かれているし、まるで突然異世界に迷い込んだような気分になる。実際迷い込んでいるのだけど。

「この大浴場は何代か前の魔王が作らせたそうですよ! 世界中から美女をさらってきてハベらせてたとか! ウヒョー! 憧れますねえ」

 風帝が聞きもしないのに教えてくれた。そうか、ぼくは魔王だからその手があったのか。

「でもそんなことやってたから勇者に城ごとブッ壊されて殺されたんですけどね! 先代も、先々代も、その前も!」

 やっぱりやめておこう。

 そうして湯船でちょっと泳いでみたりして優雅なバスタイムが終了する。風呂上がりに着るパジャマは、翌日の入浴タイムまで着続ける事になる。

 そんな感じで一日が過ぎていく。最高の毎日だ。いや本当にそうか?

 何かが足りない気がする。やはり美女が必要だろうか。それに先代の魔王達の所行にも興味が湧いてきた。城を探せばヒントが見つかるだろうか。

 明日は何か、新しいことを始めてみよう!

 しかし昨日もそう思ったな、と考えながら、ぼくはキングサイズのベッドで眠りにつくのだった。

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