表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死んだ話

彼らが死んだ話

作者: 浅木翠仙

これは「死んだ話」の最後の話になります。

これを読んでも内容は一切理解できません。

というわけで、まだ読んでいない方は「僕が死んだ話」へゴーです。それを読んだら「俺達が死んだ話」へゴー。最後にここに戻ってきてください。

変な投稿の仕方ですみません……。


(12/14 23:04追記 最後の部分を変更しました)

「ようやくお目覚めかい、先輩?」


天国で二人の男が向かい合っていた。

片方は状況が分かってないらしく、目をぱちくりしている。


「先輩って……、どういうことですか、先輩?」

「ただの皮肉だよ後輩くん」


天国で知る事実。

自分の死のこと……。


「ちょっとお寝坊さんは良くないと思うよ、後輩……いや、天国に来た順番で言えば、"先輩"?」


時間はいっばいある。

ゆっくり話すのだ。


「俺は全部"見ていた"」


      #     #


「まず君は事故の後、一年も眠っていた」

「そんなはずはない。僕が眠っていたのは1日だけだ」


即座に否定する。

記憶の混濁も相まって、彼は自分は間違えていないと信じきっているのだろう。


「訊くぞ。

大雨がやんだのはいつだ?」

「退院と同じ日、目覚めてから1週間経った火曜日です」

「雨はどれくらい続いていたと聞いた?」

「一週間ちょっと……」

「つまり目覚めた当日は?」

「晴れ」

「晴れ?」

「……」


退院する1週間ちょっと前から雨が降っていたとすれば、事故に遭った日の天気はもちろん雨の筈だ。


「職場で見慣れない人がいただろう?」

「……はい」

「逆にいた筈なのにいなくなってる人もいただろう?」

「……」

「君が寝ていた間に人事異動があったからだ」

「……」


もはや言い返す気力もないのか、一方的な会話になっている。

その落ち込みようはさすがに可哀想になるほどだった。


「お前が死んだのは金曜日だ」

「っ!?」


ここで彼が伏せていた顔をあげる。

驚きに目が見開かれている。


「僕が死んだのは、火曜日だ」

「いや、お前は金曜日に死んでいた。

―――()


彼は植木鉢を間一髪で避けたあと、歩道に突っ込んできた軽自動車を避けきれずに死んでしまった。

そう、その後の事はすべて幽体離脱、否、幽霊だったのだ。


「土曜日に、散歩に出ただろう?

足は痛くなかったのかな?」

「べ、別に痛くなかったですけど……」

「おかしいな、金曜日に足を怪我していたと思ったんだが。しかも1日で治ってしまうほど軽いものでもなかったはずだ」

「そ、それは……」


彼は困惑していた。

自分でもなぜそうなのかが分からないのだろう。

なぜ1日で傷が気にならなくなったのか。


「それは霊体だっからだ。

幽霊なら痛みを感じることもない」


知っている人から見れば当たり前だ。

彼は幽霊だった。だから傷も痛くない。


「それでも僕は、先輩の葬式に出た。間違いない!」

「じゃあ俺が死んだのは?」

「日曜日に交通事故で」

「葬式は?」

「月曜日」

「俺の死因は誰に聞いた?」

「葬式に来てた同級生が……」

「直接聞いたのか?」

「いえ……歩いていたら小耳にはさんで……」

「じゃあそれはきっと、お前の死因だ」

「……」


返答が強気なのか弱気なのかよくわからない感じに起伏し、最後には沈黙となっていた。

もはや説教中の教師と生徒のような状態で話が続けられる。


「じゃあ教えてやる。

その葬式は俺のじゃない」


一息吐いて、


「その葬式は、()()だ」


驚愕の表情で固まる彼に続ける。


「考えろ。

日曜日に死んで、月曜日に何かあるとすれば、それは葬式じゃない。

通夜だ」

「…………」

「お前は病院でも天国でも、交通事故のあとに長い時間眠っていたんだ」


彼はもう完全に理解しただろう。

自分が間違っていたことを。

そして、()正しいということを。

これから彼らはどうするのだろうか。

ここは天国、楽園だ。

死ぬ前の事を忘れ、幸せな天国ライフを過ごすのだろうか。


「ふーんふん、ふーん……♪」


話をする二人の様子を眺める存在が1つあった。


「呆気なく死んで、呆気なく終わっちゃったなぁ……」


ぼんやりと呟く彼に、一人の女が近づく。


「何を見ているの?」

「暇だから遊んでた」

「目を付けられるようなことはしないでよね」

「はいはい」


たしなめる女に適当に返事する男。

同年代の二人にしか見えないというのに、ヤンチャな子供とそれを叱る母や、悪ガキの弟とその面倒を見る姉、出来の悪い兄と優秀な妹であったり、仲の良い夫婦や恋人のようにも見える。


そんな不思議な雰囲気の二人だった。


「本当に反省してるの?」

「ああ、これからは一般人の人生を弄ったりは決してしない。君のその胸に誓おう」

「……はぁ」


男のセクハラを無視した女は、

(つまりそれ以外はやるのか……)

と、頭を抱えた。

これで一応完結ですが、何らかの原因により続きを書く可能性があります。彼らのその後とか。

その場合短編になるか連載になるかは分かりませんが、その時もまた見切り発車になる自信があります。

本当はみなさんに「続きを書いて!」と言ってもらえるような作品にしたかったのですが、最後の無理矢理な展開的にダメそうですね……(笑)

これからも精進していきますので、応援してもらえると嬉しいです。


(12/14 23:04追記 最後の部分を変更しました。前よりはマシになった……って言ってもらえると良いなぁと思っております)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ