彼らが死んだ話
これは「死んだ話」の最後の話になります。
これを読んでも内容は一切理解できません。
というわけで、まだ読んでいない方は「僕が死んだ話」へゴーです。それを読んだら「俺達が死んだ話」へゴー。最後にここに戻ってきてください。
変な投稿の仕方ですみません……。
(12/14 23:04追記 最後の部分を変更しました)
「ようやくお目覚めかい、先輩?」
天国で二人の男が向かい合っていた。
片方は状況が分かってないらしく、目をぱちくりしている。
「先輩って……、どういうことですか、先輩?」
「ただの皮肉だよ後輩くん」
天国で知る事実。
自分の死のこと……。
「ちょっとお寝坊さんは良くないと思うよ、後輩……いや、天国に来た順番で言えば、"先輩"?」
時間はいっばいある。
ゆっくり話すのだ。
「俺は全部"見ていた"」
# #
「まず君は事故の後、一年も眠っていた」
「そんなはずはない。僕が眠っていたのは1日だけだ」
即座に否定する。
記憶の混濁も相まって、彼は自分は間違えていないと信じきっているのだろう。
「訊くぞ。
大雨がやんだのはいつだ?」
「退院と同じ日、目覚めてから1週間経った火曜日です」
「雨はどれくらい続いていたと聞いた?」
「一週間ちょっと……」
「つまり目覚めた当日は?」
「晴れ」
「晴れ?」
「……」
退院する1週間ちょっと前から雨が降っていたとすれば、事故に遭った日の天気はもちろん雨の筈だ。
「職場で見慣れない人がいただろう?」
「……はい」
「逆にいた筈なのにいなくなってる人もいただろう?」
「……」
「君が寝ていた間に人事異動があったからだ」
「……」
もはや言い返す気力もないのか、一方的な会話になっている。
その落ち込みようはさすがに可哀想になるほどだった。
「お前が死んだのは金曜日だ」
「っ!?」
ここで彼が伏せていた顔をあげる。
驚きに目が見開かれている。
「僕が死んだのは、火曜日だ」
「いや、お前は金曜日に死んでいた。
―――交通事故で」
彼は植木鉢を間一髪で避けたあと、歩道に突っ込んできた軽自動車を避けきれずに死んでしまった。
そう、その後の事はすべて幽体離脱、否、幽霊だったのだ。
「土曜日に、散歩に出ただろう?
足は痛くなかったのかな?」
「べ、別に痛くなかったですけど……」
「おかしいな、金曜日に足を怪我していたと思ったんだが。しかも1日で治ってしまうほど軽いものでもなかったはずだ」
「そ、それは……」
彼は困惑していた。
自分でもなぜそうなのかが分からないのだろう。
なぜ1日で傷が気にならなくなったのか。
「それは霊体だっからだ。
幽霊なら痛みを感じることもない」
知っている人から見れば当たり前だ。
彼は幽霊だった。だから傷も痛くない。
「それでも僕は、先輩の葬式に出た。間違いない!」
「じゃあ俺が死んだのは?」
「日曜日に交通事故で」
「葬式は?」
「月曜日」
「俺の死因は誰に聞いた?」
「葬式に来てた同級生が……」
「直接聞いたのか?」
「いえ……歩いていたら小耳にはさんで……」
「じゃあそれはきっと、お前の死因だ」
「……」
返答が強気なのか弱気なのかよくわからない感じに起伏し、最後には沈黙となっていた。
もはや説教中の教師と生徒のような状態で話が続けられる。
「じゃあ教えてやる。
その葬式は俺のじゃない」
一息吐いて、
「その葬式は、お前のだ」
驚愕の表情で固まる彼に続ける。
「考えろ。
日曜日に死んで、月曜日に何かあるとすれば、それは葬式じゃない。
通夜だ」
「…………」
「お前は病院でも天国でも、交通事故のあとに長い時間眠っていたんだ」
彼はもう完全に理解しただろう。
自分が間違っていたことを。
そして、彼が正しいということを。
これから彼らはどうするのだろうか。
ここは天国、楽園だ。
死ぬ前の事を忘れ、幸せな天国ライフを過ごすのだろうか。
「ふーんふん、ふーん……♪」
話をする二人の様子を眺める存在が1つあった。
「呆気なく死んで、呆気なく終わっちゃったなぁ……」
ぼんやりと呟く彼に、一人の女が近づく。
「何を見ているの?」
「暇だから遊んでた」
「目を付けられるようなことはしないでよね」
「はいはい」
たしなめる女に適当に返事する男。
同年代の二人にしか見えないというのに、ヤンチャな子供とそれを叱る母や、悪ガキの弟とその面倒を見る姉、出来の悪い兄と優秀な妹であったり、仲の良い夫婦や恋人のようにも見える。
そんな不思議な雰囲気の二人だった。
「本当に反省してるの?」
「ああ、これからは一般人の人生を弄ったりは決してしない。君のその胸に誓おう」
「……はぁ」
男のセクハラを無視した女は、
(つまりそれ以外はやるのか……)
と、頭を抱えた。
これで一応完結ですが、何らかの原因により続きを書く可能性があります。彼らのその後とか。
その場合短編になるか連載になるかは分かりませんが、その時もまた見切り発車になる自信があります。
本当はみなさんに「続きを書いて!」と言ってもらえるような作品にしたかったのですが、最後の無理矢理な展開的にダメそうですね……(笑)
これからも精進していきますので、応援してもらえると嬉しいです。
(12/14 23:04追記 最後の部分を変更しました。前よりはマシになった……って言ってもらえると良いなぁと思っております)