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鬱な少年は暴力少女と別れる

 ダメだ。

 もうダメだ。

 ダメだダメだ。

 何もかもダメだ。

 もうマジでダメだ。

 ダメだダメだダメだ。

 謝るとか無理だーーー!


「………………」


 落ち着け。落ち着くんだ。

 そうだ、落ち着くためのとっておきの方法があった。ラノベを読もう。って、それは現実逃避だった。

 というか睨んでるよめっちゃ睨んでるよ勘弁してくれよ。

 昨日のは悪かったけどお前にだって非はあっただろう……と思うには思うんですよまあちょっとぐらいはいや豆粒ぐらいにはそっちにもまあ多分ですけど責任が無くはないかなーと思ったり思わなかったろするんですけどどうですかね。

 そもそも人との会話は得意じゃないんだ。

 謝ると決意してもなるべく二人きりになれないと切り出すもんも切り出せな

 ガタン。


「ひっ!?」


「……ちょっと来なさい」


「……はい」


 逆らったら殺される。

 というか、なんか凄い威圧感が漏れてる。

 こいつ、修行すれば覇◯色の覇気でも使えるんじゃないんだろうか。

 ……まあ、二人きりのチャンスが生まれたと思えば痛くも痒くも……はぁ。


<loading>


 移動した先はいつものように空き教室だった。

 とにかくすぐに謝ろうと、僕は土下座体勢に入るが、まるでそれを制するかのように炎火が喋り出す。


「昨日は悪かったわ」


 ……は?

 こいつは今何て言った?


「無理に誘って悪かった、と言ってんの。ちょっと強引だったわ」


 ちょっとじゃないです。

 もしこの状況でこう言えた奴はきっと勇者の器を持っていることだろう。


「私はあんたみたいな、なよなよしたのが嫌いなの。なんかろくに生きてないくせに達観したというか、諦めてるというか、そんな感じの奴が嫌い」


 炎火の言葉は実に僕のことを表していた。

 そして、明確に伝えられる“嫌い”の二文字。

 何故だろう。ほんの少したげ、ささくれにも引っかかったような感覚だ。

 むずむずする。

 だが、その正体はわからない。


「だから、あんたにも私の理想を押し付けようとしたのかもね。もうあんたには関わらないようにする」


「あ、おい……」


 言うだけ言って炎火は去ってしまった。

 俺の呼び止めにも応じずに。


「……何なんだよ」


 勝手すぎる。

 同時に、望んだ状況になったとも喜べる。


「……すっきりしない」


 昨日まではあんなに望んでいた別れが、ここまで落ち着かないものになるなんて思いもしなかった。


「……毒されたかな」


 あいつとの思い出は、最初から最後まで最悪だった。

 俺が見捨て、炎火が絡んで、俺が逃げて、炎火から別れた。

 今にして思えば、たった二日間の出来事だ。

 なんと密度のある二日間だろう。

 そして、


「勝手に終わらせるなよ、くそっ」


 また、苦い思いだけが胸に残る。

 僕はもしかしたら呪われてるのかもしれないな。

 人と別れる時は絶対後味が悪くなる呪い。


「……バカらし」


 いつもの日常に戻った。

 それでいいじゃないか。

 僕が望んだ日常だ。

 そして今日も、僕は僕を騙す。


<loading>


 教室に戻ると炎火はいない。

 ドアを開ける時、一瞬だけ視線が僕に集中するがすぐに戻る。

 ……あー、怖い。

 席に戻り、ラノベを開く。

 心を閉ざす。何時ものように。

 そして、集中しようとした。

 ……が、出来なかった。

 クラス内でヒソヒソと話されている噂。

 それが僕の耳に入る。


「知ってるか。緋色 炎火って中学時代は名の知れた不良なんだってよ」「知ってる。“盛る女番長”とか呼ばれてたらしいぜ」「えー、なんか厨二くさーい」「いやいや、だけど本気でいろんな噂があるんだって。一夜で大規模不良グループを解体させたとか」「あー知ってる。たしか大学生相手のボクシングやってる人を一発KOしたとか」「俺はかめ◯め波が撃てるって」「私は螺◯丸が使えるって」「ジャンプだけじゃねえか」「口から雷の竜出すとも聞いたぜ」「王様にでもなるのか?」「というか全部嘘でしょ」


 ……何ともいろんば伝説を持っているようで。

 あれだけあるなら、ある程度は本当にあったかもな。不良グループを解体ってあいつは何者だよ。

 でも、不思議だ。

 あいつらが言うと、まるで炎火をネタに笑ってるように、怖い怖いと言いながらも利用してるように、聞こえてしまう。

 何故なら、あいつらは誰一人怖がっていない。

 全員が笑っている。笑顔でいる。仲間内で、楽しそうに。

 それを見て、言い知れぬ怒りが湧いた。


「……え?」


 何で、こんな事で僕が怒らなきゃならない。

 もう僕とあいつは関係ないのに。

 どうし

 ガララ。

 俺の思考に挟まるように、ドアが開く。

 同時に、噂も止んだ。


「……何よ」


 そのドスを効かせた声音に、誰もがすぐに会話に戻る。

 もちろん、噂話ではない。

 炎火は俺の後ろの席、自分の席に座る。

 ……でも、これで炎火があの日、殴られてた理由はだいたいわかったな。

 中学時代、そんなに荒れてるなら恨みもいろいろ買ってるだろう。

 見当違いかもしれないけど、調べてみる価値は……まただ。

 何で僕は炎火の事で悩んでるんだ。もう関係無いだろうに。

 僕はラノベの内容に集中し、すぐに外の世界との繋がりを


「神滅のカミナ! 登場だ!!」


 何故あいつは窓から入ってきてるのだろう。というか一年教室は三階だぞ。そしてその眼帯とマントと背中に吊ってる大剣はなんだ!!


「と〜う〜ど〜う〜」


「むっ、この波動は前世からの仇敵! “終焉の魔女、マージョリー”か!?」


「ふざけた格好で教師に変なあだ名を付けた挙句仇敵扱いか。いいだろう気に入った。今すぐ生徒指導室だ」


「むっ、離せ! これは聖装だ! 魔を打ち払うのに必要な、おい、離せ!!」


 ……僕はこの一年間でどれだけスルースキルを上げれるか。もしかしたらマスタリー出来るかもしれない。

“嘘”次回予告

炎火「私はついに宇宙に飛びだったわ!」

剣「せめて話を繋げてくれ」

炎火「地球はすでに私の手中に収めたから今度は宇宙を支配する番よ!」

剣「無視ですかそうですか。というかお前の支配下とか終わったな地球」

炎火「次回【銀河美少女・炎火】お前のものは私のもの。つまり宇宙は私のものよ!」

剣「お前痛々しいの自覚してるか?」

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