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鬱な少年は再び心を閉ざす

 放課後。

 強制収集させられた僕は先ほどのひと気の無い教室に来ていた。

 正直、長時間も炎火と一緒にいるのは嫌だから、さっさと本題に入る。


「で、活動って何をするんだ」


「部を作るのよ」


「……は?」


 部活? 作る? どうやって?


「部活名は管理部。問題児を管理、更生させるための部活よ」


「待て待て。部活を作るには五人以上の部員を集めて顧問を見つけ部の作成表に全員がサインした上で生徒会に届けてOKを出されて最後に校長のサインを貰ってようやく認められるんだぞ。部員も集まらないし顧問もいない。そもそも、問題児の管理って事は問題児が部員って事だろ? 逆説的に言えば入れば問題児と認めるような部に、いったい誰が入るんだ」


 前提条件が厳し過ぎる。

 というか、そんなもの作ったら僕の放課後が大量に削られてしまうじゃないか!


「そうね〜。問題児を集めましょうか」


「だから、その問題児が集まらないんだろうが!」


「何でよ」


「お前、僕の話聞いてたか? もし自分に「あなたは問題児だから問題児を管理、更生する我が部にどうか入ってください」と言われて入るか?」


「入るわけないじゃない」


「だったら他の生徒も入るわけないだろう」


「刃山。あんたバカなの? そんなどストレートに言うわけないでしょ」


 なぜ僕はこんなところでバカにされなければならないのだ。

 そもそも、どうして僕はこんなバカ女と行動するんだ?

 イライラする。ストレスが溜まる。こんな奴といても百害あって一利無し。


「上手く誤魔化すわよそこは。そうね。問題児じゃなくて優秀な生徒を集めてる事にするのはどうよ」


 時間の無駄だ。

 そもそも、人を更生させる奴がこんなバカなんてあり得ない。

 嘘をつくにしてももっとマシな嘘はないのか。


「あ、じゃああんたの意見も聞かせてよ。こういうの得意そうだし」


 それは暗に僕が人を日常的に騙してるように見えるということか?

 そもそも、炎火自身が一番の問題児ではないか。

 それを、更生などと言って一人上から物を言うようにして……。

 ふざけるな。


「……勝手に考えてろよ」


「えー。いいじゃない。あんたの考えも聞かせてよ」


「知るか」


 僕は本を取り出し、一人だけの世界に潜り込む。

 静かで深い、誰も入ってこれない。それでいて本の中には壮大な、ワクワクするような物語が広がっている。

 現実から逃げるための、僕だけの世界……


「没収〜」


「ああああああーーーーーーーーーーー!!!」


 崩壊。


「何をするんだよ!!」


「あんたが活動中に自分の世界にひきこもりからよ!」


「だったらもう少し実りのある内容にしろよ!」


「あんたがそういう態度だからでしょうが!」


「ああそうかい。悪かったね。僕は更生されるべき問題児だからこの態度はしょうがないんだよ」


「だったら少しは改めなさいよ!」


「無理だね。そもそも、僕は今の自分をどうにかしようなんて思わない。この態度を問題児だと言うのなら、僕は問題児でいい」


「……あんた」


 炎火は僕を怒りの目で見たと思ったら、拳を振り上げてくる。

 ほら。何が暴力は良くないだ。

 力あるものは、それを振るわずにはいられない。

 まあ、こんなすぐに綻びが出るとは思わなかったけど、こいつが僕を殴れば、それを理由に辞められる。

 良かったじゃないか。

 とても自然で、最高で最悪な終わりだ。

 久しぶりに家族以外との人間と喋れて、上辺だけでも良かったということにしておこう。

 僕は目を閉じ、衝撃に備えた。

 ガスッ、という衝撃音が鳴る。


「…………?」


 しかし、僕の体はどこも痛くない。

 どういうことだ?

 恐る恐る目を開く。


「っつー」


「な、何をやって……」


「ん? あんたを殴ろうとしたから変わりに自分を殴ったのよ」


「な、何で!」


「言ったでしょ。暴力は良くないって。だから、戒めっていうか、普段からそういう癖を無くすために暴力は全部自分にするようにしてんのよ」


 バカだ。真性のバカだ。

 普通、カッとなったら、いちいちそんなことをする思考なんてないはずだ。

 だったら、反射的な行動だ。

 でも、それって簡単に出来る事なのか?

 そんなわけがない。

 普通は相手を殴ってから気付くんだ。相手を殴る前に熱くなった思考回路で反射的に対象を自分に移すなんて、真性のバカにしか出来ない。

 ……じゃあ、こいつの言ったことは本当、なのか?


「っ!」


 信じるな。

 信頼はそんな安くない。

 人をカンタンに信じたら、その分が全部自分に返ってくる。

 仇になって返ってくる。


「自分のための暴力は、いずれ自分に返るってお母さんが……て、ちょっと。まだ話は終わってないわよ!」


「もういい。終わった。帰る」


 僕はあいつに捕まる前に教室を出た。

“嘘”次回予告

剣「………………」(ぼろっ)

炎火「心を開かない孤高の生徒、刃山。しかし、めげずに何度も話しかける女子生徒は言わずと知れた私、緋色 炎火。私の闘魂注入パンチが閉じこもっていた刃山の心に届く!

次回【私のこの手が真っ赤に燃える!】

見なきゃ月の果てまでぶっ飛ばすわよ!」

剣「犯人は炎ン………」

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