詩姫 リュイ・セレスティア
「あ~もうっ!この服いや!」と真夏なのに、暖かそうな足まで届く深い青色のコートをフードまでかぶりボタンも留めている少女が鈴のような声で叫んだ。そして、肩にのっている黒猫に
「暑い。フード脱いでいいかなぁ。どう思う。」と尋ねた。
「ふにゃ。僕はリュイの綺麗な海みたいに深く濃い蒼の髪の色が好きだし僕と同じまではいかなくても
かわいい猫耳が、見れるほうがいいにゃあ。でも、シィナ様に殺されるにゃ。はずしたら。にゃ~。」
と肩にのっている黒猫が答えた。
「うぅ。シィナ様は怖い。やめておこ。でも、真夏に、手袋にブーツ、顔を隠すためのヴェールって暑い!熱中症で倒れるよぉ。」
「そのセリフ。買い物に行かされてからもう10度目にゃあ。もう聖域もみえてるし我慢するにゃ。」
「うん。わかってるよ。アルト。でもね。暑いものは暑いんだ。」
とふらふらと歩く少女。
「あっ!!」
「何?大きな声で」
「いいから前見るにゃって!あの子、危ないにゃ!」
50メートルぐらいさきの道路に座り込み転んだのか泣いている幼女。
車が幼女の10メートル前まで迫っている。
「仮想強化第1章 風姫の祈り 空の果てに祈る者」
少女がポツンと呟き走り出す。速い。
風を切る音の中に
ときより
「祈りは弱く、儚いけれど。それでも、私は」
などという場違いな詩が聞こえる