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21 砂時計の寿命※



ラミア店長は蛇だった下半身を人間の足に変化させ美人さんの背中に跨る。

私もそれに続くように乗ると、美人さんは二階の窓を突き破った。

店長が私の後ろで「窓ガラスが!」と悲痛な叫び声を上げた。


「あの…私の給料から引いといてください…」


慰めになるかどうか微妙な言葉をかけると、店長に頭をはたかれた。


「ガキが妙な気使うんじゃないの。可愛げのない」


ぬぅあ店長良い人!いや人ではないのだけれど良い人!

だから迷惑かけたくなかったのですよ。

羊さんから教えて頂いたとろけるゾンビさんの滞在場所を店長にナビゲートして貰いながら

先へ進む。

数十分ほどして目的の場所が見えてきた。

小さな家が木に囲まれ、というより巻きつかれたような状態の建物の前に美人さんが

ゆっくりと着地する。

店長と私が美人さんの背中から降りると、美人さんはまたいつものヴィジュアル系バンド姿に

戻った。


「なにか用か」


出入り口の前に立っていた、おそらく見張り役であろう魔物さんが訝しげに声を掛けてきた。

トカゲが二足歩行で鎧を着たその魔物さんは前にサソリさんとやったゲームに出てきた

リザードマンとかいうモンスターによく似ている。

店長が営業スマイルでそのトカゲさんを向かえ打つ。


「突然お邪魔して申し訳ございません。ソレルス様はご在宅でしょうか。

 つい最近仕入れた人間の奴隷に興味を惹かれまして、宜しければ拝見させて頂けないかと」

「駄目だな。帰れ」


間髪入れず断られ、店長の表情が険しくなる。


「今来ている客が相当積んだみたいでな。もう買い手は探してない」


おいどうすんだ、と美人さんが私に声を掛ける。

気を抜くと緊張で内臓が口からはみ出そうになっている私は眉根を手で押さえた。

どうしますかねこれ。突撃しちゃいましょうか。

物騒な考えが過ぎった辺りで店長が私の頭を軽く叩いた。


「私達もそちらの言い値で買い取ります。交渉の余地くらいはあると思いません?」

「……面倒な」

「そこを何とか。あなたにも損はさせませんので」

「具体的にはどんな風に?」

「ご希望があればお応え致しますが」

「…お前ら女だろ。女なら女らしい武器を使えよ」


店長の言葉に言質取ったりとばかりにトカゲさんがにやりと笑う。

しかし店長も何故かにやりと笑って返した。

相手の顔を掴みぶちゅっと音がしそうな勢いでラミア店長がトカゲさんに口付ける。

見ているこっちが赤面しそうな濃厚なやつである。


「何してんだあれ、お前の上司」


呆れたような美人さんの声を他所に店長はでぃーぷな口付けを大体5分くらい続けた。

口を放した後、舌なめずりしながら艶やかに店長は微笑んだ。


「前金てことでいかがです」

「……は…」

「あ、足りない?岸本こっちおいで!」

「うぃす!」

「前金追加!」

「かしこまり!第二波・岸本行きます!!」

「いやお前らなんか色々間違ってう、ぶ?!」


トカゲさんの頬を両手で挟み込み、有無を言わさずぶちゅりとやる。

相手の口が大きいので傍から見たら私が食べられている図になっているだろうか。

鋭い牙を舌でなぞり、相手の舌先を吸うとトカゲさんの身体が少し跳ねた。

手を頬から首へ移動させ緩慢な動きで後ろ側を撫でる。

「キモ…吐きそ……」と美人さんが後ろで呟いたのを合図に口を放す。


「どんなでしょーか!」

「…いや、どんなも何も……」


ぬぅ、まだご不満と!

しかし時間が無い。完全に木戸さんが買い取られる前に阻止しないと。

トカゲさんから3歩ほど後ろに下がり深々と頭を下げる。


「お願いします通して下さい!このお礼は後日必ずしますんで!」

「……いや…」


まだ渋るとは!トカゲさんたら食いしんぼ!(?)


「銀のナイフで一生消えない傷付けられたくなかったら是非お願いします!」

「怖い!なん、お前それ、頼む側の姿勢としては限りなく不正解だろ!?」

「もぉう、こんなに頭下げてるのに他にどうしろと仰るんですか」

「頭は下がってても態度が下がってねぇんだよ!!なんなのこいつ!!」


違くて、そうじゃなくてともごもごトガゲさんが言いづらそうにゴニョる。


「……お前ら、も一回……」


囁くような声が、トカゲさんと共にブチッと潰される。

ラミア店長が反射的に庇ってくれたがトカゲさんを潰したその尻尾に見覚えが有り私は

内心でぐぇぇと叫んだ。

ぞろりと動く長くて赤い胴体と沢山の足。

大きな赤目が鏡のように私たちを映していて居心地が悪い。


「俺は待っていろと言ったはずだが」


低く地を這うような声。

純度100%で不機嫌そうなムカデさんが直視できなくて店長の背中に顔を隠す。

…トカゲさんは無事だろうか。


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