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01 白黒のモラル


やっと日本人が手に入った。

そう呟く女性の下半身は蛇のそれで、うねうねと私の座っている椅子のまわりを囲む。

繊細な手つきで髪を梳く彼女が言うには、私はここに拾われ、そのおかげで外を

縦横無尽に歩きまわっている魔物達にオモチャにされず済んだのだと言う。

薄暗い部屋を見渡すと壁に鹿の剥製や、毒々しい色の壷、格子をはめた窓などが目についた。

ここは彼女の部屋だろうか。


「名前はなに?」

「あ、岸本きしもと 美紀みきです」

「そう」


ひとしきり髪を梳いたかと思うと、

今度は肌に丁度いいくらいに温められたタオルで顔を拭かれた。


「お客様には下の名前は教えちゃ駄目よ。私が良いと言うまではね」

「ぐふっ。秘密ですね?了解でぃす」


紫色の目がこちらを見据える。赤い髪とよく溶け合っていて不気味な綺麗さをかもし出していた。

あんた軽いわねーと呆れた声が返ってくる。





__この人との出会いは数時間前。

私は友達の誕生日プレゼント用に四葉のクローバーを捜し求めながら近所にある

神社の裏の林を駆けずり回っていた。目標はみかん箱(L玉)一杯分だ。

たまに見かける殿様バッタを数匹、天道虫を少々。とどめにアリさんもちょっと入れて置いた。

「共食いするなよー」とみかん箱の中に広がるクローバー王国に話しかける。


気付くと手元が暗くて見え辛くなっていた。

どうやら夢中になりすぎて日が落ちてしまったようだ。

よっこいしょういち~~と勢いよく立ち上がって、長時間酷使した腰をぽんぽん拳で叩いた。

さて帰ろうかと視線を上げると、なんだかいつもと林の雰囲気が違う。

枯れ木みたいなのがぽつぽつと間隔を空けて並んでいる他は、周りになにもない。何故だろう。

空なんて「俺毒もってるぜ」的な見事な濃い紫色色だ。

しかし荒野のようなこの場所は日本ではなかなかレアなのでは?

記念に土を集めとこう。これも大好きな友達のためだ。


「こんばんわお嬢さん」


そんな中誰かが気持ちよく挨拶してきた。


「こんばんわ~…あ、いや、おばんです~」

「…え?なんで今言い直した?」


土をダンボールに詰め込みながら振り返らず挨拶を返す。

しかし初対面なのになかなか良いツッコミをくれた。

この人いいひとだ。四葉のクローバーを進呈しよう。や、こっちの殿様バッタの方がいいかなぁ。

大きいし。


「……お嬢さんさ、僕になにか言う事ないのかな?」

「ん?バッタよりアリさんのが良かった?」

「なんの話?!!」

「待っててね~うちは可愛い子揃ってるよ~」

「…ねぇ頼むよ。僕と会話して」


みかん箱王国を物色してるとぽん、と後ろの方からツッコミさんに肩を叩かれる。

その手を見ると、ぶどうのような紫色をしていて爪が異様に鋭く尖っていた。

しかしその手の持ち主の姿はもっと異様だった。髪の毛がなく全身紫色で翼が生えている。

目は額とそのすぐ下に縦並びででかでかと顔についており、口が耳のあたりまで裂けていた。

トカゲのようないい感じの尻尾までついている。


「ぎゃああああああ!!」


思わず叫び声を上げると「お、そうそうこれこれ」と嬉しそうにツッコミさんは笑った。

ポケットから素早く携帯を取り出し画面を見ると真っ暗になっていた。電池切れだ。

ああどうしよう。


「せっかくバ○キンマンに会えたのに!」

げぇえぇえええ!!」

「あなたバ○キンマン、バ○キンマンていうのね?!」

「色々ネタ混じってません!??」

「バルス!!」

「お前もう黙れやぁぁああああ!!!」


がっと口をツッコミさんに勢いよく塞がれる。

その瞬間、肌にチリチリした熱さを感じた。

…誰か私たちの至近距離でサンマでも焼いているのだろうか?と考えていたらツッコミさんが

突然炎上しだした。絶叫しながら辺りを転げ回るツッコミさん。

近場に水が無かったので私は咄嗟に周りの土を掬ってかけ、消火を試みた。

炎の勢いは弱くなったが土が目に入ったらしく、今度は「目が、目があぁああ!」と

悶絶し始めた。あ、ごめんと小さく謝る。




「怪我は無い?かわいいお譲ちゃん」



色気のある声に振り返ると、上半身が人間の女性で下半身が蛇のような彼女がそこに居た。

これがラミア店長との出会いだった。


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