壁の男
ある日突然、壁になってしまった。
そう、壁だ。ごく一般の家庭にあるであろうあの壁。
ごく一般じゃない家にはないみたいな言い草だがまぁそこはいいだろう。
そんなことより。そんなことよりだ。
さっきからずっと動けないのだ。
喉も乾いてきたし腹も減った。そして身動きが取れない。
困った。喋ろうとしても壁なので喋れもしない。
どうしたものか。…いや、待てよ。
おかしい。おかしいぞ。
どうして壁なのに腹が減る?どうして壁なのに喉が渇く?
どうして…意識がある?
何かが変だ。もし仮に今、わっしょいピーポーなどと発言しようとしてみるとしよう。
発言はできないのに、なぜかそれを考える思考回路だけはあるのだ。
世間一般的な壁はそんなことできないはず。
そういえば、壁になる前の記憶が全くない。俺は何をしていたんだ?
俺の名前は?年齢は?家族構成は?職業は?
変だ…全てが抜け落ちてしまっている…
…ん?何か、音がする。これは…金属音?
…壁だ。壁を掘っている!
どうなるんだこれ!?ここに達してしまったら一体、俺の体はどうなってしまうんだ!?
おいおいおいおいマズイどんどん近づいてきて
カンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ふう〜!壁を掘るのは気持ちいいぜ!!」
「そうだな兄弟!」
「ん?なんだこりゃ…骨…か?おもしれー形してるなぁ」
「どうしたんだ兄弟!…ん?あぁ、そりゃニンゲンの骨だな!」
「ニンゲン!?ニンゲンってあの太古に存在したあの…!?」
「あぁ、しかもこりゃ頭蓋骨だ!高く売れるぜ!」
「えぇ!?思いっきりピッケルでブッさしちまったけど大丈夫かよ!!」
「損傷ありでも二十万ペンペケは下んねぇぜ!」
「何ぃ!?二十万ペンペケだって!?おいおい大金持ちじゃねえか俺たち!」
「よっしゃあ!今から鑑定屋のゴブリンのボブさんにレッツゴーだ兄弟!」
「おうよ兄弟!ちょっぱやで戻って売っちまおうぜ!!」
「しっかし、ニンゲンの頭蓋骨には意識や生前の五感とやらが残っていて、今も助けを求めてるなんて迷信を聞いたことはあるが…」
「なーに言ってんだ!ニンゲンは戦争で俺たちにボロ負けして絶滅したんだからそんなの迷信だろ!」
「それもそうだな!しかもピッケルで思いっきり刺しちまったから助けもクソもねぇな!だーっはっはっはっはっは!!」
「「だーっはっはっはっはっは!!」」
ドワーフの笑い声は、ダンジョン内に響き渡っていた…




