ジョン2
朝起きると、空が曇っていた。この感じだと、もうすぐ雨が降るだろう。テントから出てきたリーダーも空を見上げる。
「この感じなら、もうすぐ雨が降るだろうから、今日は壁づくりだな。朝の指示待ちだが、そう外れないだろうから新人に今のうちに説明しとけよ」
「了解です」
そういうとリーダーはテントへ戻っていった。リーダーだけ俺達とはテントが別で、テントの中には国から指示を受け取る通信機がある。普通は定期的に報告する通信兵しか持っていないのだが、うちのリーダーは優秀なので特別に別途設置されていた。パーティのリーダー達は、通信施設のある大きなテントへと集まるのが普通だ。
前線には、国から朝に連絡が入る。昨日の戦況を聞いて、参謀本部が作戦等を考えて伝えるのだ。そして、特段作戦が無ければ陣地の構築が仕事になる。雨が降れば魔族の炎の魔法の射程が半分ほどになるから人族が有利になる。この辺の話を新人にしてやるとするか。
俺はテントに入ると、まだ寝ている新人を起こす。
「おい、起きろ」
「は、はい! おはようございます!」
リサはもう起きているが、リサは基本的に受け身な性格なので新人に世話を焼くような事はしない。
前線ではパーティごとに寝るだけの小さなテントがあるが、男女一緒だ。ただ、男女間で性的な問題を何か起こした場合、即座にリーダーに殺されるだろう。あの人は、そういうことにはものすごく厳しいからな。それについても新人に説明しておかないとな。昨日はさすがに初の戦闘で精神的に疲れたのか、即座に寝ていたからな。
「今日は恐らく雨だ。その場合、俺たちの仕事は指定された場所にアースウォールを作る作業になる。アースウォールは知っているか? 呪文さえ唱えれば、適性が無くても作れる土の壁だ。これをノルマの分だけ作るんだ」
「え? 敵の魔法って昨日見た限りでは炎だけでしたよね。雨なら有利に戦闘が進められるんじゃないですか?」
「まあ、そう思えるのもわかる。実際、最初の頃は雨が降った時には人族が戦線を押し上げていたからな。ただ、魔族も馬鹿じゃない。しばらくしたら対策してきた。雨の日限定だが、あいつらは沼を作る魔法を使いやがるんだ。晴れて乾いたらなくなるんだがな」
「沼ですか? それくらいなら、沼の無い場所を進めば――」
「それくらい最初の奴らも考えたさ。ただ、沼かただの水たまりなのか俺たちに区別がつかん。魔族達は分かっているみたいでな、区別がつかずに沼にはまった人族を発見すると、すぐに近づいてきて焼き殺していくんだ」
「そ、そうなのですか・・・。それで、アースウォールなんですけど、どうして高さ1メートルくらいしか作らないんですか?」
「アースウォールは1度の呪文で高さ1メートル、横幅2メートル、奥行き30センチの土の壁を作り出す魔法だ。高さを2メートルにするにはもう一度同じ場所に唱えればいいだけだが、それはしない。なぜなら、そこまで高くすると壁が邪魔になって撤退できなくなるからな。1メートルならジャンプして超えていけるだろう?」
「でも、2メートルなら敵は壁をジャンプを越えられなくて待ち伏せできるんじゃないですか?」
「それはどうせ、雨が止めばすぐに分かるさ」
しばらくすると雨が降り始め、案の定その日はアースウォールで陣地を作る作業になった。




