マーク5
俺は女性を連れて小走りでリサ先輩の所へ向かう。運よく乱戦の中、俺たちの方へ攻撃が飛んでくることは無かったが、大砲は俺が離れているうちにさらに後退したのか、さっきの場所には見当たらなかった。
けが人は基本的に見捨てられるので、リサ先輩の姿はさっきの場所にそのままあった。
「お願いだ君、この人を治してくれないか! って、言葉は通じるか?」
女性は、リサ先輩を一瞥する。
「・・・無理よ。もう死んでる」
どうやら言葉は通じるようだが、発したその言葉に衝撃を受ける。
「嘘だ・・・嘘だと言ってくれ! そうだ、きっと気絶しているだけだ! ヒールを頼む!」
「別にいいけど・・・死者に使っても無駄よ。ヒール」
女性は無駄と言いつつも、リサ先輩にヒールを使ってくれた。しかし、リサ先輩の傷は全く治らない。
「ヒールって、実際は治される人の魔力も多少は使って傷を治すのよ。だから、死者には効果が無いの。これで分かったでしょう?」
「嘘だ・・・。リサ先輩、どうして自分にヒールを使わなかったんだ・・・」
理由は分かっているが、そういわずにはいられない。自分を治すことができるのに、治さずに死ぬなんて俺には考えられなかった。それほどまでにリサ先輩にとって家族が大事なのだろうが、その家族がリサ先輩の命が無くなってまでお金を望むとは思えない。
貴重なヒーラーなのだから、生きていれば他にお金を稼ぐ手段だってあったと思う。実際、引退したヒーラーは個人治療院を開く人が多い。
「・・・逃げないの? このままじゃ、あなたも死ぬよ?」
「あ・・・ああ。リサ先輩も、連れていかないと・・・」
「そんな余裕、あるの?」
今の間にも、近くを敵味方の攻撃魔法が飛び交っている。そんな中、リサ先輩の遺体を担いて退却するなんて無謀だということは分かっている。けど、このまま放置すれば、リサ先輩の死体は腐るか、敵に辱められるかもしれない。そんなのは嫌だ。
「・・・リサ先輩を担いで、帰る」
「そう。好きにすればいいわ」
「君はどうするんだ?」
「私? 私もついていくわ。一応、生存報告は必要だと思うし」
「君は、人族なのか?」
「そうよ。私の名前はエミリー。魔族に捕まってたけど、こうして逃げられた。あなたのおかげで、少し気力が戻ってきたし。そういえば、あなたの名前は?」
「俺の名前はマークだ。それじゃあ、俺はリサ先輩をかつい―――ぐぶっ!」
戦場で、悠長に話している余裕なんてない。俺は、味方の流れ弾によって自分の足を吹き飛ばされた。




