エミリー(注意:拷問有り)長め
気が付くと、周り中に魔族が居て逃げ出すことが出来なかった。私は前線に居たヒーラー。敵の隕石の衝撃を受けて気絶していたみたいだ。体に痛みはあるけど、大けがは負っていないみたい。アースウォールが緩衝材となり、運よく生き残れたのだろう。ただ、生き残れたのが幸せかどうかはまだ分からない。
すでに生きている味方は撤退し終わっているのか、ここに転がっているのは死体だけみたい。魔族は念のためなのか、すべての死体にわざわざ鉄の槍を刺して回っている。もし、死んだふりをした兵士が居たら大変なので理由は分かるけど、私もこのまま死んだふりし続けることは出来ないだろう。
普通は、敵に捕まるくらいなら自決する。捕まって帰ってきた人はいないし、捕まえた人を拷問するだろう。死ぬよりもつらい目に遭うくらいなら、自死したほうがマシだというのが兵士たちの間での常識だ。けれど、私は街に残してきた幼い弟や妹の事を思うと、自死を選ぶことが出来なかった。
「こ、降参します・・・」
私は近づいてきた兵士に、両手を半分挙げ、手のひらを後ろに向ける。これであなたに魔法を撃ちませんという意思表示がなされたはずだ。言葉は通じないけれど、攻撃する意思が無いというのは分かってもらえたようだが、他の兵士も集まってくる。
いつ攻撃され、殺されるかもしれないという恐怖の中、しばらくすると少し偉そうな魔族が来た。
「―――――!」
「―――」
偉そうな男が何か指示したのだろう。他の兵士が私の両手首に鉄の腕輪をつけ、鉄の鎖を通した。目隠しをされ、鎖をひっぱられてどこかへ連れていかれる。
台車の様なものに乗せられ、ガタガタと運ばれていく。体感として1時間ほどでどこかの建物へ着いたようで、降ろされた。そのまま石で出来た廊下を連れられ、鉄の扉を開ける音がすると中へ入れられる。ジャラリとした鎖をどこかへ繋がれた音がした後、目隠しを外される。
(ああ・・・やっぱり自決してた方が良かったかも)
その部屋には、所狭しと拷問に使う道具が置かれていた。捕虜として扱ってくれるかもしれないという甘い期待は見事に裏切られ、最悪を予想していた方が当たってしまったようだ。
入り口は兵士が立ち、逃げられないようになっている。と言っても、すでに鉄の鎖が鉄の棒に繋がれているため、私では逃げられそうにないけど。
しばらくすると誰か来たのか、入口の兵士が敬礼らしきものを誰かにしていた。おそらく、拷問官と思しき男が入ってくる。その後ろに、ノートを持った男が続いて入ってきた。
「さて、君の知っている情報を話してもらおうか」
拷問官は、たどたどしいけど私たちの言葉を話せるようだ。
「わ、私の知っていることは何でも話します。だから、痛いことはしないでください・・・」
「それは、君次第だ。まず、君の名前と年齢を聞かせてもらおうか」
「わ、私の名前はエミリーです・・・。年は、19です・・・」
拷問官は、まずは私の名前、年齢、出身地など個人的なことを聞いてきた。私は素直に、正直に話す。ノートを持った男も人族の言葉が分かるのか、私が話したことを書き留めているようだ。
「では、君たちの配置や人数、これからの作戦などを聞かせてもらおうか」
(やっぱり、聞かれるよね・・・)
もしこれを話してしまったならば、私は人族の裏切り者確定だ。例え解放されたとしても、話したことがばれれば街では生きていけないだろう。誰かにリンチされて殺されるだけだ。けれど、話さなければ解放されることもない。私はどうすればいいのだろうか・・・。
「黙秘するのかね? じゃあ、少し話しやすくしてあげよう」
「ま、待ってください、少し考える時間を―――」
拷問官は私の制止の声に構わず、私の服をナイフで切り裂き始めた。兵士に支給されている服は男女に差は無く、どれも長袖長ズボンだ。まずは上着が切り裂かれる。手かせをつけているので脱がせられないのは分かるけど、これでもう上着は使い物にならない。
このままでは、私の貞操の危機だと感じ、少しだけなら情報を話そうと思いなおす。
「わ、分かりました。話します、話しますから、これ以上はやめてください」
「いいだろう。では、話せ」
私は知っている前線の配置について話し始める。どうせ前線の配置は魔族にも知られていると思ったし、ばれたところですぐに配置を変えるだけだろうから。
「それだけかね?」
「は、はい・・・。私は階級もない一般兵なので・・・」
「だとしても、もう少し知っていることはあるだろう?」
拷問官は再び私の後ろに立つと、今度は私のズボンのベルトを外し始めた。
「ひっ、や、やめてください! 本当に知らないんです!」
「前に捕まえたやつも、同じ事を言っていたよ。捕まったら、そう言えと言われているのかね?」
「違います、本当に知らないんです!」
問答の間に私のベルトを外され、ズボンを下げられる。上下白の、何の変哲もない下着姿にされた。見知らぬ男に見られていると感じた私は、羞恥で顔を赤くする。私は、体さえ許せば。話さなくても、知らないと言っても殺されないかもしれないと、処女でいることは諦める。
だけど、拷問がそんなに甘いということは無かった。
「ひうっ!!」
私の背中に鞭が叩きつけられる。それだけでシャツが破れ、血がにじむのを感じた。
「さあ、少しは話す気になったかね?」
「は、話すと私が殺されてしまいます!」
「では、このままここで死ぬかね?」
「そ、それは・・・ぎゃうっ!」
再び鞭が振るわれる。焼ける様な痛みに、自然と涙が流れる。これが続くくらいなら、いっそ知っていることを全部話してしまおうか。
「さて、次は爪を一枚ずつ剥がすとしよう。何、しばらくすればまた生え揃う。その時にもう一度剥がされるか、話すか決めてもらおうか?」
「話します、話しますから、もう痛くしないでください」
拷問官がペンチを私の目の前にちらつかせたので、私の心は折れる。
「私の聞いている作戦は―――」
私は知っていることを正直に話す。と言っても、本当に知っていることは少しだけだ。リーダーでもない私には、重要な情報は知らされていない。
「やけに素直だな。まさか、嘘をついているのかね?」
「!! 本当のことを話しています! 嘘じゃありません!」
「それでは、体に聞いてみようか」
「やめて!!」
拷問官が、咥えていた煙草を私の目へと近づけてくる。押し付けられる瞬間、目をつぶる。
「熱いっ!! ああぁぁぁっ!!」
閉じたまぶたに、まだ火のついたタバコが押し付けられる。熱さはそれほど続かなかったけど、火傷したまぶたが痛い。
「素直に話す気になったかね?」
「ほ、本当の事はもう話しました・・・」
「君も結構、強情だね」
「本当なんです!! 信じてください!!」
「前の奴も、そういっていたが、情報は嘘だったよ?」
「そんなの、私には関係ありません!」
結局、私の両手両足の爪は順番に剥がされ、痛みで叫び続けた喉が割けて口内に血の味が広がる。剥がす爪が無くなったところで、拷問官は一度拷問を止めた。
「真実を話す気になったかね?」
「話して、います・・・。ど、どうすれば信じて、もらえるんですか・・・?」
「君が真実を言えば、それだけでいいんだよ?」
「・・・・・・・・・」
何を話しても、拷問をやめる気は無いんじゃないかと思い始める。前の人も、きっと真実を伝えたはずだ。それでも、帰ってきていない・・・ということは私も・・・。
「やっぱり黙秘するのかね」
「ち、違います! もう、知っていることが無いんです!」
「はぁ。これはあまりやりたくないんだがね。話したくないなら仕方ない」
「!!!」
拷問官が手にしたのはノコギリだった。殺される―――私はそう思い、最後の切り札で取っておいた情報を話す事にした。
「わ、わた、本当、情報、あります!」
「落ち着き給え。何、首を切ろうというんじゃないんだ。ただ、ゆっくりと左足の膝を切っていくだけだ。欠損はそうそう治らないから、素直に話す事をお勧めするよ」
拷問官はそう言うと、ノコギリを私の左ひざに当てる。私のヒールでは欠損を治すことはできない。足を切られたら、一生そのままになってしまう。
「だ、だから、話します!!」
私は、今度こそ人族を裏切ってしまったと、涙を流しながら真実を話す。
「ふむ。有益な情報だな。これが真実かどうか、こちらで調べよう。褒美に、今日の取り調べはここまでにしておこう」
「はぁっはぁっはぁっ・・・」
拷問官とノートを持った男が部屋を出て行った。入口の兵士が扉を閉め、外から鍵をかける。どうにか生き残った。私は、背中部分がボロボロになったシャツとパンツだけの姿で放置される。鎖が絶妙な高さで調整されていて、私は座ることが出来なかった。ぎりぎり膝が地面につかないのだ。
「ヒ、ヒール・・・」
痛みに耐えかねて、ヒールを使う。私の魔力量的に、ヒールは一日に1度しか使えないため途中で使うわけにはいかなかった。背中の傷も、爪も、まぶたも治り痛みが引いた。
「くっ、はっはっはっはっはっ。いつ使うのかと思ったら、もう使うのかね?」
廊下から拷問官の声がして、再び扉が開かれた。
「な、なんの、今日の取り調べは終わりって・・・」
「ああ、ここには時計が無いから分からなかったのかな? 1分前に日付が変わった。今日の分の取り調べを始めようか」
「―――――!! こ、このっ、悪魔!」
「ふっふっ、悪魔はお互い様だろう? お互い殺しあっているんだからなぁ」
何を言っても、この男の心には響かないのだろう。もう文句を言う体力もない。寝ていないため、私の魔力もほとんど無くなっている。この状態でもう一日拷問を受けたなら、本当に死んでしまうだろう。だんだんと私の生きる気力が萎えていった。
ジョロロロロッ
私の全身が脱力し、ずっと我慢していた尿意にも耐えきれなくなった。足元に出来ていく水たまりを、焦点の合わない目で眺め続ける。
「やはり、先にズボンを脱がしておいて正解だったな。まあ、もう血だらけの下着などもいらないだろう?」
私のボロボロのシャツと、おしっこに濡れた下着を脱がされ全裸にされる。もう気力が無くて、恥ずかしさなんて感じない。
頭から水をかけられ、同時に床のおしっこや血液も後ろにある排水溝へと流れていく。私はポタポタと髪から垂れる水滴も気にせず、だらりと脱力し続ける。
「心が壊れたふりをしても無駄だよ? まだたった1回しか取り調べをしていないんだからね。今までの奴でも、3日は保っていたよ?」
「・・・・・・・・・」
男はそう言うと、せっかく治した爪を再び剥がし始めた。生きる気力が無くなったと思っていたのに、その痛みで再び私は叫ぶ。
「ほら、元気になっただろう? それじゃあ、他に知っていることを話してもらおうか」
食事は口を固定され、無理やりドロドロの不味い何かを流し込まれた。トイレにも行かせてもらえず、1日続いた拷問によって私の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、床は糞尿にまみれていた。最後にそれらを水で流される事によって今日の取り調べという拷問は終わった。
「ひぃ・・る・・・」
絶妙に死なないように手加減されていたのか、私は生きていた。やはり痛みに耐えきれず、ヒールで治す。寝てはいないけど、時間の経過で回復した魔力でヒールを使う。魔力量が足りないのか、頭痛がするけど、拷問の痛みよりましだ。
次の日から、少しずつ拷問がひどくなった。皮膚を剥がされ、指を折られ、まぶたを切られる。ヒールで治るぎりぎりを狙っているかのようで、欠損だけは無い。
痛みに慣れることは無く、それどころか痛みが増す状況に、拷問途中でも耐えられずにヒールを使う。ヒールを使っても、すぐに拷問が続けられ、傷の無い時が無い。
一度、魔力が足りないのにヒールを使ったため気絶したが、痛みで起こされる。見ると、足の指が折られていた。寝ることも、気絶し続けることも出来ず、意識が混濁して自分でも生きているのかどうかも分からなくなったが、痛みを感じているということは死んでいないということだろう。話せることはもはやなく、ただただ拷問だけが続く。
「あ・・・あ・・・・」
「ふむ。もう、本当に知っていることが無いということか。だったら、もう用済みか。兵士の性欲処理に使ってから処分するか」
「まっ、まって・・・ください・・・」
もう死んだ方がマシだと思っていたが、拷問官の「性欲処理に使ってから処分」という言葉で意識が覚醒する。ここまで来たら、拷問でされなかった性的な事の方が嫌だと感じた。
「癒します・・・私が、あなた達の、傷を、癒します・・・」
「ほぅ。君が敵である私たちの怪我を治すと?」
「はい・・・だから、もう、しないで・・・」
「いいだろう。ヒーラーは貴重だ。兵士たちが君に手を出したり、殺したりしないよう見張らせよう」
私は殺されることも、犯されることも無くなった。けれど、小さな部屋に監禁され、敵の兵士をヒールで治す役目を負った。当然、敵である私に癒される事が嫌な兵士も居るため、比較的戦争経験の浅い若い兵士が私の所へ回されるようだ。
私は一応、兵服の代わりに簡素な服を着せられているが、戦場では女性が少ないためか、性的な目で見られるのが嫌だった。それでも、見張りが居るので犯されることは無かったが、ヒールするために患者に近づいたときに、私の胸やお尻に触られるのは日常茶飯事だった。この程度の事には、もう何も感じないということが、自分で自分じゃないかの様に感じる。
「ヒール・・・ヒール・・・ヒール・・・」
毎日気絶するまでヒールを使わされ、ヒールを使うことと寝ること以外に何も許されていない私は、驚くほど魔力量が増えていた。その量は、魔族よりも多いだろう。人族なら3回使えればベテランで、魔力の多い魔族でもヒールを使えるのは10回が限度だと思われるが、ひたすらヒールを繰り返す私は、いつしかいくらヒールを使っても気絶することは無くなっていた。怪我をした兵士が居なくなるまでヒールを使えば、私はあとはただ寝るだけだ。
この生活が終わる時が来るのだろうか? 誰か、私を助け出してくれるのだろうか? このまま一生この生活が続くくらいなら、いっそ今のうちに死んだ方が幸せだろうか? けれど、私はもう死ねない。無意識に発動するヒールが、私自身へのあらゆる怪我も一瞬で治してしまうようになってしまったから。




