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第二十二稿 人生を編集する者

「クローヴィス様!」


 卒業式を終え、学校の門の近くで馬車に乗り込もうとする彼の背中に叫んだ。

 草の匂いのする風が吹いている。


「ナディア」


「ごめんなさい、クローヴィス様を少し借ります!」

 そばにいた従者らしき男性にそう言って、驚いているクローヴィスの腕を引っ張る。


 気軽に借りて良い立場の人ではないのは分かっているが、こんなことが許されるのは多分今日が最後だ。


 戸惑う従者に「大丈夫だから」と言い置いて、クローヴィスは私の手を取った。

「会えて良かった。最後に君の顔が見たかった」


「中庭の、人が居ない場所へ行きましょう」

 私が短くそう言うと、クローヴィスは中庭の一画にある、校舎と校舎を繋ぐ回廊の下へと案内してくれた。


 近くの木々の葉が風に鳴っている。

 私は杖を取り出し、さっと振る。

 防音の魔法が発動した。


 葉ずれの音が完全に無くなる。

 これで、私達の会話が盗み聞きされることはない。


「どうやら、聞いて嬉しい話ではないようだね」

「確認しておきたいことがありまして」


 手を伸ばされても届かない程度に距離を取る。

 美しい紫の瞳を睨むように見つめた。


「クローヴィス様。ヴィラント様に何をなさったんですか?」


 クローヴィスは優雅に微笑んだ。

「間に合って良かった。あやうく、心配事を残して行くところだったよ。ナディアも、これで毎日ゆっくり眠れるね」

「話を逸らさないでください」


 彼はふ、と観念するように息をついた。

「そうだね。君が知らないのはフェアじゃない。現実を変えた物語の、他ならぬ作者なんだから」


「現実を、変えた?」

「どこから話そうか」


 クローヴィスは静かに瞳を伏せた。

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