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第十九稿 敬愛する貴方へ

『敬愛するクローヴィス様へ


 空を見上げたら、雲が急ぐように東へと向かって行きました。

 季節は秋へと、留まることなく進んでいます。夏は早く過ぎてほしいものなのに、今年の夏は、ずっと続いてほしい。叶うなら時間が止まってほしい。いえ、続いてほしくない事案も一つあるのですが。


 一人で物語を書き続けていた頃は、寂しい、と思ったことはありませんでした。クローヴィス様と一緒に過ごす時間が増えるほど、その感情が肌を刺すのです。それが恐ろしく厭わしい。同時に、その先を知りたいと思うのです。この欲に溺れた先に何があるのか。


 ヴィラント様との婚約が白紙に戻った今、私とクローヴィス様は赤の他人です。クローヴィス様が卒業すれば、学校という最後の繋がりも消える。それが私を不安にさせるのでしょうか。

 

 ナディア・クライノート』



 日差しが厳しくなってきた季節。

 答えの出ない問いをしたためた手紙を封筒に入れる。

 蝋を垂らし、印璽を押し付ける。


「届けて」

 その言葉が合図のように、封筒は自室の机の上から空中に浮かび上がると、窓から外へと羽ばたくように飛び出していった。

 空の青さが眩しい。


 いつ会えるか、会えてもゆっくり話せるかも分からない彼に打ち明け話をするには、手紙の方が都合が良かった。

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