せいぜい敵の首を1人10は持ち帰ってこい!準備はいいかぁ?!ノロマ共!(※ヒロインです)
「いつもはスコープの際は、目を瞑っているでしょう。今日はなぜ、奇妙なポーズまでしてスコープなどとおっしゃったのですか?」
えー。衝撃の事実。
スコープと言わずとも目を瞑ればできてしまったらしい。まぁ、それくらいのことなら、言い訳は簡単だ。(というか、自信満々でスコープとか言っちゃった私を滅して…!)
「き、気分転換よ」
ドキドキしながらノヴァの方を見るが、彼の表情は全く読めないので意味がない。
「…そうですか。」
意外とあっさり納得してくれたノヴァに感謝した。
次に、もう一つの戦場、フィリアもスコープする。(もちろん目を瞑って!)
…あらら。
「…勝率は1%。」
「…了解しました。でしたら、そちらはだいぶ時間を要します。早めに出立するといたしましょう。」
机に並ぶお菓子を口の中に詰め込む私の腰を、ノヴァがガッチリと掴んだ。
一瞬視界が揺れると、目の前に彼の美しい胸筋があった。
「行きます。」
「え?行きますって…まさかこの状態で、戦場へ??嘘よねぇぇぇぇ!」
ノヴァの足元が光り、気づけば先ほどいスコープした戦場、グレーダスに来ていた。
数十メートル行けば、その戦いに巻き込まれるほどの距離。
後ろを向けば、アルカナの紋章・雪結晶の描かれたスカーフを巻いた者達が100人ほど並び立っている。
誰もが鼻息を荒くたて、戦場へ行くことを心待ちにしていた。
その様子を見て、何かがカチッと動いた気がした。ノヴァの腕から降りて、私の口は勝手に開く。
「総員!これより我らアルカナは、このグレータスの地において、弱者を蹂躙する悪人共を制圧する!勝率は10%!1時間で終わらせる!第1部隊、および第3部隊先発!第2部隊自陣の防衛!前回の戦でまるで役に立たなかった4、5、6部隊のノロマ共は先発に続いて、せいぜい敵の首を1人10は持ち帰ってこい!準備はいいかぁ?!ノロマ共!」
「「「「「「了解!!!!!」」」」」」
元・しがないOLだった私の口から出るとは思えない文句に、地面が割れるほど大きな返答が返ってくると同時に、目の前にいた兵達は一瞬で姿を消した。
残ったのは私と、ノヴァだけ。
「マスター、調子が戻ってきたようですね。」
「ノヴァ。あなたは戦場に行かないの?」
私の小説の設定では、このギルドで1番強いのは、ノヴァのはず。流石に戦場に1人でいるのは嫌だけど、ノヴァが戦場に参加すれば、1時間と言わず、30分で終わってしまうんじゃないか。
けれど、ノヴァは、こちらに視線だけ向けて即答した。
「私は、マスターを守るための存在ですから。」
どうせお世辞だろうと思ったけれど、作り笑顔さえ作らない、その表情が逆に真剣さを出しているようで、気恥ずかしかった。




