第五章 初鍛刀&防具作り
初めての小説です。温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。
街に戻った剛は、ギルド宿舎の鍛冶場を借りることにした。
昼間は冒険者たちのざわめきで賑わうギルドも、夜は静けさに包まれている。
「ふぅ……初日にして、ミスリル刀と防具か」
アイテムボックスから取り出したのは、昼間の洞窟で採掘したミスリルの欠片。
青白く光るその金属は、冷たいはずなのに、手に取るとほんのり温かく感じる不思議な感触だった。
剛は肩を回し、笑みを浮かべる。
「俺ってやっぱ、持ってんだよなぁ...フッ」
「まずは二人分の籠手と臑当、そして……セレナ用の軽装だ」
「そして、ミスリル刀を...」
セレナは壁際で腕を組み、呆れ気味に言った。
「持ってるというか……調子に乗ってるというか」
「おいおい、女の子の前だからカッコつけさせてくれよ」
剛は軽口を叩きながらも、火床に薪をくべ、ふいごを踏む。
しかし、セレナは肩越しに覗き込み、自分用の軽装と言う言葉に少し驚いた表情で言う。
「私用ですか?」
「そうだ。戦場での補助もある。攻撃だけじゃ守れないだろ」
「そうですけど...」
と言いつつセレナの頬は軽く紅潮していた。
炉の温度が上がると、剛の表情から軽さが消えていった。
チャラついた雰囲気は跡形もなく、ただ真剣な鍛冶師の顔だけがそこにある。
剛はミスリルを炉で溶かし、慎重に叩き伸ばす。
槌を振るたび、青白い火花が散り、金属が薄く板状に成形される。
真紅に輝くミスリル鉱石を火にくべ、槌を振り下ろす。
カンッ、カンッ、と澄んだ音が鍛冶場に響いた。
無意識に魔力が金属に染み込み、刃や防具に付与魔法が施されていく。
まず二人分の籠手とが完成した。
軽く手を通すだけで、握力や攻撃力を自然に補助するような感覚が伝わる。
「……うん、これなら格闘戦でも頼れるな」
セレナが指先で籠手に触れ、感触を確かめる。
「これならどんな攻撃も防げそうですね」
そして剛は金床の上に筒状の金属片を並べる。
火花が上がり、槌の音が鳴り響く。鍛え上げられていくのは、脚を包む筒臑当――膝下から足首を守るための防具だ。
表面には細かな文様が刻まれ、ミスリル特有の淡い輝きがゆらめいている。
「軽いのに、衝撃が全然伝わらない……!」
試着したセレナが驚きに目を見張る。
「俺の防具は、力を受け流す構造になっているからな。芯に魔力の通り道があるから、衝撃が分散すんだ」
次に、セレナ用の軽量防具――ミスリルを織り込んだ衣を作り上げる。
胸部、背中、腕、脚を覆う一枚の柔らかい防具だが、刃は通さず、魔力も自由に流せる。
淡く青白く光る紋様が織り込まれ、まるで光を纏った布のように滑らかで軽い。
セレナは目を丸くして手を伸ばした。
「……まるで羽衣のようです」
「軽くて守れる。しかも魔力の流れを邪魔しない」
剛は淡々と説明しつつも、どこか誇らしげだった。
テストとして、セレナが軽く体を動かす。
防具はまったく重さを感じさせず、腕や肩の可動域を妨げない。
「試しに叩いてみてくれる?」
「おう。せい!」
槌で岩を叩くような力を受けても、衣には傷ひとつつかない。
「痛くない....すごい!...てか、本気で殴りすぎよ!バカ!」
バシン...
「おー、痛ってー...悪かった」
「本当にもう、でも……あなたの鍛冶は、本当に戦場に立つ人のためのものですね」
セレナの瞳が輝く。
剛は軽く肩をすくめ、微笑む。
「まだまだだ。でも……こうやって二人分の装備が揃えば、どんな冒険でも戦える」
鍛冶場に火花が散り、夜の静けさに金属音が響く。
籠手、臑当と衣。
戦いを支える防具が、剛の手で形を得た。
その胸に、熱い決意が再び燃え上がる――
「さて、次は武器だな」
彼は、刀に取り掛かった。
鉱石を鍛錬するたびに微かな光が弾け、魔力が鉱石へと流れ込んでいく。
無意識に発動する《付与魔法》――しかし今回は違った。
「……《ルーンフォージ》」
剛は低く呟き、意識して魔力を流し込む。
刃となる部分に「斬撃強化」のルーンが刻まれていった。
セレナはその光景を息を呑んで見つめていた。
彼の横顔は戦場で剣を振るうとき以上に鋭く、美しかった。
数時間後――
鍛冶場に置かれたのは、一振りの刀。
刃は蒼銀に輝き、わずかに炎の揺らめきが宿っている。
剛は手に取り、軽く振るった。
「……悪くねぇな。初鍛刀にしちゃ、上出来だ」
セレナが興味深そうに覗き込む。
「名前は?」
剛は少し考え、口元を緩める。
「太刀《蒼焔》……だな」
「ふふ、やっぱりカッコつけてる」
セレナは笑ったが、その瞳は真剣だった。
「でも、本当に綺麗。剛にしか打てない刀だと思う」
剛は肩をすくめ、刀を鞘に納めた。
「そりゃそうだろ。俺が打ったんだからな」
そう軽口を叩きながらも、胸の奥で小さく熱が灯っていた。
「俺専用の刀にできないものか?」
――鍛冶師としての道が、いま始まったのだ。
こここうした方が良いとかあったコメントください。
ちなみに他に1つ書いているので投稿頻度は遅めです。




