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ドン底鍛冶屋が転生して気づいたら、最強でした  作者: 高本 元史


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第四章 帰り道の洞窟にて

初めての小説です。温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。

森での初めての討伐を終え、依頼も無事に達成。

帰り道を進んでいた剛とセレナは、偶然にも岩肌に口を開ける洞窟を見つけた。

入口はひんやりとした気配を放ち、奥からはかすかに風が吹き抜けてくる。

湿った土と鉱石の匂いが鼻をかすめ、剛の胸が高鳴った。

「……鉱脈かもしれない」

剛が低く呟くと、セレナが頷いた。

「ええ。冒険者の間では“灰色の小穴”と呼ばれる場所ですね。あまり大きな魔物はいませんが、鉱石は時折見つかるそうです」

剛の瞳がきらりと光る。

「行ってみよう」

洞窟の中は薄暗く、滴る水音が響いていた。

壁面には光を帯びた苔が群生し、淡い緑の光で周囲を照らしている。

足元には砕けた鉱石の欠片が散らばり、所々に白く輝く鉱脈の筋が走っていた。

剛は腰を落とし、欠片を拾い上げる。

「……鉄じゃない。もっと軽い……いや、これは……」

指先でこすり、耳元で軽く叩くと、澄んだ音が鳴る。

セレナがそっと覗き込み、目を丸くした。

「ミスリル……! 低層の洞窟で採れるなんて……とても幸運です」

その言葉に、剛の胸が熱を帯びる。

ミスリル――金属の王とも呼ばれる、、前世では電気誘導や熱への高い耐性を備えていただが、この世界では軽さと強度、魔力伝導性を兼ね備えた希少素材。

鍛冶師にとって夢のような金属だった。

「……試してみるか」

剛は昨夜打った刀を抜き、洞窟の岩壁に向き直った。

居合の構えから、静かに一歩踏み込み――振り下ろす。

――ザンッ。

風を纏った刃が奔り、硬い岩をまるで木片のように断ち割った。

破片が飛び散り、岩肌からは青白く光るミスリル鉱脈が露わになる。しかし、刀はミスリルの硬さに負け大きく刃毀れしてしまった。しかし、

「……やっぱりだ」

剛の声は震えていた。

「風が……切り口を広げてくれる。素材採取にも向いてる。もう使い物にはならないが」

セレナは横で目を細め、彼の背中を静かに見つめていた。

「あなたの刀……鍛冶師としての技と、戦士としての技量。その両方が重なって、初めて形になっているのですね」

剛は刀を収め、深呼吸する。

「……俺はただ、いい素材が欲しいだけだ」

そう言いながらも、その声音には抑えきれぬ興奮が滲んでいた。

二人は協力しながら、壁からミスリルを少しずつ削り取っていった。

セレナは魔力で岩を砕き、剛は刃で不要な部分を切り離す。

欠片はひとつひとつ《アイテムボックス》へと収められ、やがて小さな麻袋いっぱい分の収穫となった。

手にした最後の欠片を見つめ、剛はふっと笑う。

「これだけあれば……刀や防具だけじゃない。槍も打てるな」

セレナが小さく瞬きをする。

「槍も?」

「ああ。刀は斬撃に優れるが……戦いでは突きの間合いも必要になる。剣と槍、その両方を扱えれば幅が広がる」

その言葉に、セレナの目が柔らかく細められた。

「本当に……鍛冶師なのか、戦士なのか。どちらが本分なのか分からなくなりますね」

剛は照れくさそうに鼻をかき、肩をすくめる。

「俺にとっちゃ、鍛冶と戦いは同じだ。いい武器を打つには、戦いの中で確かめなきゃならない」

洞窟の奥へ差し込む風が、二人の髪を揺らした。

その瞬間、剛の胸に熱が走る。

――これから始まる鍛冶師としての冒険。

その第一歩が、確かに形を得たのだった。

こここうした方が良いとかあったコメントください。

ちなみに他に二つ書いているので投稿頻度は遅めです。

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