第三章 素材を求めて
初めての小説です。温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。
翌朝。
剛とセレナは依頼票を手に、グランフィール郊外の森へと向かっていた。
目的は「ゴブリン討伐」。だが剛にとって、それはあくまで表向きにすぎない。――真の目的は刀の素材を手に入れることだった。
「鉄鉱石は山や洞窟に多いですが、この森でも武具の素材は拾えます。魔獣の爪や牙、それに魔石……」
「……爪や牙は刃の芯材に混ぜられる。魔石は……付与の触媒になるかもしれないな」
剛の声には、戦闘そのものより素材への期待が滲んでいた。
セレナは呆れながらも、どこか楽しそうに微笑んでいる。
森の奥は静寂に包まれていた。鳥の声すらなく、ただ風が梢を揺らす音だけが響く。
ふと――枝葉がざわめき、三匹のゴブリンとシャドーウェルフ五匹が姿を現した。
黄ばんだ牙や漆黒の爪をむき出し、錆びた短剣を振りかざしながら。
「……ちょうどいい実験台だな」
剛は昨夜打った刀を抜き放つ。
刃は淡い青光を帯び、まるで呼吸するように風をまとった。
ゴブリンの一体が突進してくる。剛は踏み込み、刃を一文字に振り抜いた。
その瞬間、刀身から風の衝撃が奔り、前方の二匹をまとめて真っ二つに切り裂いた。
「なっ……!?」
自分自身が驚いて声を漏らす。
ただ斬っただけのはずなのに、刀が勝手に風を纏い、斬撃を拡張させたのだ。
それはまさに飛ぶ斬撃であった。
残った一匹は、セレナがすっと指を弾いた。
「――《フレイムバースト》」
無詠唱のはずなのに、技名を告げた瞬間、彼女の掌に紅蓮の炎が膨れ上がった。
火球は一直線に飛び、ゴブリンを包み込んで爆ぜた。
焦げた臭気が森に広がり、魔石だけを残して灰が舞う。
剛は息を呑んだ。
「……無詠唱で、あの威力かよ」
セレナは涼しい顔で微笑む。
「言葉は詠唱ではなく、力を定める“型”に過ぎません。技名を口にすることで、魔力の流れを瞬時に整えられるのです」
戦闘は一瞬で終わった。
剛は死骸に近づき、牙や爪を丁寧に外していく。
腐臭を放つ血肉の中から光る魔石を見つけた瞬間、彼の目はぎらりと光った。
「……これだ。武器に組み込めば、どんな変化を見せる……?」
素材を拾い上げる剛の姿は、まるで宝を見つけた少年のようだった。
セレナが小さく首を振り、苦笑する。
「あなた、戦いより素材の方が楽しそうですね」
「当たり前だろ。戦いなんて手段だ。……俺にとって本当の戦場は炉の前だ」
その言葉に、セレナの瞳がほんの一瞬だけ鋭く光った。
「なら――私も、あなたの戦場に最後まで付き合います」
剛は驚きつつも、口元に笑みを浮かべた。
「……助かるよ。最高の武器を打つためには、最強の仲間が必要だからな」
剛は、素材を剥がし終えたゴブリンの死骸を燃やして魔素へと戻した。
その後二人は森を後にし、素材を《アイテムボックス》に入れ、洞窟を進んだ。
こここうした方が良いとかあったコメントください。
ちなみに他に二つ書いているので投稿頻度は遅めです。




