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ドン底鍛冶屋が転生して気づいたら、最強でした  作者: 高本 元史


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第十六章 初めての顧客

初めての小説です。温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。

アイディアがうかんでは、新しい小説を書いているので投稿頻度が遅い事をお詫びします。

学生ながら頑張ってます。読んでいただけると幸いです。

グランフィールの街を抜けた郊外。

草原の小高い丘に、新しく設けられた移動式工房《流星工房》が立っていた。


洋風の小屋のような見た目だが、中へ一歩入れば広々とした空間が広がり、炉と作業台が鎮座する。

壁際には素材のラックが整然と並び、鍛冶道具は光を帯びるように輝いていた。

剛が夢に描いていた「どこでも鍛冶場」が、今まさに現実となったのだ。


「ふむ……とりあえずは、棚を埋めないとな」

剛は炉に火を入れ、槌を握った。

ここは店――ただ武器を作るだけでなく、並べ、売り、冒険者に渡してこそ意味がある。


セレナは魔石や鉱石を種類ごとに仕分け、リュシアは磨き布で台を拭き上げる。

小さな工房の中が、少しずつ「店らしい空気」を帯びていった。

 


まず剛が打ち始めたのは短剣だった。

刃渡りは短め、持ち手は革で巻き、軽量化を意識する。

「これなら斥候や女性冒険者でも扱いやすいだろう」

焼き入れのたびに青白い火花が飛び散り、完成した刃は鋭い輝きを宿した。


次に作ったのは片手剣。

標準的なバランスを意識し、刃には軽く《風の刻印》を彫り込む。

試しに振ると、空気を裂く音が心地よく響いた。

「汎用性のある一本だな。初めての冒険者向けに置いておくか」


さらに防具へと手を伸ばす。

鉄の胸当てに簡易の魔石を組み込み、打撃の衝撃を分散させる加工を施す。

セレナが傍で興味深そうに呟いた。

「……見た目は普通なのに、触れると硬さが増している。実戦で役立つでしょうね」


ラックに掛けられた剣、防具が少しずつ並び始め、工房の中はまるで小さな鍛冶屋そのものとなった。

剛は額の汗を拭い、ほんの少し口元を緩める。

「よし……最低限の品は揃ったな」


♢ ♢ ♢


その時だった。

入口の幕ががさりと揺れた。


「ここが……噂の工房か?」

姿を現したのは、革鎧に身を包んだ中年の冒険者だった。肩には剣を背負い、手には使い込まれた盾を抱えている。

だが盾の表面には大きな亀裂が走り、今にも壊れそうだった。


「《流星工房》はここで合ってるか?」

「……ああ、俺が店主だ。鍛冶師、剛だ」


淡々と答える剛に、冒険者は少し安堵した表情を浮かべる。

「よかった。街の掲示板で見たんだ。新しく工房を開いた、腕の立つ鍛冶師がいるってな」


剛は盾を受け取り、手のひらで表面をなぞる。

――素材はそこそこ良い。だが酷使しすぎて亀裂が深い。

「修復は可能だが、強度を戻すには追加の素材が要るだろう。」

「それで頼む!」

冒険者は即答した。

セレナが奥から小さな魔石を取り出し、剛へ差し出す。

「これを芯材に使えば、多少は魔力を吸収して耐久力も増します」

「助かる」


炉に火を入れる音が響く。

赤々とした炎が盾を照らし、剛は槌を振るった。

亀裂を溶かし、魔石を組み込み、再び形を整えていく。

火花が飛び散り、リシュアは思わず目を瞬かせた。


やがて、亀裂は跡形もなく消え、盾は新しい光を宿していた。

剛がそれを差し出すと、冒険者の目が大きく見開かれる。


「こ、これは......! まるで新品以上だ!」

「《烈盾》だ。衝撃を一度だけ吸収して拡散する。お前の戦い方には向いているはずだ」

「おお......! ありがたい! これでパーティのみんなも安心だ!」


冒険者は深々と頭を下げ、代金を置いて去っていった。

その背中を見送りながら、剛は小さく息を吐く。


「……ふん。ようやく、本当の意味で鍛冶師としての一歩を踏み出せたな」


セレナは微笑み、リュシアは無邪気に拍手を送る。

焚き火のように温かな空気が《流星工房》を包み込んでいた。


こうして、剛たちの新しい物語――“職人としての冒険”が静かに始まったのである

完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!

モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。

これからも、よろしくお願いします!

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