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ドン底鍛冶屋が転生して気づいたら、最強でした  作者: 高本 元史


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第十章 ダンジョン攻略・後編

初めての小説です。温かい目線で読んで頂けると嬉しいてす。

迷宮の空気は重く淀み、外界とはまるで別世界だった。

壁に埋め込まれた結晶がかすかに光り、通路を照らしている。だがその輝きは不気味に揺らぎ、奥に潜む影をさらに濃くしていた。


「……嫌な気配が濃くなってきたな」

剛は低く呟き、刀の柄に手を添える。


セレナは耳を澄ませ、森で育ったエルフの感覚を研ぎ澄ます。

「足音……小さくても数が多い。気をつけて」


その瞬間、通路の奥から《ゴブリン・ウォリアー》たちが飛び出してきた。

錆びた短剣を構え、黄色く濁った瞳で剛たちを睨みつける。


「……ちょうどいい。試し切りだ」

剛は刀を抜いた。淡い青の光が走り、風が刃を纏う。


「――《風閃》」


小声で呟いた刹那、空気が裂ける音と共に飛ぶ斬撃が放たれた。

前衛の三体がまとめて切り裂かれ、風圧で後列までもが吹き飛ぶ。


「っ……!」

セレナは思わず息を呑む。

剛自身も、刀が勝手に力を引き出しているような感覚に戸惑っていた。


残った個体が咆哮を上げ突撃してくる。

セレナは即座に矢を放ち、矢尻が赤熱化する。


「――《フレイムバースト》!」


炎の矢が一直線に走り、ゴブリンを包んで爆ぜた。

爆煙と共に焦げた魔石が地に転がる。


「詠唱なしでこの威力……恐ろしいな」

剛が結界を維持しながら口の端を吊り上げた。

「あれ?剛も結界魔法使えたの?」

「使えるっつーの!」

などと冗談を叩きつつ戦闘は一瞬にして終わった。


♢ ♢ ♢


剛は死骸へ歩み寄り、牙や爪を外していく。

腐臭の中から光を放つ魔石を拾い上げた瞬間、その瞳が鋭く輝いた。


「……いいな。刃の芯材に練り込めば強度が増す。魔石は付与の触媒に使えるかもしれない」


素材を手にした剛の姿は、戦士ではなく職人そのものだった。

セレナは呆れながらも微笑む。

「やっぱり……あなたにとっては戦いより素材、なのですね」

「当然だ。戦いは手段。本当の戦場は――炉の前だ」


剛の言葉に、セレナは静かに頷いた。

「なら、私はその戦場でも隣に立ちます」


短いやり取りの中で、二人の間に強固な信頼が刻まれていった。


♢ ♢ ♢


さらに進んだ先に現れたのは、巨大な石扉だった。

表面には古代のルーンが刻まれ、鈍い光を帯びている。


「封印扉か……」

「中には強敵がいるな。C級以上、下手をすればB-級だ」

剛は刀を鞘に納め、静かに息を吐いた。

「……行くか。逃げる理由はない」


剛とセレナは個人個人で防御魔法や身体強化魔法をかけた。

セレナは双短刀を逆手に握り、剛は鞘に手を添えた。


石扉が軋みを上げて開いた。

暗闇の奥から現れたのは、漆黒の巨体――《シャドウ・ライノス》。

角は黒曜石のように鋭く、赤い瞳が炎のように光る。


轟音の咆哮が迷宮全体を震わせた。


「ボスか……上等だ」

剛は口元をわずかに吊り上げ、刀を構えた。

「――ここからが本番だ」


セレナも頷き、戦闘態勢を整える。

次の瞬間、巨体が地を踏み鳴らし突進を開始した。


――迷宮の核心をかけた戦いが、幕を開けた。

完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。


これからも、よろしくお願いします!

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