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第6話 ーー異世界転移ーー

「はぁはぁ…ここまで離れれば流石に…」


 ひたすら遠くまで走ってきた。家の明かりももう見えない。ここからは魔物に出会わないか気を付けながら進まねばならない。


「それにしても、ここらへんは畑だらけだな。長居しすぎるとバレるかもな。だとしたら周辺地にでも…民家か?」


 正面に見える明かり。薄く光っているが光が漏れている。目を凝らしてみると家の形をしている。丁度良い、流石に俺のことは広まらないだろうし少しだけ匿ってもらおう。そう考えた。だがここで俺の変な勘が働く。


(このままだと死ぬ…?)


 俺はこっそり窓下まで行き中の様子を聞くことにした。


〔ここで速報です。先ほど逃亡したヒデヨシ サドについてですが、未だに逃亡を続けています。異世界人を匿った罪で死刑が確定しています。犯人の生死問わず、連れてきた者には多額の報酬が与えられます〕


(もうこんな情報が!?)


 恐らく携帯か何かで連絡したんだろう。流石にこの状態じゃ周辺地へは向かえない。


(これじゃあ逃げ道が無い…どうすれば…)


「おいお前。何やってる?ってこいつの顔…」


 民家の人間にバレた。俺は急いで逃げる。


(仕方ない。一度戻ってでも出直すしか…)


 俺の家の方角に明かりが見えた。松明の明かりだ。ここら辺で松明を持つ連中なんて…


「隊長!居ました!」


 防衛軍しかいない。後ろからは民間人が、前からは防衛軍、周辺地は逃げ場にならない。だとしたら…


「もうどうにでもなれー!」


 俺は森の中に突っ込んだ。魔物なんて気にしてる場合じゃない。俺は走る。今日だけで筋肉痛は避けられないだろう。夜の森は危険な魔物が大量に活動しだす。防衛軍とはいえ、自ら命を投げ出す真似はしないのだろう。追手は来ない。だがそれは同時に、どれだけ危険かを表すものでもある。


(どうか魔物に出会いませんように!どうか魔物に出会いませんように!どうか・・・)


 心の中でそう唱えながら歩く。その時だ、大きな足音が響く。俺の身体が宙に浮いてしまうほどの振動だ。慌てて草陰に隠れる。


「グルルルル……」


 見えないけど分かる。やばい。高さで言うならば俺の10倍だ。心臓を止める勢いで音を殺す。次第にその魔物は去っていき、足音は遠くに行く。


「……はぁはぁ何だあの化け物…森にあんな魔物が居たなんて…」


 さっき見た大型魔物の比にならない。今すぐ離れないと…そう思った矢先、


「キシャー!」


「うわ!」


 ネズミ型の魔物だ。大きくなったネズミと言う認識で合っている。こいつだけならそこまで害はない。だがこいつの特性は群れること。前に街でも同じようなことがあり、その時のニュースで覚えている。


「うわー!!!」


 必死で逃げるが追いかけられる。予想通り段々と増えていく。動き自体は速いわけじゃないが追いつかれたら終わり。食われて死ぬ!


「誰かこいつらをー!」


 俺も30代。動き回れる年齢じゃない。段々とスピードが落ちていき、ネズミが飛びかかってきた。


(あ、オワタ)


 そう諦めた瞬間。ネズミをバシッと掴み取る長い剣のようなもの。まるでしなっているかの如く。他のネズミはすぐさま逃げていった。


「あ、あの。ありがとうござ….」


「シィー…」


 暗くてよく見えなかったが、すぐにその正体に気付く。この人間でない音、しなるような柔らかい身体…


「蛇だー!!」


「シャー!」


 確かにそうだなネズミは蛇が食べるもんな! でも何で他のネズミじゃなくて俺を追いかけんだよ! 聞いたことがあるぞ、蛇は丸呑みしてゆっくり溶かすって。そんな死に方あんまりだ!

 俺は木に登る。登ると言うかしがみついてる感じだ。蛇も登ってこれるはずなのに登ってこず、下で口を開けて待っている。


「あの蛇野郎舐めやがって…あ、でももう手の力が…」


 ここを踏ん張っても、この蛇が退くことはないだろう。こんな森で助けてくれるやつなんて、全部魔物だ。助けてくれるったって、その後どうせ追われるし。結局俺は死ぬしかない。もう力の限界だ。

 俺はパッと手を離す。いや、離れたと言った方が的確か。全てを諦めて身を投げ出した時、ある記憶が浮かんだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「多分お前も出来ると思うぜ。俺がこの世界に来れたんだ」「この世界の全員、ホールを開ける」「俺がこの世界に名前をつける!その名も『ベジア』だ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そうだ。俺だって異世界に行けるかもしれないんだ。俺が生きて、この世界の名前をみんなに知らしめなきゃいけないんだ。俺は、まだ死ねない。


「開け!!異世界への扉(ホール)!!!!」


 俺の落ちていく軌道に、一つの空間が現れる。必然かの如くその空間に吸い込まれた。グルグルとしていて、何とも居心地が悪い。地面に手も足もつけず、流されている。何とか体勢を整えて正面?を向くと、そこには光があった。

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