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第5話 ーー時間ーー

「ん?誰だろう」


「待て」


 客人かと立ち上がるが止められる。閉まっているカーテンを少し捲って外を見た後、彼は俺にこう言った。


「国の奴らだ。時間が来たみたいだな」


「それってどういう…」


「お別れってことだ。俺の体力は十分回復した。これならホールも作れる」


「ちょっと待ってくださいよ!お別れって…そんな早く…隠れてればどうにかなるかもしれません。それか俺が説得して…」


「なるわけねーだろ。説得って、話聞くと思ってんのか?寂しいのは分かるが、旅ってのはそんなもんだ」


 せっかく出来た異世界の友人。俺は手放したくなかった。でも言う通り、国の防衛軍は隠れてやり過ごせるようなものじゃない。一度逃げて戻ってくるなんてのも無理だろう。


「防衛軍だ!ドアを開けろ!」


「流石に張り込みはしてねーみたいだな。んじゃ、裏口借りるぜ」


「ちょ…」


「じゃあな」


 裏口から出て行ってしまった。それと同時に、ドアを突き破ってきた防衛軍と鉢合わせる。


「あ、あはは。すいません。眠っていたもので」


「異世界人の調査に来た。協力してもらう」


 防衛軍の人達はそこら中を調べまわっている。流石に指紋とかは取らないらしく、安心した。俺はそれよりも、別れを言えなかったことを悔やむ。そんな俺は我慢出来ずに、防衛軍の人達に一言。


「あ、あの…」


「何だ?プライバシーは守るから安心して良いぞ。エルフの同人…」


「そうじゃなくて!外に忘れ物をしてしまって…取りに行っても?」


「構わん。終わったら勝手に帰るからな」


「ありがとうございます〜」


 俺はそう言うと正面のドアから裏に回って走る。多分森に行っただろう。あの人の事だからまっすぐ…そう思って4分ほど走った。予想通り、森の中で何かをしている彼が居た。


「お前何で…」


「はぁはぁ…別れの言葉を言えなかったので…」


 疲れ果てて膝に手をつきながら喋る。何をしているのかと思ったが、すぐに分かった。あれが…


「これがホールだ。渦巻いてんだろ?ここを通れば異世界に行ける」


「そ、それなら俺も!」


「ダメだ。悪いが2人分のホールは作れねー」


「…じゃあ、お別れですね…」


「そうだな」


 慣れている様子だ。旅というのはそういうもの。肝に銘じておこう。


「さようなら!」


「おう!」


 お別れも言えたし、もう帰ろう。そう思い背を向けた。


「あ!忘れてた!」


 その言葉に再び彼を見る。忘れ物だとしたら取り行けないと思うけど…


「俺がこの世界に名前を付ける!その名は、『ベジア』だ!お前に食わせてもらった野菜、美味かったぞ!」


 最後まで面白い人だ。俺は笑いながら、


「はい!」


 そう返事した。行ってしまったあとは、虚しい現実しか残らない。夕日が空を赤く染めて美しい。森は魔物が出て危ないから急いだ。




         一方俺の家では


「ん?これは…獣の毛か?人間にしては短いし、色が付いてる。おい、この家にペットの類は」


「見当たりません。餌などもありません」


「これはひょっとして…」




「はぁはぁ…何とか夜になる前に家に着いた。軍の人らはもう帰ったかな?魔物が怖いから早く家に…」


 家に近付いて気付いた。玄関の方に軍の人達がいる。俺の家を漁っているわけでもなく立っている。帰ると言っていたはずなのに。不思議に思った俺だが、ここで動揺したら怪しまれるだけ。何より、本人はもう居ないんだ。証拠なんてない。


「ど、どうも〜」


「あ、やっと来ましたか。ヒデヨシさん」


「その…どうかしたんですか?」(何で俺の名前を…)


「少しお聞きしたいことがありましてね?」


 パッとジップロックに入った毛を見せられる。


「ペットを飼っている様子もない。それなのに獣の毛が発見されました。過去の情報も見ましたが、30年間1度もペットを飼っていませんね?もし申請していないならそれでも違法ですが…」


「あ…あぁ〜。魔物が入り込んだ時に落として行ったのかもしれませんね〜。ははー」


 やばい。確実にバレる。このままだと死刑だ。


「さてと、言い訳は向こうで聞きます。ご同行願います」


「こ、断ります。民意ですよね?」


「あーそういう人居ますよね〜。でも今は状況が状況です。下手したらこの場で死刑ですよ?ちゃんと弁明出来るんだとしたら、ご同行願います」


 これはまずい。魔物の知識なんて何一つない俺が連れてかれたら魔物なんて言う嘘もバレる。時間の問題とかじゃない、すぐにバレる。そんな俺にチャンスが訪れる。


「グアァァァァァ!!!!!」


「なっ、大型魔物!?こんな所で…下がってください!俺らで退治します」


 俺は圧倒される。ここまでの魔物が存在していたなんて。それよりも、この状況をどうにかしなければ。俺の死刑を免れる為に急いでくれたあの人に申し訳ない。


(今なら…俺への目は少ない…やるしかない!)


「?おい、待て!」


「よそ見をするな!仕方がない。後で追いかければ良い。今はこいつをどうにかするんだ!」


 俺は逃げた。街の方へは向かえない。仕方ないから外側をぐるっと回ることに。仕事をしている軍の人達には申し訳ないが、こうするしかない…

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