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オフホワイトは旅に出る

長いけどよかったら全部読んでくださいな。

 ここはブラハネス王国。

とっっても平和な平和な王国です。

みんなが自分の魔法のスキルに合った仕事を全うし、事件などはめったに起きません。


 そんな王国の南の端の町の小さな教会では、今年15歳になる子どもたちのスキル贈呈式が行われていました。

スキル贈呈式といってもスキルを選ぶのではなく、瞳の色に応じたスキルを神様から授けてもらうという儀式で、あらかじめもらえるスキルや将来の職業などは生まれた時から決まっています。


 そんなスキル贈呈式が行われる壁一面真っ白な教会の中にはステンドグラスからもれ出た淡い光が満ちていました。

教会の奥では神父が神の使いと言われている黒い大きな鳥の入った鳥かごを持っていました。


 そこに、まず1人目の少年が前に出ました。

茶髪で小太りで、瞳の色は赤色です。

鳥は鳴き始めました。

『オマエ、アカイ。ダカラ、ホノオノ、マホウ、アゲル!』

鳥が言い終わると共に少年の周りを赤い小さな炎がただよい始め、やがて少年の中に取り込まれました。


 次に出たのは、可愛らしいポニーテールの少女でした。瞳の色は黄色です。

鳥は鳴き始めました。

『アラ、カワイイ。エット、キイロダカラ、ヒカリノ、マホウ、アゲル!』

鳥が言い終わると少女が光に包まれ、やがて光は消えていきました。


 それからも3人の少年少女が授与式を終え、最後にこの教会の神父の次男で、白髪の平均的な身長のデリンソワ=レクくんが前に出ました。


 レクくんの瞳の色は白色。神聖魔法を使うため神父さんにぴったりです。家族のみんなも白色なので一家全員で教会の仕事を全うすることがおおかた決まっています。


 鳥は鳴き始めました。

『オマエ、シロ!イヤ、チガウ、コレハ、オフホワイト!』

「「オフホワイト!?」」

まわりが騒然としています。


 一般市民の瞳の色は八色のみ。

貴族や王族は金色のみ。

例外は未だ一度も観測されたことはありません。

それなのに、オフホワイトという初めて聞く色が出たのでみんな驚いているのです。


 鳥は続けます。

『オフホワイト、ダカラ、ンー、コレアゲル!』

鳥が鳴き終わるとレクくんは一瞬パッと教会から姿を消し、そしてまた現れました。

『コレデ、スキルゾーテーシキ、オワリ!アリガトザイマシタ!』

鳥は最後にそう鳴くと、鳥かごごと姿を消しました。


 しかし鳥が消える様子を見ていた者は一部の子どもたちのみ。

大人たちはみんな想定外の事態に混乱を極めています。

いつもは静かな教会も、その日はいつになくざわめいていました。


 〜それから少し後〜


 聖魔法が使えず、なんなら得られたスキルもわからず、教会の仕事が不可能なことが判明したレクくんはひどい扱いを受けていました。


 ここはブラハネス王国。

みんなが自分の魔法のスキルに合った仕事をしています。

目の色で仕事が決まる、そんな国なのです。

そんな国で既存のどの色とも違う色ということは、これから無職が確定してしまっているのと同じです。

働かないことがわかっている子は家に置いてても仕方がないのです。

靴みがきでも汚れ仕事でもこき使ってもよいと両親は判断し、もはや人として扱われていません。

優秀な兄にいつもかまっています。


 そんなある日、レクくんは教会の地下にある薄暗い書庫の掃除をしていると古ぼけた日記を見つけました。

少し大きめのその本の表紙はホコリで覆われていて題名すら読めません。

レクくんは少し気になり、本を開いてみました。

するとそこには、地上の楽園ネデヌを目指すレクくんと同じくらいの少年の探検日誌が描かれていました。


 その少年の名前はフキョウ。

彼は生まれつき瞳がなく、そのためスキルすらもらえずいじめられていました。

レクくんは自分と似た境遇のフキョウに自分を重ね、夢中になって読み進めていきました。

その日記の中でフキョウくんは大陸を北に向かって進んでいき、やがて《ネデヌ》にたどり着いていました。

そこはまさに楽園で他の国のようにスキルが使えないからとフキョウをいじめることもなく、全員が幸せに暮らしていました。

レクくんは一時間と少しでその日記を読み終えると、そっと服の下に隠しました。

レクくんはさっさと掃除を丁寧に終え、蜘蛛の巣だらけの自分の部屋の硬いシーツの下に日記を隠しました。

レクくんは《ネデヌ》のことを夢見るようになって行きました。


 〜それから一年〜


 レクくんが目を覚ますと、いつもと同じゴミだまりのような匂いがあたりに立ち込めていました。

レクくんはいつものように日記を取り出すと三分ほど読みふけ、一日のスケジュールを確認します。

魔法を使うまでもない力仕事、重労働、ミスの許されない事務作業、、、十六歳の少年がするにはあまりにも過酷な仕事量が待ち受けています。

レクくんはため息をつき、ベッドから立ち上がりました。


 その時、その衝撃で日記が地面に落ち、とあるページが開かれました。

そこには、「歩き出すチャンスはいつもあるわけではない。遅ければ遅いほど、チャンスが永久に失われていくのだ」と書かれていました。


 レクくんは、いやレクは、《ネデヌ》を目指すことにしました。

かなり前からずっとしたいと思っていましたが、いつも無理だと諦めていた、そんな夢をようやく叶えることにしたのです。

ブラハネス王国のルール


瞳の色は、得られるスキルを表す。

得られたスキルにより将来の職業も決まる。

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