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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

室外機

作者: 壱原 一

部屋の掃き出し窓を開ける。有り触れた賃貸アパートの小ぢんまりしたベランダが現れる。


床はブルーグレーのウレタン防水で、気泡の跡がざらざら、全体がややてかてかしている。


隣室との間仕切りは、天地に隙間のある蹴破り戸で、下の隙間からエアコンの室外機が覗いている。


早朝のゆるい微風の中、隣室の室外機は、低いうなりを上げ、しなだれた細いホースから延々と排水している。


その排水を塞ぐように、室外機の傍に何かある。


両腕に一抱えほどの、茶色くまあるい繊維質な物。


間仕切りの下の隙間から、こちらへ向けてはみ出ている。


床に接している繊維が、押しつぶされて広がっていて、それなりに重量があると分かる。


人の頭のように見える。


仮にそうなら空間が足りない。室外機や間仕切りや床や壁に、顔や後頭部や側頭部、元より体が突き抜けている寸法になる。


だから頭ではあり得ないが、仮に頭だとしておくと、床に広がった感じや、茶色くまあるい繊維の感じ、少し搔き分ければ柔らかい頭皮が見えそうな長さや量の感じなどが、全て横たわる人の頭のイメージにしっくりと馴染む。


一瞬、かつらかなと過ったものの、毛を押しつぶす重量と、一抱えの高さがあるので、やはり頭だと立ち戻る。


四方にめりこむ寸法の、茶色い髪の生えた頭が、ベランダの間仕切り越しの、隣室の室外機の傍に、わさっと無造作に置いてある。


そう得心して窓を離れた。


清々しく朝日が昇って、換気を終え、窓を閉める際、間仕切りの下をちらりと見ると、頭はまだ転がっている。


隣室の室外機は、低いうなりを上げて、しなだれた細いホースから延々と排水している。


大きな音を立てないよう、そっと、静かに窓を閉め、鞄を持ち、玄関へ向かう。



終.

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