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第25話 キャベンディッシュ

 観光バスは田舎道をゆっくり走る。4人で来た時は車内での楽しい会話に心を奪われ、外の景色が疎かになっていた。今回は一人であり、座席の位置も高い上に窓も広いのでじっくり堪能できた。バスはやがて、キャベンディッシュに入り、グリーンゲイブルズで下車した。すぐに観光案内所を訪ねてみると、そこに3日ほど前にゲストハウスで同宿だった Agnes が居た。宿泊している宿を訊ねていたら案内所のご婦人の耳に届いたとみえて電話で問い合わせて頂き、即宿泊予約できた。


 シャーロットタウンのゲストハウスは楽しかったが、オープン過ぎて落ち着けない面もあった。ここは鍵付きの個室なのでのんびりできそうだ。

 親しい仲間と和気あいあいの旅行をするのも良いが、自分にはやはり一人でじっくり味わう旅の方が向いてるようだ。

 翌朝、久し振りにゆっくり起きた。午後から数日振りにグリーンゲイブルズへ足を運んだ。その後、”赤毛のアン” の小説の中でアンが命名した”お化けの森” や”恋人の小径” を歩いてみる。

”お化けの森” は特に意識してなければごく普通の森のようだ。”恋人の小径” は小説の中でアンが呟いたように、真っ赤な葉を付け、アーチ状に撓んだメープルの枝が実に美しかった。Janis も Sharon もこれを観なきゃ。自然よりも人間に対する神の教えを説く牧師のGary は兎も角。


 帰宅するとドアーの近くでAgnes に会った。彼女はキャベンディッシュが相当お気に入りのようだ。それもグリーンゲイブルズのような観光客の集まる名所には興味はないそうだ。なかなか非凡な旅である。拍手を送りたい。

 私だってあまり乗り物は使わずに観光名所に向かいながらも、道中の町や道端の匂いや雰囲気を味わうのが好きである。ただ、キャベンディッシュは”赤毛のアン” の住む ”アヴォンリー” だけに、どうしても縁の場所を自分の眼でしっかり観てみたい。


 翌日昼食後、改めてニューロンドンのクリフトコーナーにある L.M.Montgomery 夫人の生誕地を訪ねてみる。片道7km、徒歩ゆっくり2時間。海岸線の崖もそうだったが、このキャベンディッシュの田舎道も土の色は赤茶色だ。小説にもそのような記述があったが、酸化鉄を多く含んでいるとの事である。

 案内係のおばさんの説明を聞きつつ、英和辞典と共に2時間ぐらい頑張った。いろんな事が分ったので要約すると、


 L.M.Montgomery は1874年、ニューロンドンのクリフトコーナーで生まれる。

 2年後、祖父母の許に引き取られ、古い農家で育てられる。

 1898年に祖父が亡くなるまでは、学校へ通う為、教師として働く為、時々住所を変わる。

 1898年から1911年に祖母が亡くなるまで、祖母の世話をする為、教職を辞し同家で暮らす。

 1911年(もしくは1912年)、Macdonald 牧師と結婚し、トロントに住む。

 1942年、68歳で亡くなる。

 子供は2人。長男は他界。次男はトロントでドクターをしている。

 グリーンゲイブルズは少女時代によく遊びに行っていた伯父(叔父かも)の家である。


 帰り道、車のおっさんに声を掛けられ、警戒しつつ近づいたら何と宿泊している宿のご主人だった。

 夕食に Agnes を誘ったら空腹でないそうなので、ショッピングに一緒に行き、近くのレストラン前で別れ一人で入った。

 レストランから出たとき見た夜空の美しかった事。青空、雨雲、三日月のコントラストが見事である。三日月を観ながら、後ろ向きに歩いて帰った。


 翌日いつものレストランでランチを食べてたら、中年の上品なウェイトレスに声を掛けられた。


"Yesterday, I saw You in a Car............" 

 とか何とか。


" Oh Yeah. You?"


 適当な英語だが、笑顔とジェスチャーでカバーした。

 昨日、クリフトコーナーからの帰り道にもう一人、通り過ぎた車の窓から顔を出し、声を掛けてくれたご婦人が居たのを思い出した。馴染みになったレストランのウェイトレスだったとは!

 

 ランチの後、アンの命名による“きらめきの湖”へ行ってみた。小説ではアンの腹心の友であるダイアナ・バーリーの家の所有物で、一般的にはバーリー池と呼ばれている。見たところ、普通にある池のようで、バーリー池の方が合ってるように思う。

 湖岸には葦が沢山生えていた。カマキリの巣のようなものも多かったが何だろう? ガマかな?


 その後、一週間前4人で歩いた時の事を思い出しながら浜辺を歩いてみる。今回は海水浴客は一人もいない。寂しい浜辺だ。

 

 部屋に戻り、7月にアシナボインで、指の火傷の手当てをして貰ったオンタリオ州に住むカナダ人夫妻に絵葉書を書いた。考えてみると英語で手紙や葉書を書いたのは生まれて初めてだ。


 翌日、キャベンディッシュ最後の日、さよならを言う為に再度グリーンゲイブルズを訪れた。もう一度、”恋人の小径” も歩いてみた。メープルの葉を2枚摘んで来て、ガイドブックに挿んだ。

 

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