表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

またね

作者: えな

「またね」


 僕は彼女にそう言った。


 色々考えていたはずなのに、結局全てが真っ白になって、いつものようにいつもとは違うその言葉を口から漏らした。彼女はよくわからない表情で笑って同じようにまたね、と返してきた。


 空港によく漂っている特有の空気が流れ始めた。


 今更言うようなこともなく。力なく、不器用に笑おうとする。本当は涙があふれそうなのを頑張って止める。


 彼女も何も言えずに黙り込んでしまう。


 結局期待していたようなことは何もなく、見た目だけはいつも見たいな最後を迎える。


 去り際の彼女の後ろ姿は夕日に照らされ、哀愁を帯びていた。もしかしたらそれは僕の願望で、そうあって欲しいと思っていたからかもしれない。


 頭の中で僕と彼女が言った言葉が響く。


 またね


 その言葉は、今まで何百回も何千回も繰り返してきたまたね、とは少し違う意味を含んでいた。言葉にしてみれば少しの違い、だが僕にとってそれは途方もないほどに大きかった。


 いつもは特別深い意味もなく、当たり前のように明日も会えると思ってその言葉を言っていた。だけど今回は違う。次に会えるのがいつかもわからない。もし会える時が来たとしてもそれは確実にもっと遠い未来の話だ。


 たとえその未来が数年であろうと、数ヶ月であろうと、どれだけ短い期間であろうと、もしかしたら次はないかもしれないという不安が僕の心を締め付ける。


 思い返せば僕はたくさんの人と出会ってきた。


 そしてたくさんの人と別れてきた。


 どこにいようが、僕達の関係に変わりはない


 なんて言うが、物理的な距離は思ったよりも大きい。どこにいようと今の世の中コミュニケーション手段はいくらでもある。だからそんなことはいくらでも解決のしようがあるのかもしれないが、そういうのは僕に向いていなかった。


 結局話さなくなってしまった。結局他人になってしまった。結局過去になってしまった。


 彼女もそんなたくさんの人の中の一人になってしまうのだろうか。努力も空しく華麗な思い出は、もう戻ることのない過去として散ってしまうのだろうか。


 それはいやだ。


 でもどうしようもない。


 当たり前にまたね、と言えていた、そんな日々を思い出すと抑えていたものが溢れだした。

半分実話

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ