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【完結】陰キャデブな社畜、知らぬ間に美少女VTuberを救う。   作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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78.芽吹く

 




 私の、答えは最初から決まっていた――



「とても素敵な話だった......でも」


 頬をハンカチで拭う。二人がどんな表情をしているのかはわからない......でも答えを言ってしまおう。


「私は最初から、勝負に勝つ気はなかったわ......」


「え」

「......」


「勝ったところで、葉月さんの気持ちが動く事はない......そんな人とお付き合いしたところで、意味もないでしょ」


「......そう、だね」


 と真城さんが返す。



「それでも、一応は勝負だもんね。 うん......」


 これで、サヨナラだ


「私の負けです」



「そっか......」

「金見さん、俺は......」


「いいの、何も言わないで」


 慰めはいらない。惨めになるだけだ。


「金見さん、じゃあ......私の、私達の勝ちで良いんですね?」

「......何度も言わせないで」


「よし、じゃあ今から遊んでください!」


 ......。


 ......ん?


「あ、遊ぶ?」


 何を言ってるの?今まで敵対していたのに、遊ぶとか......そんなの。


「私は勝者なんです! お願いひとつ聞いてもらっても良いのでは?」

「え、いや、それは葉月さんを諦めるって......」

「私、勝負に一樹をかけるだなんていってないもーん」


 え、え、それは、確かに明言してないけれど......そんな子供みたいなこと言うの!?


「それに、前に約束したもん。 ゲームしようって、さ」


 ......ああ、怪物狩人か。約束、したね。


「金見さんが嫌なら......良いけど、私はあなたと遊びたい......ダメかな」


 この場に居たくない。


 そんな気持ちと、寂しい、一緒にいたいという思いが入り乱れている。


「......せっかく来られたのだ。 一緒に遊べばよいでござろう」


 いつの間にか真城さんのお兄さんが部屋から出てきていた。


「お、お兄ちゃん! なんで出てきたの」

「え、あ、いや......漏れそうだったので」

「ぷっ、そりゃ出るしかないな」


 葉月さんが吹き出した。


「......ふっ、くふっ! ふふふ」


 私もつられて笑ってしまう。


「お、おうふ......これはお恥ずかしい。 その、何だろう。 よければ夕食も如何かな? 金見さん」

「あ、そうだ。 金見さん、一緒にご飯つくろーよ! 金見さんお料理すっごく上手なんだよ~! ね、一樹?」

「あ、うん、すっっっっごく美味い!」

「マジでござるか!? お、お願いしても?」


 ......暖かいな。


「そ、そんなに上手でもないですが......じゃあお言葉に甘えて」


「うっひょい!!」

「おお、ありがとう!」


「やたーっ! じゃあ買い出しいこう!」

「へ......あ、ま、わかったから! 行くから! 引っ張らないで!」



 物語の最後、妹は姉に告げていた。



『私はどっちの結果になっても......お姉ちゃんをうらまない。 でも、ずっと一緒にいてほしい』



 私は葉月さんの事を諦めるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


 だって、彼みたいながんばり屋で、カッコよくて、優しい......魅力的な人なんて他に居ない。


 だけど、妹の事も大好きだから。


 ずっと居るよ、雪ちゃん。





 ◆◇◆◇◆◇




「なん、だとっ!?」


 的確に怪物の眉間へと銃弾をヒットさせていく金見さん。


「こ、これは、仰天でござる」

「す、すごい、春音ちゃん」


「そ、そうかな......?」



 驚く真城兄妹と俺をよそに、金見さんのスナイパーライフルが大型怪物を動かぬ骸と化していく。


 こんなに上手かったんか......やべえな。


 的確に撃ち続ける超火力の彼女の武器だが、弱点もある。それは、急所以外には極端にダメージが減り、ヘイトが大きくたまるといったもの。


 しかし、彼女はそれを逆手にとる。


 弱点である額が見えない位置、彼女はあえて脚を狙い撃った。


 ――ドォン!!


 響く射撃音。脚を撃たれ、ダメージは少ないが衝撃で体勢が崩れる怪物――

 

「雪ちゃん、今だよ!」

「! わかった、春音ちゃん!!」


 そこへ雪がハンマーの溜め攻撃が炸裂した。金見さんの攻撃で体勢が崩れて、ちょうど頭がハンマーの攻撃範囲に入っていた。


 ドゴォオンン!!!!


 見事な連携を決める二人。


「「やったーー!!!」」


 姉妹のような二人が幸せそうに笑いあっていた。


「......良かったでござるな。 一樹」

「うん。 太一もありがとうな」


 にやりと太一が笑っていた。


 可愛いじゃないの。




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