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【完結】陰キャデブな社畜、知らぬ間に美少女VTuberを救う。   作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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77.ゆきどけのはる (金見春音 視点)

 


 初めて彼女を見たとき、どっかのモデルさんかな?と思った。


 これは大袈裟ではなくて、美しい黒髪、綺麗な瞳と少し上がっている目尻、すらりとスカートから伸びる綺麗な脚。


 誰がどうみても美しいと言うであろう彼女


 名前は真城 雪。


 最初は妹さんかなとも思ったが、後に思えばそれは防衛本能のそれだったのかもしれない。

「彼女」である可能性を見ないふりした。そして、どこかでその可能性を感じていたから......あの場を、適当な理由をつけ、離れたのだ。



 しかし、それこそが悪手だった。


 帰ったあとに待っていたのは、次々と押し寄せる不安の波。そして孤独感。


 今も二人で笑いあっているのかな、と考えた所で気がついた。


 もしかしたら、あの人は彼の彼女なのかもしれない、と。



 だったら、敵わないし......叶わない



 そう――思った。





「どこか......喫茶店に入りましょうか?」


 私が言うと、彼女は首を横へふった。


「家、来てもらえませんか」


 あの日みた弱々しさの欠片もない瞳で私を見据える。


「わかりました」


 あしもとがふわふわする。夢見心地とはこの事か?


「それじゃあ、行きましょうか」


 両手をパシンと合わせるその挙動ひとつとっても可愛らしい。

 はいてる赤い手袋は彼のプレゼントだったりするのかな?なんて妄想の域の想像をしてしまう。




 真城さんの家にやってきた。



 この高級マンションは何度か配達で来たことがあって、どんな人が住んでるのかな。なんて考えたことが何回もあるけど、真城さんが住んでいたとは......。


 お兄さんと住んでいるらしいけど、むしろ兄妹でこんな所に住めるのかと驚いた。


 部屋に入ると、お兄さんと思われる人がリビングで珈琲を飲んでいた。


「――ん、おお、あなたが......初めまして、真城の兄、真城 太一です」

「あ、は、初めまして」


 なんだか葉月さんに雰囲気が似ている。


「お兄ちゃん、部屋いって!」

「うむ、了解でござる」


 ......ござる?


「よし、それじゃあ......これが作品です」


 目の前へと出されたそれは一冊の小説。


 タイトルは......「孤独な私の悪役令嬢」


 葉月さんが書いたんだよね?......なろう作家である葉月さんの作品、「ラストファンタジア」は短いタイトルだ。

 しかしそれは本来、なろうではうけにくい......それは葉月さんも痛いほどに理解しているはず。


 それこそ私以上に、その身体へと刻み込まれているだろう。


 なのに......短いタイトルにした意味は?これでは、なろうでは読まれない。


 ふと葉月さんと目が合う。


 にこりと笑う彼の表情は柔らかく見えた。


 促されるまま、小説の一ページをを開き読み始めた。



 話の内容は、現代版の悪役令嬢モノで、妹に恋人を奪われる姉の話。

 けれど、それはなろうにある奪われ奪う憎しみに満ちたものではなく、妹ともと恋人の純愛をみて、違う道を歩み出す姉の物語だった。


 だから、「孤独な私の悪役令嬢」......?


 文字数は五千くらいか。体感的に、あっという間に終わってしまった。



 パタンと小説を閉じた。



 確かに、素敵なお話だった


 少ない文字数の中で、綺麗に纏められていて、妹の姉への想いともと婚約者の気持ちや葛藤が描かれていた。


 正直、感動した......それもこれも、おそらくはこの主人公である姉が私のことをあらわしていたから。


 心は、動いた......動かされてしまった。けれど、でも......



「私は......」


 答えを出そうとしたとき、葉月さんがそれを遮るように言葉を挟んだ。


「金見さん、ここまでが俺の力......俺だけの力だ」


「......どういう」


「俺は、俺の作品であるラストファンタジアがヒットしたのは......俺だけの力じゃないんだ。 雪がいたから......だから」


 そう言い、彼から出されたのはイヤホン。


 真城さんが、まっすぐと私の目を見つめる。


 なにかを伝えようと、まっすぐに見つめてくる。



 私はイヤホンをつける。



 そこから流れ出した、悲しくも優しいBGM。



 そして、真城さんのナレーション。



 綺麗な声にのせられたそれは、さっき読んだ小説の一文だ。


 人の声がつくだけで、印象が全然変わる。いや、真城さんの声だから?


 なにか、人を引き込むような......魅力がある。すごい......目を閉じているのに、彩のついた美しい世界が広がる。


『私、それでも......好きなの』


 声にこれ程の力があるのかと、驚く。


『お姉ちゃん......大好きだよ』


 私に向けられた言葉。


 接していた時は余りに短かったけれど、あの時間、確かに感じた思いが呼び起こされる。


 この真城()と仲良くなりたいな、と。


 それは彼女も同じだった。


 それが、この台詞達に現れていた。


 これを、この台詞を書いたのは、きっと真城さんだ。


『私は......お姉ちゃんとも、離れたくないよ』



 ――手に何かが落ちた。




 ポタ




 ポタ




 それは頬を伝う涙だった。



 流れるBGMは緩やかに時を刻み、物語の終わりへ導き、彼女の言葉でそれを迎えた。




 ああ。




 私も、真城さんと葉月さんと





 離れたくないよ――







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