75.続・悪役令嬢
「ご、ごめん......いや、違うんだよ? 君の得意なの悪役令嬢モノだから、極めているってそういう意味で」
「――はっ、そういう......! ご、ごほん。 勘違いしてごめんなさい」
Akinoは、はっ、とした顔をして口許に手を当てた。
「あ、いや、俺も勘違いさせてごめん」
言い方がまずかったな。言った瞬間、あ、これ誤解されるんじゃ?と思ってしまった。
そんな事を考えていると、彼女は話を戻してきた。
「それで、あなたは恋愛してらっしゃいますの?」
「まあ......一応は」
しかし、こんな女子高生に恋愛してますか?とか聞かれるの恥ずかしすぎじゃない?
これ、してないですって言ったらどうなってたんだ?
ふーん、寂しい人なんですのね!あはっ☆とか言われたりしたのか?こわっ。
「ふんふん、成る程」
「ていうか、それ俺にきくんですね......仮にも敵同士だというのに」
「ふん、だからなんだと言うんです」
腕を組み、にやりと笑うAkino。
「私は自分の作品を最高のものにする......そこに努力は惜しみませんの。 それが敵に教えを乞う行為だとしても、作品がよりよくなるのであれば、私はやりますわ」
「より良く......それはわかるけど、俺へとささるモノをリサーチしても意味あるの? それは俺一人しかみてないって事でしょ?」
それは俺一人をターゲットとしているのなら正解だけれど。
「そうですの。 けれど、私はあなたに勝ちたい。 それはランキングの数字でもなくPVでも評価でもブックマークでもない......あなたに勝つための話」
「俺に勝つための......」
静かに頷き、彼女は話を続けた。
「作家、とくに「なろう」において、必要なもの、それは分析力。 読者のニーズを考え、適切な話数とタイミング、それらを計算し構築する力......」
「うん、ランキングに載って数字をあげるのが重要......それはランキング上位のランカーの人達も言っているし、君だって痛いほど理解しているだろ」
そう、痛いほど。
「だから、あなた個人の好みを聞くのは意味がないとおっしゃるの?」
「まあ......」
首を横へとふられた。そして、彼女は俺の目を見据える。
「けれど私はあなたの心を動かしたいのです。 私を魅了したあなただから......あなたの心を動かす、それが今の私には最も重要な事なのですわ」
......本来であれば悪手。でも、本当はこうあるべきなのかもしれない。
誰かに伝えたい物語を全力で作る。
人に物語を伝えるのが作家なのだから。
「そうか......」
その時、ふと時計が目にはいった。
「あ、やば」
「?」
「休憩しすぎた! この話はまた......ごめんなさい!」
あ、っと、彼女はばつの悪そうな表情をした。
「こちらこそ。 貴重な休憩時間を......ごめんなさい。 では、またですわ」
ひらひらと手をふりAkinoは帰って行った。
あの子が......あのAkinoさんか。もっと年上の作家さんだと思っていたけど、まさか女子高生だとは。
しかも結構中二っぽい......てか、喋り方が悪役令嬢っぽいんだが。
◆◇◆◇◆◇
『もしもし、変態』
「あ、はい」
突然の秋乃からの通話。
仕事の話か、作業のお供か......てか、何か声色が明るいな?
『さっき会ってきたわ』
「会ってきた? 誰に?」
『noranukoさんによ』
......?
え、どゆこと?
「知り合いになったの?」
『コンビニでそれっぽい雰囲気の人がいたから聞いてみたの。 そしたらnoranukoでしたの』
「いや、なにそれ......そんな事ある? それ本物?」
『でも小説の話は通じてましたわ。 おそらく、本物かと......ちなみにお仕事の休憩中だったみたいよ』
「ふーん」
心配だから後で一樹に聞いてみるか。
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