74.極・悪役令嬢
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俺と雪は金見さんとの決着がつくまで、二人で遊ぶのをやめようと決めていた。
だから雪とクリスマスに会うこともないし、デートする事もない。
まあ、仕事が忙しすぎて、もとより遊ぶことなど出来ないのだけれど。
「......なにしてるんだろうな」
やっとの思いで休憩を挟み、コンビニで買った珈琲をあおる。
芯から冷える体をとかすように、喉を潤す。
――ほうっ、と吐く息は白い。
「今日は何時に帰れるんだろうな」
雪の事を考えると、胸が締め付けられた。
......でも、去年のクリスマスは、まさか雪と金見さんとこんな風になるとは思わなかったな。
人生なにが起こるかわからない。身をもって体感中だ。まるで小説のようなこの話を。
「あの」
「おおっ!?」
ふと見ると、赤いコートのニット帽を被っている女の子が側にいた。こんな近くに人がいことにも気がつかないとか、疲れてんな。
「ど、どうしました?」
「......」
「?」
「......あなた」
じーっと、こちらを見つめる女の子。ってか、めっちゃ可愛らしいな。
「......はい」
「少しお話してくださいませんか?」
話?誰だこの子......コートから覗いてるのは、学校の制服。学生さんか。
すごく綺麗な子だな......ハーフ?
いや、そんな事はいいや。少しくらいなら、休憩としても大丈夫だろう。多分、きっと。
「大丈夫ですけど、えっと......どこかでお会いしましたか?」
「どこかで......ふふ。 ええ、一度だけ。 物語の頂点で」
頂点?なに言ってるんだ?
「えっと......」
「困らせてすみません。 私、あなたの事をこちらのコンビニで何度か見かけてましたの」
「あ、ああ......(結局、物語の頂点ってなんだ?)」
しかし、不思議だな。なんだか、この人......前から知っているような、そんな気がする。
「それでなんですが、ひとつ」
「はい......? 何でしょう」
「あなたは、恋愛というものをしたことがありますか?」
「......」
な、なに言ってるのこの人。
え、それ聞いてどーすんの?
「ああ、ええ。 これは、特に変な意味ではありませんよ。 あなたの趣向をお聞きしたかっただけなので......」
「趣向......恋愛をしていたらと、何かあるんですか?」
「私は、次の作品をあなたを屠る強力なモノとして産み出したいんです。 なので、ささるかなぁって......ほら、恋愛をしている人って、恋愛モノを読みたくなるでしょう?」
......この人、もしかして
俺が戦ったことのある作家か!?
誰だ......?
この人には俺が誰かわかっているのか?......いや、わかっているんだ。だから俺の話を聞きにきた。
今、コンビニで会ったのは、たまたまかもしれないけど、この人はおそらく俺を知っている。
――物語の頂点?
なろうでのトップ争い?......Akino?
「ふふっ、そう警戒しないでくださいまし」
「......君は俺が誰かわかっているの?」
「noranukoでしょう?」
......な、なんで
「私、鼻が利きますの。 あなたは私と同じ匂いがする......そこに存在価値をみいだし、命を注ぐ......危なくも美しい、命の匂い」
にぃっと、綺麗な顔を歪め俺の目を見据えた。
いや、エスパーかよ!と内心ツッコミをいれたが、彼女の独特な雰囲気と空気に、そんなツッコミは不粋極みと俺の心が発言を静止していた。
......合わせるか。
「ああ、そうさ......俺はnoranuko。 君はAkinoさん?」
「ええ、私はAkinoよ。 よろしくね、noranuko」
この人は俺が一位の座を奪うまで、悪役令嬢モノの小説でトップに君臨していた人、つまり悪役令嬢モノを極めし者。
ならば、先ほどのノリ......中二な感じでいこうか。
「よろしく、悪役令嬢を極めしAkino」
「!? だ、誰が悪役令嬢よーっ!!!」
――ビクッ
あ、いや、そうじゃなくて......
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