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【完結】陰キャデブな社畜、知らぬ間に美少女VTuberを救う。   作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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69.二つの光

 


「......でも、私、この想いはとめられないです」


 金見さんが、そう言った。


 窓につたう雨粒が、同じ場所へと行き着くように......今思えば、これは必然だったのだろう。


 俺は何も言えずに、真っ直ぐに――




「葉月さんっ......私は、あなたの事が、す、好きです!」




 彼女の想いを聞いた。


 けれど、俺にはそれを受け取る事はできない。けれど、俺が俺で在ることを許してくれたのは、彼女だ。


 まだ太った体で、髪もぼさぼさに伸ばしっぱなしだったころの俺を、俺として存在させてくれた。


 そうだ......


 ずっと、ずっと支えられて生きてきた。


「金見さん......今の俺があるのは、金見さんのおかげです。 それは、間違いない......でも、それでも」


 それでも、俺は――


「待って!」


 金見さんが叫んだ。


「私は、私は......」


 ぽろぽろとあふれだす、涙と言葉に心が焼けつく。


「......葉月さんのこと......好き、なんだもん」


 まるで金縛りにでもあったかのように


 声も出せず、動けもせず、ただ彼女を画面の向こうから観ている映画のような、物語の行方が決まるのを待っているような......不思議な感覚に陥っていた。



 ――心が、現状を受け入れられない。



 なぜなら、金見さんもまた、大切な人の一人だったのだから。




 ◆◇◆◇◆◇





 ――どこかで、私は彼と幸せになれるのだと思っていた。



 ゆくゆくは、交際に発展して......デートや旅行を、幸せの時間を沢山重ねて、けれどけんかもいっぱいして、そうやって絆を深めて、そして結婚。


 そんな淡く浅い妄想を広げていた。


 頭お花畑だなんて、ひどい言葉がこれ程ぴったりな奴は他に居ないだろう。


 けれど、嫌だ......ここまでの彼との時間は


 会話を思い返し、どうしようもなく胸のときめいた、彼との時間は


 終わらせたくない。



 あの温もりも、喜びも、幸せも。



 ここで終わらせてしまうのは、絶対に嫌だ。



「――わかりました。 葉月さん......」



 目元を袖で拭う。ああ、ぐちゃぐちゃな顔してんだろうな、私。


「私は、葉月さんを諦められません」


「......俺は、でも」


「勝負しましょう」


「勝負......?」


「私のこの想いの強さで、どれだけ葉月さんを好きか示して見せます......」


 最悪な女だ。これは、略奪。これから私がおこそうとしているのは、出来上がった幸せな物語を、無理やり根底から書き直させる行為。


 けれど、私は今や外野でもなければ観客でもない、傍観者でもいられない。


 これは私の物語でもあるのだから


 だから


 だから、私は――戦う。悪役(ヒール)になろうと、私は私の為に戦う。


「真城さんとの戦いに勝ったら、私との事を考えてください!」


 す、すごい困らせてる......。

 私が泣いたから?葉月さんがさっきからうんともすんとも言ってくれない。


 きっと優しい葉月さんだから......私の気持ちを考えて何も言えなくなってるんだ。


 ああ......自己嫌悪に飲まれそう。泥のように絡み付く黒いもの。


 でも、けれど、私は葉月さんをとられたくない。このまま何もせずに終わるのは嫌だ......!


「......私、真城さんと話します」


 とにかく、これは私と真城さんの問題でもある。あの日......私は怖くて逃げてしまったけど、でも今度は向き合う。


「ごめんなさい、今日はこれで......失礼します。 お疲れ様でした」


「......」




 一人歩く夜道に、寂しさがわきたつ。


 葉月さんと一緒に帰るこの道が私は好きになっていた。

 好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味、いろんなものを教えてもらいながら、二人並んだ帰り道。


 その記憶が、愛しい彼の笑顔が......甦る。



 私は、真城さんの事も好きだ。



 けれど、これは......この人だけは譲りたくない。



 私の、ずっと一緒にいたい人。



 葉月 一樹だけは。




「――もしもし、真城さん」







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