67.幸せの
雪の温もりを感じる。
これは、体温と愛情の温度。
「......む」
抱きついたまま、腕をするりとおとして、そのまま手を握られた。
耳元で「へへっ」と可愛らしい笑い声がする。
「ゆ、雪......」
すっと体が離れ、目の前に雪の顔がくる。
「なに」
えっと、なにと言われましても......てか、ち、近いんだが。
「......あ、えーっと......はは。 ゆ、雪......?」
心臓が破裂しそうだから一旦はなれて、と言おうと思ったが、雪はなにか別の意図を汲み取ったみたいで、顔がかなり近い位置にある。
少し前へと顔を出せば、鼻先があたりそうだ。いや、鼻先どころか......
いやいやいや......でも、ねえ?それは、ちょっと。......ねえ?
「か、一樹......、なに笑ってるのさ......」
雪は恥ずかしそうに、不服の声をもらした。
「あ、あの......」
「......いくじなし」
戸惑い、何も出来ずに雪の瞳をみていると、柔らかな感触が唇へおしあてられた。重なる想いと、鼓動。
数秒間のキス
顔を離した雪は、うっとりとした表情でこちらをみている。
初めて見る雪の顔と表情に、切ない気持ちが込み上げる。
どんどんはやくなる心臓の音と、募る想い。
あ......これ、まじで心臓破裂して死ぬかも......
その時、雪の背後で涙を拭ったり笑いあったりしている、煩悩、理性、心配が見えた。
あの......みんな、俺、死ぬかもしれない。
俺の視線に気がついた、煩悩、理性、心配は皆こちらに向かって親指を立てていた。
そして親指を下へむけ、口パクで、「おめでとう! リア充爆発しろ!(^^(^^(^^」と言われた。
お前ら......ありがとう。
そして眠るように意識が遠退いた。
◆◇◆◇◆◇
――パソコンを操作し、白雪 ましろの動画を編集する。
短く要点をまとめた動画を幾つも作り、タイトルを考え、サムネイルも慎重に選択......しかしいつもタイトルで悩んでしまう。
タイトル、人を惹き付けるタイトル......動画をクリックしたくなるような。
内容的には、リスナーがスーパーチャットで、雪を甘やかしている......そして、その瞬間ポン(ポンコツ)発動してるから......ふむ
「......あまあま......いや、甘えん坊? ポン? 甘えんポン......よし、これでいくでござる!」
『おい、変態!! タイトルセンスが絶妙に変態臭いんですのッ!! ていうか、甘えんポンて意味不明過ぎて草ですわ!』
俺のスマホから刺々しいツッコミがとんでくる。
「えー、結構いいと思ったのにぃ~」
俺は時々こうして友人であり、クライアントでもあるこの小説家兼、VTuber兼、コスプレイヤー兼、イラストレーター兼、漫画家の神木 秋乃と通話で雑談をしている。
いや肩書きなげえな。
てか、こいつマジでどうやってこれ兼業してんの?ヤバくね?
学生でもあるんだけれども......もしや秋乃の独特の空気感が時空間を歪めて、こいつのまわりだけ時間の流れが遅くなってるのか?
『ねえ、変態』
「あ、はい」
『コミケの話なのだけれど』
あ、ああ、コミケね。なんぞ?
『......本当に彼はくるのでしょうね?』
彼、というのはnoranuko、つまり葉月一樹の事だ。彼女には一樹のリアルの情報をまだ教えてないし教えるつもりもないが、一応冬コミに本人が来ることを知らせてある。
と言うのも、彼女は一樹になろう小説サイトで敗北を喫していて、そのリベンジをコミケで果たしたいみたいなのだ。(多分読み比べるんだろう)
あらゆる勝負に負けたことがない神木 秋乃。
その秋乃がはじめて負けた相手、一樹。
二人の出合いは、このクリエイターの世界に少なからず影響を与えるだろう。
「ああ、くるでござる。 ......多分、その予定」
『ふん、相変わらずいい加減な男。 まあ、良いわよ......noranukoさんの作品が出るのであれば』
「......お前、そんなにあいつが気になるのか」
『当たり前でしょう。 私を打ち負かした程の作品を書く作家よ? 気にならないわけがないのだわ!』
そういう秋乃の声色は心なしか嬉しそうだった。
「また負けるかもしれないぞ......」
『ふん......良いわよ、それでも。 けれど、そうなれば私はそれすらも糧とし、また強くなるわ』
ああ、そうなんだよな......こいつのこういう所。
『そして私はいずれ、そう、必ず......彼を倒しますわ!! この手で!!』
カッコいいんだよなぁ。
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