66.君から貰ったもの
「......それは、俺のセリフだよ」
あの時の感想、ブックマーク、そしてVTuber白雪 ましろとしての朗読動画......それらが無ければ、俺は書籍化はおろか小説を書くのを辞めていた。
助けられたのはきっと俺の......
でも
だからこそ、俺は勇気を出さなきゃいけない。
小説のイラストもそうだ、今だってこうして彼女は支え続けてくれている
思い出される、雪の感想。
職場では居場所もなく、全てを投げ出したいと思っていた......そんな暗い世界から引き上げてくれた、あの優しい感想を忘れない。
初めて届いた、彼女の人見知り爆発のメッセージを忘れない。
怪物狩人で笑いあった日々を、通話での優しい声を......
コンビニで話した時も
公園で会った時、イラストが完成して小説になった時、寂しくさせて泣かせてしまった時も......
そして、仲直りした時も
全部が俺を支えてくれていた。だから、雪とこれからもずっと......
――頭によぎるヒトヒラのメロディーと、歌詞
――叶えてはまた次の、新しい物語
終わりの無い夢をのせて、かけてゆく――
まだまだ、これからも
「雪」
「ん、なに? あ、照れてんの? へへ」
「好きだ」
「――へへ......え?」
指をこちらへさしたまま、彼女の表情が笑顔で固まる。
「き、急に......こんな事言われても困るだろうけど、伝えたくて」
あ、やば......俺、声が震えてる。
やがて、ゆっくりと全身がふわふわと浮く感じになり、思考能力が鈍く落ちていくのに気がく。
緊張が一気に押し寄せてきた。
やばいやばいやばい......息が、苦しい......もっと何か言わないと!この想いをちゃんと伝えないと!
このままじゃまだ何も伝えられてない......好きの理由を、どこが、なにが好きなのかさえまだ言ってないぞ!
「......っ」
しかし、気持ちとは裏腹に、伝えたい想いはあるのに、何も出てこない。
そう言えば俺って基本あがり性でもあったな、中学生の頃もクラスの発表会でこんな事あったよなぁ。なんて余計な事を考える始末だ。
「......」
「......」
お互いに、あら、メデューサにでも睨まれましたか?ってくらいの石化具合である。
対面する雪はびっくりする位に顔が真っ赤で、多分、雪から見た俺も同じくらい真っ赤なんだよな~とか、雪、目が潤んでいて可愛いな~とか、現実逃避をし始める。
その時、雪は眉間にシワを寄せ、つきだしっぱなしだった人差し指の向きを上へ向けた。
「......もう一回」
もう一回......もう、一回?
「......え、何が?」
「も、もう一度ききたい。 言ってよ」
こ、
殺しにきてる!!?
もう一度ききたいって、カラオケのアンコールみたいなノリで言われても!
精神的に結構キツいぞ、これ。
で、でも、何も言えないぶん、この一言に想いを込めて......言うしかないのかもしれん。
伝わるように!
「......す、好き、だ」
そうして絞り出すように出た言葉への雪の反応は、眉間にシワを寄せたまま、ニヤリと口角があがりすっごい悪い顔になってた。
「......えっと」
はっ!と我にかえる雪。くるりと綺麗にターンをきめ、こちらに背を向ける。
両の手のひらで頬をおさえてるようで、ふるふる震えてるみたいだ。
わ、笑ってる......?
微かに見えるにやけがお。
「......え、雪......だ、大丈夫?」
「だ、だだだ、大丈夫じゃないよ」
大丈夫じゃない!?......も、もしかして気分悪くさせたか?
お、終わったのか......俺は、俺は、失敗したのか?
そんなモードネガティブに入ろうかとしているとき、ふたたびこちらへ雪が向き直る。
そして、彼女は俺に告げた。
「私も、一樹の事が......好き」
目の前がぱぁっと明るくなり、雪のにんまり顔がまぶしい。
そして俺に抱きつき、耳元でまた囁く。
「......好きだよ、一樹」
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