61.心理的ダイレクトアタック
「私、そろそろ帰りますね。 真城さんがいるならもう安心なので」
金見さんが立ち上がった。それを見上げるように雪が言った。
「え、もう行っちゃうんですか......」
打ち解け始めていた雪は心なしか寂しそうだ。それに気がつき、金見さんは雪へと微笑み諭すように言う。
「ごめんなさい、でも今度遊びましょうね。 葉月さんが元気になって二人とも時間に余裕があるときに、怪物狩人、しましょうか!」
雪の表情が、雲を散らす陽の光がさしたかのようにぱぁっと明るくなる。
「するっ!!」
「ふふ」
なでなでと雪の頭をなでる金見さん。ごろごろと喉を鳴らす猫のように目を細め気持ち良さそうな雪。......あれ、これ完全に懐いてね?
しかしまあ、雪に女の子の友達が出来たのは嬉しい事である。前に「こっちきてからは友達とかいたことない」っていってたし。
ていうか、この感じだとお姉ちゃんのがちかいかな?先ほどからみていると、やりとりが仲の良い姉妹のように見える。
ふむ、雪は年上に可愛がられる性質なのかもしれない。
「では葉月さん、お大事に! あ、明日もお仕事難しそうだったら、連絡くださいね~」
「すみません、ありがとうございます......助かります」
「ちなみに冷蔵庫にタッパーでごはんのおかず入れてあるので、よければ食べてください! 真城さんも良かったら!」
「ありがとうございます! 一樹にお願いして食べさせて貰います!」
「ふふ、お口に合わなくても怒らないでね?」
「「怒らないです!」」
二人の台詞がハモる。
雪と俺は互いに顔を見合う。
「あはははっ! それでは葉月さん、また! 真城さん、葉月さんの事よろしくお願いしますね」
「了解しましたっ! またね、金見さん」
「はい、また」
こうして金見さんは帰っていった。
どうなるかと思った雪と金見さんの邂逅。思いの外すぐに打ち解けてくれてほんとに助かった。
いや、あれは金見さんの人柄のおかげか。
「雪......ごめん、困らせたよね」
「......え、ううん! 大丈夫だよ! 金見さん話しやすいね!」
「あ、ほんとに? それなら良かった」
雪は親指を立ててバチコーンウィンクしていた。しかし、ほっとしたのも束の間、彼女からとんでもない質問が投げつけられた。
「あのさー、一応きくけどさ?」
「? な、なに?」
「金見さん......彼女?」
眉にシワを寄せ、こちらをジロリとみてくる。
「......ううん、違うよ」
「ほ、ほんとに? あんなに綺麗だよ? 好きになるじゃんフツー」
「せやな。 でも彼女じゃないよ」
「ほんとに、本当? だって、優しいし気が利くし、パーフェクトだよ?」
「......なんだよ、彼女って言った方が良かったのか?」
俺は、ちょっとムッとして聞く。
「ううん、ホッとした......へへっ」
げぼらっぐふっ、ごほごはっ!!!
女神、あるいは天女のような美しい笑顔に、心理的ダイレクトアタックを受けた俺のライフPが急速に削られる。
急激にあがる心拍数に目を白黒させる俺。動揺する心を落ち着かせる為に、とりあえずスマホを手に取りなろうのマイページをひらいた。
......これ、わかる人いるかな。手持ちぶさたになったりするととりあえずなろうのマイページ開いちゃう作者の心理。
そのままついでにポイントやブックマークが増えてないかチェックしちゃうやつ。
更にはPVもチェックして、逆お気に入りまでもチェック。
って、あ、誤字報告だ。申し訳ないと思いつつ、ちゃんと読んでくれてるのがわかるので、嬉しかったりする。
――ふう、落ち着いてきた。って、あれ?
俺がスマホを眺めていると雪の姿が消えていた。
「......雪? どこー?」
「んー? なーにー?」
呼び掛けると、台所らへんから返事が聞こえた。
「どしたどした~? 寂しいのかな~? なんちゃって」
片手にネギと包丁を持ちながらこちらへやってくる。ああ、料理してくれてるのか、助かるわ~。
って、あぶねえな!?
「あ、いや......姿みえなくなったから。 つーか、包丁もったまま歩くの危ないぞ」
「あ、しもた! ごめんごめん」
いったい何を作っているのか......お腹すいてきたな。
【とても大切なお知らせ】
少しでも面白い、先が気になる!続きは?と思って頂けたら、広告の下にある
☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけると励みになり執筆へのやる気につながります。
ブックマークもすごく嬉しいので、よければお願いします!
いつも読んでくれてありがとうございますー!




